「九条の会・わかやま」 396号を発行(2020年04月05日付)

 396号が4月5日付で発行されました。1面は、3000万人署名、総数992万3515人に  総がかり行動実行委員会が国会議員会館前で「19日行動」、役割規範に縛られていませんか?ジェンダー視点とは ―― 奈良女子大学教授・三成 美穂 氏、九条噺、2面は、言葉 「緊急事態宣言」、行事中止のお知らせ  です。
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3000万人署名、総数992万3515人に
総がかり行動実行委員会が国会議員会館前で「19日行動」




 「官邸の検察人事介入糾弾!自衛隊は中東沖から撤退せよ!特措法の緊急事態宣言使うな!安倍9条改憲発議NO!」を掲げ、総がかり行動実行委員会は3月19日夜、国会議員会館前で「19日行動」を行い、600人が参加しました。新型コロナウイルスが感染拡大している中での行動でしたが、人と人との間隔を空ける、マスク着用を呼びかけるなどの対策を講じての開催となりました。
 総がかり行動実行委員会の福山真劫共同代表は、「本日、3000万人署名32万6730人分を提出し、総数で992万3515人分となった。憲法改悪を許さない決意を固め合おう。自民党の2020年運動方針は、改憲への強い決意を打ち出している。コロナ問題が大変な時に何が改憲か。自らと友だちの犯罪を隠ぺいしようとしている安倍首相は許せない。安倍首相を糾弾し、市民と野党の連帯でがんばり合いたい。新しい政権・未来は必ずできる。勝利するまでがんばりましょう」と呼びかけました。
 海渡雄一弁護士は「特措法の緊急事態宣言を使わせてはいけない。危機対応、いのちを大切にする理念に立っていない」と指摘。「検察庁法が改正されれば、官邸や大企業、政府の不正に検察がメスを入れられなくなる。何としても検察庁法改正を阻止しよう」と呼びかけました。
 小田川義和共同代表が行動提起を行い、「モリカケ、桜を見る会、カジノ問題など何ひとつ解決していない。国政を私物化する独裁の安倍政治を許してはいけない」と訴え、当面の行動について提起しました。(憲法共同センターNEWS・3月23日・314号より抜粋)



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役割規範に縛られていませんか?
ジェンダー視点とは ――
奈良女子大学教授・三成 美穂 氏




服装や色が意味するのは?

 「ジェンダー」は堅苦しく考える必要はありません。日常生活の色、服装、マナーに、なぜ? と問う。これが「ジェンダー視点」です。
 私たちの服装を考えてみましょう。女性はズボンもはけば、スカートもはく。色もとりどりです。では、男性はどうか。ほとんどがズボン姿。紺やグレーといった地味めのスーツが多いですよね。なぜ? と問うたことがあるでしょうか。
 18世紀のヨーロッパ貴族男性は美しくなければなりませんでした。刺繍やレースのブラウスで威厳や富をアピールし、高価な絹靴下やハイヒールを着た自分の姿に見惚れていた。19世紀、市民の時代になると、上層の市民男性は勤勉を美徳とするようになります。服装は地味になり、ズボン姿で働くようになった。その代わり、妻を着飾らせて富を誇示し、妻を働かせるのは夫の恥とされました。働く必要のない市民女性はドレスを着続けます。20世紀にスカート丈が短くなっても、長い間、女性はスカートを捨てなかった。「働きやすいズボン、働きにくいスカート」は、性別役割を表現する記号の一つなのです。
 色はどうでしょう。男の子には水色、女の子にはピンクの服を着せませんか。青には冷静沈着、ピンクにはかわいらしいという願いが込められています。トイレマークを思い浮かべてください。青色のズボン姿と赤色のスカート姿。これだけで男女の区別ができてしまう。だから、身体と心の性が一致しないトランスジェンダーの人たちは、トイレのまえで悩むのです。どちらに入るべきか。

男性も解放されるべき

 「ジェンダー」とは、性に基づいた規範や役割を指します。社会や文化のなかで「こうあるべき」とされた男らしさや女らしさなどです。ジェンダー規範は女性への抑圧のみのように語られますが、男性をも縛っている。そして、男性に対する縛りのほうがきつい。
 「男たる者、泣いてはいけない」「男は、働いて結婚して妻を養わなくてはいけない」。そう思い込んでいませんか? 女性には、結婚する、シングルで働く、パートで働くなど選択肢が多い。けれども男性は違う。未婚だと一人前扱いされにくい。失業したとたんにおちこぼれ扱いされる。ジェンダーに基づく差別の根底には、女性差別の問題があるのですが、同時に目をむけるべきは男性差別です。「男だからがんばらないといけない」のではない。男女問わず「自分が実現させたい」が動機になると人生が豊かになると思います。
 「らしさ」にまつわる規範は、多くの人たちの心に「あたりまえ」や「常識」として組み込まれています。このため、「らしさってなに?」と疑問に思うきっかけを得づらいのです。
 「ジェンダー視点」を持つと社会をみる目が変わります。どうやってそれを持つのか。簡単です。みなさんの騒験から出てくる「これでいいのか」という感覚です。自分らしく生きたいのに、条件や抑圧があって選択できない。それは本人の能力でなく周囲の期待、自分に課した縛りというジェンダー規範からきていると気付くと問える。たとえば、お茶くみや皿洗い、管理職や国会議員。実は、ありとあらゆることがジェンダー規範に染め上げられています。

日本的な構造の反映

 日本はジェンダー平等停滞国です。国際会議では女性が多いのはあたりまえ。でも、日本の企業や閣僚などの会議は男性ばかりで異様です。政治経済の意思決定に女性が参与していない。グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(※)の順位の低さは、それだけが切り離されているのではなく、日常生活の日本的な構造の反映です。女性参画の実現は、法律をつくってクォータ制を導入すればできるし非常に効果的です。トップに女性を据えることでほかの女性のモデルになるし励みになります。

発見と救済の視点

 「ジェンダー視点」は発見の視点です。日常生活のなかで「こんなのあり?」と思ったとき問い直してみてください。熟年のご夫婦も「お父さん」「お母さん」という役割ではなく、ぜひ、名前で呼び合ってみてください。親しい人間関係の基本は「個人の尊厳」です。
 「ジェンダー視点」は救済の視点でもあります。「らしさ」にまつわる個人の困りごとは、そもそも社会が生み出したもの。自分もいつ似た立場になるかもしれない。そう思えば、共同・協力の糸口がはっきり見えてきます。
 社会の障壁にも自分の心の壁にも害されず、個人の自由な思いを実現できる社会。それが「個人の尊厳」が保障された公正な社会です。あらゆる世代が「ジェンダー視点」でそれぞれの問いかけをつかみとっていっていただければと思います。
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(※)グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(The Global Gender Gap Index:GGGI)とは世界経済フォーラムが毎年発表している世界男女格差指数。2019年の日本の順位は153カ国中121位。G7で最低。
(全国革新懇ニュース 2020年3月号(発行3月10日)№417より転載)
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 日本国憲法

第14条〔法の下の平等〕①すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 第24条〔家族生活における個人の尊厳と両性の平等〕①婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

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【九条噺】

 河野太郎防衛相は、政府が新型コロナウイルス対応で横文字の専門用語を多用していると批判した▼「集団感染」を「クラスター」、「感染爆発」を「オーバーシュート」、「都市封鎖」を「ロックダウン」などと、「何故カタカナ?」と批判し、「政府内でむやみとカタカナを使うべきではない」と文章の修正を求めた▼筆者も、テレビでの専門家や政治家の発言が気になっていた。「集団感染」「感染爆発」「都市封鎖」という日本語の方が誰にでも分かり易いと思う▼専門家の間での会話は横文字も必要だろう。だが、国や地方自治体に今求められているのは、小学生から高齢者まで全ての国民が新型コロナウイルス感染症に罹患せず、蔓延させないために、何に気をつけ、どんな行動をしなければならないかがしっかり分かるように、情報を分かり易い言葉で正確・迅速に発信し、国民と情報共有を強化することだ。横文字では、全ての世代の人がすぐに分かるとは思えない▼毎日、感染者の増加が発表されており、その数を聞いて不安を募らせている人は多いと思う。国民は、国や地方自治体が発する依頼や指示に自律的に協力することも必要だ▼しかし、緊急事態だといっても、民主主義や国民の権利を封殺してはならない。『天声人語』は言う。「およそ人間は、命令では動かない」。国民にしっかりと事態と解決方法、その根拠を理解してもらい、協力をお願いすることだ。命令ではなく知識の共有によって難題解決に進むことができる。(南)

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言葉 「緊急事態宣言」

 似た言葉に「緊急事態条項」がありますが、これは戦争・テロ・大規模災害などの非常事態が発生した場合、政府などの権限を一時的に強化する憲法上の規定です。日本国憲法には定められていません。その理由について、憲法制定当時の政府は「非常という言葉を借りて、それを口実に(権利や自由が)破壊されるおそれが絶無とは断言し難い」と説明しています。
 自民党は12年の憲法改正草案に緊急事態条項を盛り込んでいます。外部からの武力攻撃や内乱、大規模災害などが生じた場合、首相が国会を通さずに法律と同じ効力を持つ緊急政令の制定や人権の制限ができる内容です。
 さて「新型コロナウイルス感染症」が深刻な状況の中、安倍政権は現行の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象に新型コロナウイルス感染症を追加する法改正を可決させました。特措法32条1項は、「首相は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、国民生活、国民経済に甚大な影響を及ぼす事態が発生したと認めるときは、『新型インフルエンザ等緊急事態宣言』を公示する」となっています。  特措法では、首相の「緊急事態宣言」公示で、政府への権力の集中、市民の自由と人権の幅広い制限などが可能であり、憲法上の「緊急事態条項」ではなく法律上の規定ですが、日本国憲法の立憲主義の根幹が脅かされかねない危険性もはらんでいます。
 「緊急事態宣言」公示が必要な場合もあるでしょうが、その時、首相は専門家の意見を十分に聞き、理由や措置内容を国会に丁寧に報告し、私権制限を伴うのなら損失補償措置が絶対に必要です。そして、国民が納得する形での説明が不可欠です。
 コロナ騒動で「緊急事態宣言」を得た安倍首相は、日本国憲法に「緊急事態条項」を導入する方向に向かう危険性があります。現に自民党の元衆議院議長・伊吹文明氏はウイルス感染拡大を「緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がよい」と、「惨事便乗型改憲」を煽っています。安倍首相は、この特措法を「万が一のための備えをするための法律」と言いますが、「緊急事態宣言」を使える喜びは隠せない様子です。時の政治権力に巨大な権限を集中させることは、日本国憲法が保障する国民主権、基本的人権を停止させる危険があり、注意深く見守る必要があります。

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【行事中止のお知らせ】

新型コロナウイルス感染症を考慮して、例年開催されている以下の行事が中止になっています。
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 青法協憲法記念行事「憲法を考える夕べ」
  志田陽子氏講演
  4月28日 和歌山県民文化会館
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 HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2020
  5月 3日 和歌山城西の丸広場

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(2020年04月04日入力)
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