「九条の会・わかやま」 382号を発行(2019年09月21日付)

 382号が9月21日付で発行されました。1面は、第63回「ランチタイムデモ」実施、憲法 変えるのではなく世界に広げて 24条草案者の長女ニコルさんに聞く、防衛予算 過去最大の5兆3千億円を要求、 九条噺、2面は、採決強行から4年 戦争法(=安保法制)は憲法違反 わかちか広場でミニコンサートとスピーチ、「9の日宣伝」JR和歌山駅前で 3000万人署名活動、言葉「憲法尊重擁護の義務」   です。
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[本文から]

第63回「ランチタイムデモ」実施



 9月19日、秋晴れの好天の下、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける第63回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、70人の市民が参加しました。
 和歌山市役所前での出発挨拶で藤井幹雄弁護士は、「安保法制が強行成立させられてから4年が経った。私たちは、何としてもこれを廃止にしなければならない。安倍首相は、残りの任期の間に憲法改正をすると言っているが、絶対に許してはならない」と訴えました。
 参加者は和歌山市役所から京橋プロムナードまで、「安倍9条改憲反対」を訴えて行進しました。

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憲法 変えるのではなく世界に広げて
24条草案者の長女ニコルさんに聞く




 日本国憲法の成立過程で男女平等などの条項の草案を書いたベアテ・シロタ・ゴードンさん(1923~2012年)の長女ニコルさんが、東京新聞(8月29日付)のインタビューで、母から受け継いだ男女平等や平和への思いを語った。

 母のベアテさんが日本の憲法に深い影響を与えたことは知っていたか。

 「私と弟は子どものころから、両親が日本の憲法に携わったことを何となく分かっていました。後に母が果たした役割が公になりましたが、ちょうど十代のころで親に対する反発心もあり、その価値をあまり理解していませんでした。法科大学院で法律を学ぶ過程で理解を深めましたが、本当にその価値が分かったのは母の死後。日本や米国で開かれたしのぶ会で、多くの人が母を愛し、その仕事を高く評価し、尊敬していることに気付いたからです」

 どんな母親だったか。

 「子どもに高い期待を寄せてはいたが、こうしなさいといった細かい指示はなかった。仕事をしていたので、子どもにそこまで関心がなかったのかも。ただ(連合国軍総司令部=GHQ=民政局員で日本語通訳だった)父は母の仕事を常に支えており、女性でも仕事と家庭を両立させることは当たり前の雰囲気でした。私の夫も献身的です。社会正義の仕事をしたいと思い、弁護士を選びました」

 法律家の立場から見た日本国憲法の価値は。

 「母はいつも、24条の家庭での個人の尊厳と男女平等、9条の平和条項について『世界のモデルで、変えるなんてとんでもない、世界に広げるべきだ』と話していた。憲法の制定過程では、日本人は戦争の悲惨さを経験して9条への反対は全くなかったと聞いています。反対があったのは男女平等の条項で、合衆国憲法にもない条文です。母が各国の憲法を読み込んで最善のものを書き込んだ、まさに贈り物なのです」

 24条は結婚を両性の合意のみに基づくと定めるが、同性婚は想定していると思うか。

 「(先の大戦が終わった)1945年当時は誰の頭にも同性婚はなかった。でも、母は亡くなる直前のインタビューで、(個人の尊厳を定める)条文の原理原則からすると、どのジェンダー・アイデンティティー(性自認)の人にも当てはまると話していた」

 世界の現状は、個人の多様性を認めているか。

 「最近は、人との違いを際立たせて、少数の人を切る政策が世界中で起きている。あちこちの国で攻撃的な人が(リーダーに)選ばれている。とても悲しい」

◆日本国憲法第24条
(1)婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
(2)配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並び に婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

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防衛予算 過去最大の5兆3千億円を要求

 防衛省の来年度予算概算要求は、過去最大となる5兆3223億円を求めています。
 宇宙関連の要求では、合わせて524億円を計上しており、航空自衛隊に、不審な人工衛星を監視するなどを任務とする「宇宙作戦隊」をおよそ20人規模で新設することや、通信衛星などに対する電波妨害を把握する装置の導入に向けた費用などが盛り込まれています。
 また、海上自衛隊の最大の護衛艦「いずも」を、事実上「空母化」する改修費用として31億円を計上、「いずも」に搭載する最新鋭ステルス戦闘機「F35B」6機の購入費用として846億円をそれぞれ計上しました。「空母化」された「いずも」を最初に使う「F35B」はアメリカ軍の機体です。
 一方、ミサイル迎撃新システム「イージス・アショア」の整備計画は特定の配備地を前提とせず、発射装置の取得や人材育成などにかかる費用、122億円を盛り込みました。また2030年代に退役が始まる航空自衛隊の「F2戦闘機」の後継のステルス戦闘機の開発や、在日アメリカ軍の再編に関連する費用については具体的な金額を明示しない「事項要求」という形で盛り込み、年末の予算編成までに金額を計上することにしています。

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【九条噺】

 先日「戦争はいや!平和と文化を語るつどい」(憲法9条を守る和歌山市南の会)で世話人の西畑昌治さんが日韓情勢を取り上げて、「徴用工問題、ホワイト国外しなど、対立が激しく、両国に反韓・反日を煽る風潮がある。戦争に先立っては排外主義が煽られる」と開会挨拶をされたと本紙381号にある▼関連して「相手を憎まなければ戦争で敵を殺せない」と言われ、排外主義の危険を強く感じた。先の大戦に突き進んだ時の標語「暴支膺懲(乱暴な中国をこらしめる)」「鬼畜米英」も一例だ▼そして排外と表裏一体で、独善的な自国・自民族優越感がある。過去の「神国日本」「アーリア人種優生」に止まらず、現代でも自国の良さを誇ることが、いつの間にか他国を見下すことにつながり得る▼過去の日本の過ちに目をつぶり、他国から指摘されると冷静に反省せず、他国のあら捜しをして痛快がる。先の西畑さんは「人は排外主義の心情をくすぐられやすい」とも警告された▼政治・マスコミ等さまざまな「排外主義のくすぐり」に乗せられないよう、自国の歴史を知り、広く他国に目を開くことが大切だ。日韓も、より多くの人がドラマ・アニメ・音楽・料理・雑貨・化粧品などから相手を知り、多くの人が訪問して見聞することが重要だ。「井の中の蛙」が良くない▼韓国の日本演歌ファンがネット動画を上げたり、日本でのK―POP人気など、相互理解への扉が健在なのは嬉しい。政治報道も相手言語が分かればなお良い。(柏)

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採決強行から4年 戦争法(=安保法制)は憲法違反
わかちか広場でミニコンサートとスピーチ




 安保法制の強行採決から4年目にあたる9月18日夕刻、JR和歌山駅前の「わかちか広場」で、安保法制廃止をめざし9条改憲を阻止しようというミニコンサートとスピーチの集会が行われました。平和へのメッセージをこめたファミリーバンド「クロウフィールド」の歌を聞き、続いて賛同団体メンバーたちが平和を守ろうとリレートークをしました。  憲法9条のオリジナルソング「この島」を作曲して結成された「クロウフィールド」は、「イマジン」「未来へ」「この島」「ウージの歌」「悲しくてやりきれない」「風に吹かれて」を披露し、参加者は聞き入っていました。  スピーチの部では、よびかけ団体「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の琴浦龍彦氏が、4年前の強行採決を振り返り、「反対運動の中で仲間・知人が出来て、共闘が前進した。政治は変えられるとの思いをつなげて安倍改憲を阻止し、安保法制廃止をめざそう」と訴えて始まり、弁護士、大学教授、ママの会などが発言。先の参議院選で野党統一候補として奮闘した藤井幹雄氏は「沖縄には憲法を守る原点がある」として、米軍基地集中の問題と今も残る戦争の傷跡を強調し、安倍改憲で戦争への道を歩まないように頑張ろうと述べられました。



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「9の日宣伝」JR和歌山駅前で
3000万人署名活動




 9月9日、憲法九条を守る和歌山県民の会が呼びかけた「9の日宣伝」が行われ、19人が参加し、1時間で48筆の署名を集めました。

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言葉「憲法尊重擁護の義務」

 憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と、憲法を守る義務が課されるのは国民ではなく、天皇や公務員であると規定しています。権力を縛って人権を守る「立憲主義」の理念が、特に強く反映された条文です。
 国家公務員や自衛隊員は任用時、現憲法遵守を誓います。例えば自衛隊員の任用時の宣誓書は、「私は、…自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、…もって国民の負託にこたえることを誓います」となっています。国家公務員法も、憲法や政府を暴力で破壊することを主張する政党・団体の者が官職に就くことを禁じています。
 93年の細川連立政権の中西啓介防衛庁長官の勉強会の場での「半世紀前に出来た憲法に後生大事にしがみつくのはまずい」という発言を、野党だった自民党は、「憲法尊重義務違反」と追及し、辞任に追い込みました。
 しかし、今や自民党や維新が改憲を選挙公約に掲げています。改憲の実現を政治信条にする閣僚も珍しくありません。最たる例が安倍首相です。中西氏が辞任なら、国会答弁で改憲発言を連発する安倍首相は即刻辞任に値するのではないでしょうか。
 安倍首相は行政府の長です。党総裁として発言といっても、憲法擁護義務を課された人物が、立法府(国会)にのみ認められた改憲発議に向けて議論の加速を迫ったことに変わりありません。改憲を主張すること自体が憲法に抵触するのは明々白々と言わなければなりません。
 自民党の改憲草案は、憲法尊重擁護義務の対象から天皇と摂政を外し、国民に新たに尊重義務を課しています。「政治的権能を有しない天皇及び摂政に擁護義務を課すことはできない」と説明しています。国民を加えたのは「国民も憲法を尊重すべきことは当然」だからだそうですが、何故当然なのか、憲法とは何かの根本原理を無視するものと言わなければなりません。

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(2019年09月01日入力)
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