「九条の会・わかやま」 384号を発行(2019年10月20日付)

 384号が10月20日付で発行されました。1面は、日韓の「泥試合」の根源は日韓基本条約など( 飯田 光徳 氏 ①)、「維新の会」をどうみるか 「憲法講座」における渡辺治一橋大学名誉教授の質疑応答から、九条噺、2面は、言葉「国民投票法」のCM規制(2)、リーフレット紹介『このままでいいのか? 日本・韓国の関係』   です。
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[本文から]

日韓の「泥試合」の根源は日韓基本条約など
飯田 光徳 氏 ①


 10月15日、和歌山県民文化会館会議室で「日韓問題の本質とは!~安倍政権の日韓対応のねらいは何か~」と題する講演(講師:日本コリア協会大阪理事長・飯田光徳氏)が行われました。その講演概要をご紹介します。1回目。



 講師の飯田光徳氏は、まず「和歌山大学卒業後に高校で歴史を教え、今の肩書の日本コリア協会は旧日朝協会」と自己紹介されました。
 「安倍政権の印象操作とマスコミ」「コリア半島との険悪な関係はこの150年」として、歴史と事実を検証しようと提起され、植民地支配、現在の米朝・南北コリア関係、1965年の日韓基本条約の問題点、安倍首相の系譜、徴用工問題解決の道、北東アジアの平和と日本国憲法9条について詳しく語られました。
 安倍政権の印象操作については、政権が徴用工問題など日韓問題はすべて韓国が悪いと対話姿勢を見せず、マスコミも同調する結果、日本で韓国を肯定的に見る割合は20%と印象操作の呪縛を受けている。
 明治維新後の日朝(日韓)関係では、半島の権益をめぐる日清・日露戦争、1910年の日韓併合と植民地支配が重要で、植民地朝鮮で日本がしたことのキーワードとして、①憲兵警察統治、②親日団体育成、③土地調査と産米増産、④日本語教育、⑤皇民化政策、⑥創氏改名、⑦徴兵制と徴用、⑧日本軍「慰安婦」がある。併合と言っても内地とは差別された植民地支配であった。安倍政権を固めている日本会議議連や靖国議連の勢力は、これら負の歴史を全て消し去ろうとしている。
 現在の米朝・南北関係については、北朝鮮の核・ミサイルは通常兵器より安いから、アメリカに「ピストル(核・ミサイル)を突き付けながら求愛している(体制保証・経済制裁解除)状態だ。日本の安倍政権はミサイル発射を支持率上昇への好材料として「北朝鮮特需」と呼んだ。米朝関係では、トランプ政治は内向きで、外交はショーの面があり、米国の誠意のなさに北朝鮮がいらついている。韓国は、戦争が起きたら壊滅的な状況になるので、民衆もマスコミも戦争を煽らない。第3回南北会談(2018年9月)は、①半島の完全非核化、②軍事分野履行合意書を交わすなどをし、陸海空の敵対行為中止、板門店の完全非武装化など詳細な合意をしている。
 続いて、「今日の日韓の『泥試合』をどう見るか」という核心の問題については、「泥試合」の経過として、日本側は米国が北朝鮮ミサイルを「脅威ではない」とする中で北朝鮮脅威論を使えなくなった背景があり、①韓国が「慰安婦」合意破棄、レーザー照射、②徴用工問題で訴えられた日本企業には対話をさせず、経済報復へ(参院選目当て)、③マスコミが「反日デモ(集会)」と報じて嫌韓を煽り、自民は参院選で過半数獲得、④韓国は特使を送り対話を模索、8月15日の光復節の大統領演説も対日批判を和らげ、日本にも事前通知、⑤日本は反応せず、徴用工問題解決の財団案を説明しようとした駐日韓国大使を河野外相が「無礼」と怒鳴りつけて発言を封じる、⑥韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を宣言、等の経過があった。
 こうした「泥試合」の根源は、1965年体制《日韓基本条約、請求権協定など》だ。(つづく)



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「維新の会」をどうみるか
「憲法講座」における渡辺治一橋大学名誉教授の質疑応答から


 維新の会の伸張は、特に大阪における自公政権による新自由主義政治、安倍政治への不信とそれに代わる選択肢を求める声の増大の過渡的現象と捉えることが重要です。
 同じ大都市圏といっても、大阪と東京では、小泉構造改革以降の政治動向には非常に大きな違いがあります。東京と大阪の自民党の比例得票率の推移を見ると、10年まではそんなに違いはありません。大阪の方が自民党政権に対する不信が強い程度です。ところが安倍政権が誕生した12年以降東京は、自民党支持が増えるのですが大阪は増えていません。まずこの点を押さえて欲しいのです。この差は、自民党が推進し、安倍政治で再起動しようとしている新自由主義政治─構造改革政治に対する東京、大阪の違いにあると推測されます。
 なぜ大阪が東京よりも自民党の構造改革政治に対する不信が強いのか。東京は新自由主義改革、大企業本位の改革で潤うグローバル企業の正社員、株で儲かる富裕層が堆積しており、他方、その新自由主義改革によるリストラ、非正規化、社会保障の改悪などの下で貧困化し困難を抱える広範な人々もいます。東京は構造改革で二極化します。この上層の安倍政治への期待が、東京での自民党支持率引き上げの要因です。その証拠の1つに、東京で自民党の得票率が40%以上の区があります。40%以上はそれこそ石川県とか山口県ですが、そういうところが東京にもある。千代田区、中央区、港区です。一人当たりの平均課税所得は港区では1000万円を超えます。富裕層とか、特に大企業の管理職層、正社員労働者、現役層が住んでいるのです。
 しかし大阪は違います。大阪は新自由主義改革で潤う層が堆積するというよりは、グローバル化と新自由主義政策の被害の方が大きい。大阪の主要な製造業は、大企業も含めて、東京のように必ずしもグローバル化と新自由主義改革の中で羽ばたく企業ではない。コツコツと作ってきた製造業、これは構造改革の中でダメージを受ける。だから東京に比べて小泉改革の評判も悪いし、一貫して、東京よりも自民党支持は低かったのです。それが一番強く出たのが00年代の後半です。00年代の後半から大阪は、自民党の得票率ランキングでは、常に47都道府県中、46位か47位を沖縄と争うほど自民党不信が強いのです。
 自民党に代わって大阪府民の期待を集めたのが民主党でした。ところが、その民主党政権も消費税増税、新自由主義への転向で裏切って、自民党政治に代わる選択肢にはなり得ないと分かった。こうして民主党のランキングでも大阪は最下位を争うようになった。12年、安倍が政権復帰した時の面白い選挙結果があります。12年の選挙で大阪の結果を見ると、自民党の47都道府県の支持率最下位は大阪なのです。ところが民主党の47都道府県の支持率で大阪は46位、14年総選挙では最下位なのです。
 維新の会は、こうした自民党に代わる選択肢、民主党に代わる選択肢として台頭したのです。維新が伸びたから、自民や民主党が減ったのではなく、自民もダメ、民主もダメの代わる選択肢として維新が期待されていると見る必要があります。維新は、新自由主義政治に代わる選択肢を見つけられない過渡的現象ではないでしょうか。
 だから私は「東京よりも大阪の方がいい」と言うとみなさん動揺するのですが、それは明らかに大阪の方が大きな不満で、どうしたら大阪は再生できるのかという時に、残念ながら大阪府民は安倍政治に代わる選択肢を見つけていない。これが今のような状態の維新の伸張を生み出しているので、これは過渡期の問題だということとして捉える必要があると思います。
(『憲法運動』485号より)

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【九条噺】

 即位の儀で高御座の天皇に、安倍首相の「天皇陛下万歳」は国民主権の下で如何なものかと思うが、愛知大学・長峯信彦教授の象徴天皇制に関する興味深い考察を紹介する▼教授は、生前退位が議論された時の「天皇にも人権があるから生前退位を認めるべきだ」という理由付けには問題があると言う▼人権とは我々のような「普通の人」が生まれながらにして持ち、国家権力にも侵されない基本的な権利を言う。どんな血筋であれ「人一般(普通の人)が全て同じ立場で憲法上の権利を享受する原理で「君主・貴族等の特権」に対抗した概念である。君主の血筋として認められてきた人々(天皇・皇族)が、その血筋であることの表明を一切やめて、「人一般」にならない限り「人権主体」になることは、原理的にあり得ない▼「特定の血筋にしか継承できない地位」は身分制概念で、天皇や皇族が「人権主体」なら、特定の血筋の表明をやめて「人一般」になったと表明しているのに等しい▼もし、天皇や皇族に人権があるのなら、現在の状況は、特定の人に余りにも重大な人権制約を憲法の下で認めることになり、重大な憲法違反になってしまう。「天皇・皇族といえども、人間としての尊厳はある」と言うべきで「天皇・皇族にも人権はある」という俗っぽい前提から出発してはならないと言う▼この議論は、あくまで象徴天皇制が日本国憲法の国民主権の原理に、どこまで合致するのか、否かの観点から見極めて、考えねばならないことだ。(南)

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言葉「国民投票法」のCM規制(2)

 「国民投票法」では改憲案への賛成または反対の投票をする、またはしないよう勧誘する行為を「国民投票運動」と言います。その運動方法の一つとして、テレビ・ラジオのCMで、改憲案への賛成投票/反対投票を呼びかけることがあります。105条は「国民投票の期日前14日に当たる日から国民投票の期日までの間においては、国民投票運動のための広告放送をし、又はさせることができない」と規定していますが、国民投票運動に該当しない意見表明CM(「当団体は、改憲案に賛成/反対です」といったCM)であれば規制対象にならず、投票日まで許されます。社会的に影響力のある芸能人や文化人らを出演させた意見表明CMであれば、簡単に感情移入をさせてしまい、いくら勧誘表現を含まないといっても、国民投票運動CMに匹敵する勧誘効果を上げることが容易に想像出来ます。事実上、投票日まで国民投票運動CMが野放しになってしまうことになります。
 国民投票を実施しているスイスではテレビ・ラジオのCMは最初から全面禁止にしています。放送局幹部は「放送CMは、投票権者の感覚に働きかけて刷り込みを図るものなので禁じるのは当然だ」と言っています。
 イギリスのEU離脱国民投票では、英調査機関が、1万2千人の投票者に「離脱か残留かを決めたのはいつ?」という調査をしたところ、76%以上の人が投票日の1週間前までに決めたことが判明しているそうです。日本でも同様の傾向になる可能性が高く、現行ルールのままでは手の込んだ刷り込みCMが改憲発議の直後から流れ続け、禁止期間に入るまでに相当数の人が「刷り込み完了」となる恐れも多分にあります。
 CMの実施には極めて高額な資金が必要です。それを調達出来る陣営しか実施出来ません。CMは全面禁止か、資金の有無に関係なく賛否両派が同じ時間帯に同量のCMを流せるといったルールにすべきです。

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リーフレット紹介『このままでいいのか? 日本・韓国の関係』



・日本は朝鮮半島全体を植民地として支配していた
・戦時中に軍需産業や鉱山などに労働者を強制「徴用」していた
・「徴用行」の人々個人への日本からの補償は行われていない
・日韓条約締結の際に日本が供与した5億ドルは賠償ではない
・日韓請求権協定は個人請求権をも放棄したものではない
・韓国大法院の判決は日韓請求権協定を認めたうえでの判決である
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発行:日朝協会/憲法会議
判型:A4判両面四つ折り 頒価:10円(送料別)
注文は 憲法会議 FAX 03-3261-5453
    日朝協会 FAX 03-3230-2382 へ

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(2019年10月21日入力)
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