「九条の会・わかやま」 392号を発行(2020年01月25日付)

 392号が1月25日付で発行されました。1面は、憲法 私はこう考える 伊藤真さん(法学館憲法研究所所長) 憲法のいま・みらい、安倍9条改憲NO!を求めて 世界平和と近隣友好を目指そう 「九条の会・わかやま」事務局・柏原 卓、九条噺、2面は、第67回「ランチタイムデモ」実施、自民党が「憲法改正ポスター」を発表 「憲法改正の主役は、あなたです」  です。
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[本文から]

憲法 私はこう考える
伊藤真さん(法学館憲法研究所所長)
憲法のいま・みらい




そもそも憲法ってなんだろう?
憲法は、国民が国を縛るもの

 憲法は〝法〟ではありますが、〝法律〟とはまったく違う役割があります。憲法とは何か? 憲法とは通常の法律とは違い、私たち国民が守るべきものではなく、国民が国に対して、具体的には政治家や官僚、裁判官に対して守らせる法だということです。つまり私たち国民には憲法を守る義務はまったくない。ただ国に対して守らせる責任があるということです。そのうえで憲法は何を大切にしているかというと、一人ひとりを個人として尊重するという考え方です。憲法の基本原理、三原則は人権尊重・国民主権・平和主義と私たちは学校で習ってきたわけですが、それ以上にもっと大切にされているのは個人の尊重という考え方なのです。
 人は誰も皆同じように大切にされるべき価値がある、と同時に、一人ひとり違ってあたり前であり、むしろ人と違うことは素晴らしい。そんな考え方が憲法の根本の価値なのです。それを守っていくために国民が国や政治家を縛る法だということでしょう。

日本の憲法の特徴は?
日本の叡智〝和をもって尊しとなす〟

 いまの私たちが憲法といっているものは、近代国家の憲法です。1776年のアメリカの独立宣言、1789年のフランスの人権宣言など、近代市民革命後の近代国家の憲法であり、アメリカもイギリスもドイツもフランスも同じような考え方が基本となっています。それは世界共通の価値であり人類の英知の継承といえます。そのうえで徹底した恒久平和主義を取り込んでいるところが日本の憲法の特徴です。世界の先進国のなかで武器をつくり輸出をしないでこれだけの経済大国となった国は日本だけ。私はそれこそが日本の叡智だと思っています。  いまの日本の憲法は、アメリカからの押しつけだとか、そもそも西洋の近代キリスト教社会の価値観に過ぎないのではないか、といった議論もあります。では、日本の歴史をひもといて、聖徳太子によってつくられた「十七条憲法」をみてみましょう。
 〝和をもって尊しとなす〟という言葉は有名ですが、そこには、諍いは避けること、多様性を認めること、多くの民の声を聞いて政を行うことなどが書かれていて、まさにいまの憲法と同じような価値観や考え方がはっきりと表れています。日本国憲法は、もともと日本人が持っていたメンタリティ、文化や伝統に合致していた。だからこそ70年という長い間、変わらずにきたといえるのではないでしょうか。

憲法と自衛隊について、どうお考えですか?
現実とギャップがあるからこそ理想を目指す

 憲法は国のあるべき姿を示す、国の理想のカタチを示すものだという面があるのは確かです。これは安倍首相もはっきりといっています。その点では安倍首相の考えは間違っていないと思います。では、どういう国を目指すのかということを考えたとき、私は九条の理想をあくまでも目指すべきだと考えますが、そうではなく軍隊を持った強い国を目指すべきだという人たちもいます。いずれにしても現実と食い違っているからこそ緊張感が生まれたり、理想を目指していこうとしたりするわけです。このとき、理想と現実のギャップを埋めてスッキリしたいという理由だけで憲法を現実に合わせてしまうという考えは、憲法や法が何故あるのかを考えたとき、あまりにも無頓着だと思います。自衛隊を憲法に明記してもなにも変わらないというのは、少なくとも嘘だと思います。
 現行の憲法では国防や安全保障のために人権は制約を受けませんが、自衛隊の明記により新たな人権制約の根拠が生まれるでしょう。変わるということを前提に、では変えるべきなのか、変えるべきではないのかというフェアな議論をしっかりしていけばいい。そのうえでの国民投票であるべきだと考えます。

憲法のみらいについて、どうお考えですか?
憲法はふだん意識しなくてすむ方が本当はいい

 いま憲法改正の論議が盛んになされているのはいいことです。ただ、やはりその必要性の議論がまず先にあるべきだと思います。いまの制度や法律改正ではだめなのか? そのうえでどうしても憲法を変えなければどうにもならないというときに、はじめて憲法改正の議論を始めるべきでしょう。それと憲法を変えれば何もかもうまくいくといった幻想は抱くべきではない。いいかえれば、憲法は魔法の杖ではありません。憲法改正によってこの国がガラッと変わってしまうほど憲法は凄いチカラを持っているわけではまったくないのです。憲法はどういう言葉、文言だろうがその国の国民のレベル以上には成りえないのです。結局、憲法を実行化して効果のあるものにしていくのは国民の支えがあってこそ。私たち国民が憲法のチカラをもっともっとつけていくということをしないといけないと思います。
 憲法は、水や空気といっしょでふだんは意識しないですむのが本当はいいのですね。憲法は国民が国を縛る法ですから、縛られている国のほうがうまく国をまわしていれば意識しなくてもいいわけです。政治家や国の方から憲法改正の動きが出てきたことが、私たちが憲法をあらためて考えるきっかけになればいいと思います。
(「総がかり行動実行委員会」のHPより)

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安倍9条改憲NO!を求めて
世界平和と近隣友好を目指そう
「九条の会・わかやま」事務局・柏原 卓


 2020年頭の希望は、安倍改憲の意図を止め、海外での戦闘に巻き込まれず、世界平和と近隣友好ということだ。大きな話から始めたが、ここで個人体験に引き付けて日頃からの願いを記してみたい。
 私は高校時代に朝鮮高校との交流会に誘われて歌を習ったり、朝鮮高校生の親たちが寄金や勤労奉仕で「ウリハッキョ(私たちの学校)」を建てた話を聞いたりした。貧しくて弁当のない人は昼時にはそっと姿を消していたという。 朝鮮人を見下す言葉くらいしか知識がなかったので、見聞のすべてが新鮮だった。以来、ハングル文字や文化、歴史に興味を持った。本で少し言葉をかじったが中断した。和歌山に就職して、1984年にNHKハングル講座が始まり、86年からテキストで勉強した。95年に娘とソウル観光をし、空港で巡視する兵士、室内遊園地や百貨店、活気ある市場の露店、ピリ辛の食べ物など、たっぷり外国を体験した。その後、家族3人で釜山・慶州・ソウルのツアー。妻たちは慶州のカルビ焼肉と御飯が美味しかったと今も言う。古都慶州の仏国寺では日韓の寺院様式や礼拝の違いを知った。ソウルでは朝鮮王朝の正殿の景福宮と、正面をふさぐ国立中央博物館(旧朝鮮総督府、後に解体撤去)を訪れた。朝鮮半島の長い歴史と発達した文物を目にした感銘と、それを逆なでするような旧総督府との取り合わせに、過去の不幸な歴史への思いを深めた。2回目は釜山の海雲台だ。広大な砂浜と海の向こうに日本の対馬が見えた。その後も数多く訪韓した。近くて何度も行きたい、興味尽きない外国だ。しかし今、日韓関係は泥沼状態にある。韓国側の対応にも問題があるとしても、根底には日韓基本条約で植民地支配への反省が皆無で、慰謝料の性格の賠償もしなかったことがある。関係改善のためには、広く日本国民が植民地朝鮮で何が起きていたかを知ることが重要だ。平和を築く一歩と考える。



(慶州・仏国寺)

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【九条噺】

 和歌山市の断水が中止になった。水漏れが太い本管なら市の約5分の1の地域で3日間の断水と予告されたが、幸い細い枝管だったため修理を終えて断水は避けられた▼しかし予告から数日、JR和歌山駅のトイレ、飲食店、家庭の水などに深刻な憂慮と困惑が発生し、非常用ポリタンクが品薄になるなど混乱した。断水の有無が19日夜の掘削まで確定できず、和歌山市からの予告が間際になったことや、問合せに答えられなかったことも、市民の心配をつのらせた▼この渦中で個人的にやや離れた二つのことを連想した。一つは自治体の役割、一つは政権の老朽化だ。前者は自民党の「改憲4項目」中の緊急事態条項、後者は政権の長期化と驕りに関わる▼緊急事態条項の理由づけに自民党は大規模災害を上げるが、①「災害救助法」などの法律が整備されている②災害現場を知り対応を担うのは地方自治体で、政府への集中は現実的ではない。この「現場を知っている」という自治体の値打ちを今回改めて感じた。付近で農業用水に水道水が混じっていたことから、音検知で水道管破損個所を突き止め、約60年前に敷設したことや細い枝管の存在が判明した。技術者と記録文書が活躍した▼次に、各地で事故続きの古い水道管と同じく安倍政権も長期化で腐敗し、森友加計問題、桜を見る会、IR汚職など、「驕りや緩み」自戒を口にするほど国政をゆがめている▼通常国会が始まったが、こんな首相の改憲への執念を許さず警戒しよう。(柏)

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第67回「ランチタイムデモ」実施



 1月21日、冬空の下、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける第67回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が、60人の市民が参加して行われました。和歌山市役所から京橋プロムナードまで「安倍改憲反対」を訴え行進しました。
 出発に先立ち、「通常国会で安倍首相は〝桜〟のことには一言も触れず、改憲ばかりを言っている。今、中東情勢が一触即発のところに来ているが、政府は閣議決定で簡単に決めて、中東へ自衛隊を派遣した。今年こそ、この政権を、改憲発議をぶっ潰すべく、元気に行進しよう」とのスピーチがありました。

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自民党が「憲法改正ポスター」を発表
「憲法改正の主役は、あなたです」




 1月7日、自民党は、「憲法改正推進ポスター」2種類を制作し、全国展開すると発表しました。
 自民党のHPでは、「党広報本部は、憲法改正をテーマとする2種類のポスターを制作しました。どちらも『憲法改正の主役は、あなたです』をメインのキャッチコピーとしており、今回のポスターを通じて、憲法改正が国民の皆さまの手で行われるものであることを、あらためてPRします。デザインは草原を背景に各世代の国民を配したものと、男女のイラストにキーワードを組み合わせたものとしています。シンプルにすることで、わが党のメッセージを分かりやすく表現し、憲法改正の議論を身近に感じていただけるよう意識しました。各4万枚を印刷し、今月下旬から全国展開。党の各種集会でも積極的に活用していきます」と述べています。「要注意」です。

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(2020年01月25日入力)
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