「九条の会・わかやま」 388号を発行(2019年12月07日付)

 388号が12月7日付で発行されました。1面は、自衛隊を憲法に書き込むと普通の軍隊になる(長岡 徹 氏 ③)、中村哲医師 死去、   です。
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自衛隊を憲法に書き込むと普通の軍隊になる

 11月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第16回憲法フェスタ」が開催され、関西学院大学教授(憲法学)・長岡徹さんが「戦場へ行く自衛隊~改めて安保法制の違憲性を考える~」と題して講演されました。講演要旨を3回に分けてご紹介します。今回は3回目で最終回。

長岡 徹 氏 ③



 憲法に自衛隊を書き込んでも9条2項が残るので「自衛隊は戦力か」との議論は残り、自衛隊は国際紛争を解決する手段ではないということになり、自民党案2項の2と矛盾することになる。後法優先で2項が死文化するという解釈もあるが、後法優先は立法者が知らなかった時で、今回はそうではないから1項2項を含めた解釈が必要だが、解釈のしようがないということになる。自民党改憲案は、「前項の規定はあるが、必要な自衛の措置をとることが出来、その措置を実行する組織を持つことは出来る」となっている。自衛の措置には集団的自衛権が含まれ、集団的自衛権を行使する実力組織と解釈すると、やはり2項と矛盾することになる。この矛盾を解決するには、国の安全を保つために必要という論理が優先されることになり、その過程で2項は死ぬことになる。自民党改憲案は「自衛隊は必要最小限の実力組織」とは書いていない。2項が死文化するから書く必要はない。つまりこの自衛隊は普通の国の軍隊だ。自衛隊を書き込むと普通の軍隊になるので、また安保法を改正しなければならなくなる。何も変わらないなら850億円もかけて国民投票をする必要もない。
 憲法に書かれている国家組織は国会、内閣、裁判所、会計検査院だけだ。自衛隊を書くとこれらに並ぶ組織になる。今、自衛隊は軍部ではなく行政の組織で、内閣の下にある。自衛隊を書くと行政から独立した組織になる。軍隊の組織の特徴は、指揮命令系統がはっきりしていて、最高司令官がいて、統帥権の所在が明確である。もうひとつは軍法会議だ。自衛隊には軍法会議がないので、自衛隊法違反は普通の裁判所で裁かれる。自民党案9条の2は首相に統帥権があることを明確にした。自民党は憲法改正で軍法会議を設けるという案を持っているが、現憲法下でも最高裁判所への上訴の道を開いておけば、軍法会議を設置しても違憲とは言えない。今は総理大臣が内閣を組織し、内閣が国の行政権を掌握している。国の行政の中に防衛という行政があり、自衛隊は行政の中の実力部隊だ。総理大臣は内閣を代表して自衛隊を指揮監督するが、自衛隊が内閣と並ぶ組織になると軍になる。そうすると存立危機事態か重要影響事態で、戦争に参加する自衛隊になり、自衛隊は普通の国の軍隊になる。1項2項があるから大丈夫とはならず、死文化する。
 実質的な改憲を阻止することも我々の課題だ。当面の問題は自衛隊の海外派兵の常態化だ。今PKO部隊の派遣はないが、ジブチには自衛隊基地があり海賊対処で海上自衛隊が派遣されている。今度はペルシャ湾への派遣を米国から要求されている。イランと日本は親密な仲なので、自衛艦を中東に派遣するが、調査・研究目的とした。防衛庁設置法では、自衛隊を海外に派兵することは想定していないので、地球の裏まで調査・研究に行くのは拡大解釈だ。調査・研究で行くだけだから、艦船の警護は出来ず、武器も正当防衛・緊急避難以外は使用出来ない。近くで船舶が攻撃されたら、首相の同意の下、防衛大臣が海上警備行動を命令する。自衛艦が攻撃されたら自衛隊の武器防護のために武器使用が出来る。近くにいる米軍が攻撃されれば、米軍等の武器防護のために武器使用をすることになる。ホルムズ海峡が封鎖されたら、存立危機事態として武力行使をすることになる。ただ、まだ反対運動はそれほど大きくはなっていない。
 次に財政の軍事化だが、「GDPの1%枠」はどうなったのか。アメリカ兵器の爆買いをしており、全部後年度負担で積み重なっていくから1%を超える。1%枠の廃止は87年に中曽根首相が閣議決定をした。中曽根首相は「防衛費が無制限に膨張することはない。我々は、憲法に基づいた専守防衛なので軍事大国にはならない。非核3原則を守り、節度ある防衛力を心がける」と述べていた。しかし今、専守防衛はなくなり、節度あるかもよく分からない。鍵が壊れた状態になっている。護衛艦「いずも」を改修し、F35Bが離発着出来るようにする。空母は防衛力がないから単体では行動出来ない。常に駆逐艦に守られながら行動しなければならない。これを守るイージス艦は日本には2隻しかないので「いずも」はいつもアメリカの艦隊と一緒に行動する。だから、「いずも」に離発着するのは米軍機だろう。そういう使われ方をする。
 「産業の軍事化」では、国際兵器見本市が15年から隔年で幕張メッセで開かれるようになっている。国内外から150社が出展予定だ。14年4月、安倍政権が「武器輸出3原則」を撤廃、「防衛装備移転3原則」にして、実質的な武器輸出全面解禁をしたからだ。
 「科学の軍事化」では、防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」を始め、15年度総額3億円でスタートし、17年度には110億円に膨らんで、100億円以上の金が防衛装備庁から大学や企業の研究所に流れている。日本学術会議は今まで2回、戦争に結びつき、戦争を目的とする研究は行わないとしてきたが、今は何故悪いのかと若い人を中心に声が出てきている。
 自民党の古賀誠氏の『憲法九条は世界遺産』には、「9条を大事だと考える人は立場の違いを越えて協力し合う必要がある。平和というのは革新だ保守だというような理念や政策を越えたものだ。そこだけは一緒にやっていけるという信念が私にはある」とある。自民党・保守の中にも自衛隊は必要だが9条も必要だし、自衛隊を戦地に送るようなことは絶対にしてはならないと考える人もたくさんいる。野中広務氏は自衛隊は外に出してはいけないと主張していた。私たちの運動も、9条が必要だという人たちと、もっともっと広く手を繋げることをしていかなければならない。(おわり)

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中村哲医師 死去



<和歌山市で講演される中村医師(2010年10月29日)>

 アフガニスタンで人道支援活動を続けるNGO「ペシャワール会」の現地代表、中村哲医師が12月4日、死去されました。深く哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。
 中村医師は4日、東部の都市ジャララバードを車で出発し、約20キロ離れたかんがい用用水路の工事現場へ向かう途中で銃撃されたとのことです。
 19年には、アフガンでの30年以上の活動が認められ、同国の名誉市民権が中村医師に授与され、ガニ大統領から市民証を手渡されています。
 中村医師は何度も来和され、「9条を守ろう」と講演をしていただきました。

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「金屋9条の会」「きび9条の会」
毎月ストリートアピール


 「金屋9条の会」「きび9条の会」は「新婦人有田川」とともに4年前の11月3日から毎月3日に、1回も欠かさず有田川町役場前信号でストリートアピールを行っています。今月で49回を数え、延べ参加人数は、1022名に上ります。毎回、道行く人たちが手を振ってくれ、元気と勇気をもらっています。地味な活動ですが今後も続けていきたいと考えています。(事務局長・水野哲男さんより)




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【九条噺】

 ローマ教皇の11月24日の被爆地長崎と広島でのスピーチは、世界平和に向けた力強いメッセージとなった。特に長崎で雨が降りしきる中、熱心に聴き入る人々に語った言葉が印象的だ▼「この場所は、私たち人間が過ちを犯しうる存在であるということを、悲しみと恐れとともに意識させてくれます」と言い、浦上天主堂で発見された被爆十字架とマリア像は被爆者と家族が生身に受けた苦しみを想起させると延べた▼「人の心にある最も深い望みの一つは、平和と安定への望みです。核兵器や大量破壊兵器を所有することは、この望みへの最良の答えではありません」「ここは、核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である町です。そして、軍備拡張競争に反対する声は、小さくとも常に上がっています」▼「軍備拡張競争は、貴重な資源の無駄遣いです」「今日の世界では、何百万という子どもや家族が、人間以下の生活を強いられています。しかし、武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、日ごと武器は、一層破壊的になっています。これらは途方もないテロ行為です」▼「政治をつかさどる指導者の皆さんにお願いします。核兵器は、安全保障への脅威から私たちを守ってくれるものではない、そう心に刻んでください」▼教皇の訴えに強く共感し、「憲法9条の理想を実現せよ」と言われたと思えた。だが、翌日に菅官房長官が記者会見で、核を含む米国の抑止力が現実的と述べたのは腹立たしい。(柏)

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みなべ「平和を願う町民のつどい」開催



 みなべ「九条の会」は23日、南部公民館で「第8回平和を願う町民のつどい」を開いた。
 開会挨拶で柳田孝二世話人代表は、「戦争へ参加していけるようにすることが『9条改憲』の狙い。狙いと本質を町民に訴え、広く理解していただき、『9条を守ろう』『改憲は許さない』という運動を町内につくっていかなければいけない」と語った。
 「戦争を語る」と題し、山中紀子事務局長は、フィリピンのルソン島で餓死した父のこと、「戦争未亡人をつくらないで」と佐藤栄作首相に宛てて書いた母の手紙のことを紹介。山中さんは、「私は希望を語りたい。今月17日は『全国首長9条の会』が結成され、力強い。戦争はあかん、9条を変えないでということをやり遂げなければいけない」と話した。
 中国蘇州生まれの光吉敏郎さんは、開戦で中国から内地にたどり着いて見た駅での出征の光景、入隊後の上官による新兵へのいじめやしごきなど、忘れられない記憶を語った。自衛隊への名簿提供問題や、憲法9条俳句の公民館だよりへの不掲載問題に触れ「再び戦争の足音が聞える。戦争は嫌と言えない日本になりつつある。改憲に打ち勝ち、平和な日本を子どもや孫たちに残そう」と呼び掛けた。
 日高町の嶋田奈津子さんは、ウクレレを弾き、自分の子どものことや平和への思いを語りながら歌った。(紀伊民報11月29日付より)

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書籍紹介『憲法九条は世界遺産』



 憲法9条改正に反対するとともに、憲法に自衛隊を明記する自民党案について、「書く必要がない。少しでも9条改正につながるようなことは針の穴程度でもやってはダメだ」と、警鐘を鳴らしている。
 本書は古賀氏が昨夏、神戸市で行った同名の講演の内容を基に加筆、再構成した。
 憲法9条について「再び戦争を行わないと、世界の国々へ平和を発信している。これこそ世界遺産だ」と訴え、「一切改正してはダメだ」と強調している。
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発行:(株)かもがわ出版
   TEL:075-672-0034 FAX:075-672-0035
著者:古賀 誠  判型:四六判、96ページ
出版:2019年9月 定価:1000円+税

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(2019年12月07日入力)
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