「九条の会・わかやま」 397号を発行(2020年04月15日付)

 397号が4月15日付で発行されました。1面は、くしもと9条の会「第6回総会」を開催 ペシャワール会のDVDを視聴、「人間を・また人間として、辱かしめ・辱かしめられてはならぬとする気質」 井上ひさし没10年に寄せて:憲法学者・樋口陽一さん(東京大学名誉教授)、九条噺、2面は、第70回「ランチタイムデモ」実施、ブックレット紹介『安倍改憲のねらいと危険性 ―改憲発議阻止のために―』  です。
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くしもと9条の会「第6回総会」を開催
ペシャワール会のDVDを視聴




 「くしもと9条の会」は3月29日串本町文化センターで、第6回総会を開催しました。
 今年の総会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために窓を開け、席の間隔を広くとり、マスクを配り、消毒液を用意して行いました。そして記念講演会に代えてペシャワール会のDVD『アフガニスタン 用水路が運ぶ恵みと平和』を視聴しました。
 オープニングセレモニーでは、恒例となりました演奏グループ「彌萬音(やまね)」より、「サントワマミー」「夜霧のしのび合い」「街のあかり」等、60年代のヒット曲メロディーをギター、マンドリン、二胡で演奏していただき、懐かしい曲に心躍りました。
 第1部は20名程の参加で、昨年12月、銃撃により亡くなられた中村哲医師がアフガニスタンで約25㎞の用水路を完成させたDVDを視聴しました。内戦が絶えないアフガニスタンで平和への足掛りを築かれたことに感銘し、「武器では平和を築けない」という教えを再認識しました。地球温暖化が言われていますが、用水路完成によりアフガンの砂漠では年平均気温が5℃前後下がり、夏の気温が2012年以降10℃以上下がったとのことです。
 第2部の総会は15名の参加でした。開会の挨拶で共同代表の末永氏は、新型コロナで出せるようになった緊急事態宣言の危険性を訴えました。その後の来賓挨拶で、「くまの平和ネットワーク」の増田氏は、コロナの影響で取り組みが難しい状況であるが、熊野紀南地域の9条の会が連携を取りながら元気をつけていきましょうと話されました。「わかくま市民連合」の岡氏は、違憲の政治が続いている。政治を変える唯一の道は選挙である。棄権をする人たちにわかりやすい政策と魅力ある候補者をたて、一票が生かされるかもしれないという運動をしていく必要があると強調されました。そして「原水爆禁止すさみ町協議会とすさみ9条の会」の事務局長の加藤氏からも挨拶いただきました。加藤氏には議案討議の中で、すさみ町の活動経験や方針を話していただき、保守と思われる人の中にも「9条だけは変えさせない」という人がいるので、信頼して地域に入り話しかけて、活動を広げてほしいとの発言がありました。
 総会の議案と次期役員は提案どおり拍手で承認され、最後に閉会の挨拶で船井共同代表は、今回計画した講演は次の機会に行い、みんなで地道に頑張っていきましょうと話し、最後に憲法9条を朗読して締めました。
(事務局・上柳博さんより)



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「人間を・また人間として、辱かしめ・辱かしめられてはならぬとする気質」
井上ひさし、没10年に寄せて 憲法学者・樋口陽一さん(東京大学名誉教授)


  井上ひさし(九条の会呼びかけ人)

 井上ひさしが世を去って間を置かず公刊された最後の大作『一週間』をとりあげて、評者大江健三郎は、小説の主人公――作者自身の父上の名を与えられているのだが――の造形に託された倫理性を、深いところで、また見事な表現でこう受けとめた。
 『一週間』の作者が他界して11カ月の後、「3・11」の天災と人災が、彼の「人間」そのものを育んだ東北を襲う。「みんなが豊かで幸せになる」という高度経済成長の夢が一転し、「無縁社会」とまで言われるようになった頃だった。しかし、無惨な破壊の衝撃の中で人びとは、絶望を越えた明日を求め、連帯の思いをこめた「人間」を再発見したのではなかったか。少なくとも私には、そう思える実感があった。
 そうした「人間」のそれぞれが、改めて「みんなの事柄」= res publica = 公共社会をどうやって編み上げてゆくか。悲劇は新生の足がかりになることが出来たはずだった。
 少年期の体験を遠景に置き、戦争という最大の人災を題材として書かれた井上の東京裁判劇三部作がある。その一つ『夢の痂(かさぶた)』の公演プログラムで作者は、「途方もない夢の、厚い痂を剥(は)がして」傷と向き合うことの意味を語った。「3・11」の犠牲と引き換えに「人間」を取り戻したとも思えた日本社会は、しかし、痂を剥ぐ痛みに耐えるかわりに、効き目もおぼつかない絆創膏を重ね貼りしながら、経済大国のかなわぬ夢をもう一度辿(たど)ろうとしてきたのではないか。それも、こんどは悲劇というより喜劇として。
 政治の演じ手の言説やおこないが問い糾(ただ)されても、膏薬(こうやく)貼りの手間さえ抜きに、数の力だけで物ごとが運ばれてゆく。そうした中で、財務省の公文書作成につき職責に忠実であろうとすることを妨げられ、不本意な最期を遂げた公務員の妻が、当時の本省理財局長の「指示」によるものだったことを記した亡夫の手記を公にした。それは、自分たちが「人間として辱かしめられてはならぬ」とする声をあげたことに他ならぬだろう。
 7年半に5回の国政選挙を通してそのような政治を支えてきた日本という社会自身こそ、「辱かしめられてはならぬとする気質」の有る無しが問われているのではないか。
 ほぼ1世紀まえ、はじめての普通選挙(但し男性だけ)の結果(1928年)に接して、『遠野物語』の著者として高名な柳田国男は、社会学者としての醒 (さ) めた眼で、こう書かねばならなかった。「我々は散漫なる孤独において、まだ自分の貧苦の問題をすらも、討究してみる力を持っていなかった」「われわれは公民として病みかつ貧しいのであった」。
 ここで遠野という言霊が柳田と、『新釈遠野物語』の作者井上とを結びつけるだろう。彼は他ならぬその場所で「わたしと遠野」(『聴く語る創る』19号)を語り、私たちに大切なことを考えさせる。
 ――「人と人のつながりの中で、伝え合って、その伝え合ったものが一番最初から大事にしてきた知恵の伝え方」だということ。それが「われわれの世代でぷつんと切れてしまう」ことがあってはならぬということを。
 「散漫なる孤独」を抜けだし、一本立ちしようとする一人ひとりが「公民」として自分を鞣(なめし)――わが作家の好きな言葉だった――「つながり」=連帯を仕立て直すために。
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 井上ひさし 1934年、山形県小松町(現川西町)生まれ。「ひょっこりひょうたん島」「吉里吉里人」など多数の台本、戯曲や小説を手がけた。「九条の会」の呼びかけ人になるなど、平和・護憲運動にも熱心。仙台一高同学年だった樋口陽一さん、1年先輩の菅原文太さんと親交を結ぶ。
(4月6日付・朝日新聞宮城版より)

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【九条噺】

 新型コロナウイルス感染症の蔓延の前は、「細菌とウイルスは別物で、ウイルスは細菌よりはるかに小さい」程度のことしか知らなかった。ここにきて、新型コロナウイルスに対抗するためには、ウイルスについて我々も一定の知識を持つ必要があると強く思い始めた▼ノロウイルスやインフルエンザウイルスの名は前から聞いていたが、コロナウイルスなど聞いたこともない。コロナウイルスは、コロナ(光冠)という美しい名前だが、大変な曲者のようだ▼ウイルスは動物の細胞に侵入して増殖し、何かのきっかけで人にも感染するように変異するそうだ。インフルエンザウイルスは鳥、新型コロナウイルスはコウモリとか言われている▼厚労省HPによると、人に感染するコロナウイルスは7種。4種は一般の風邪の原因で多くは軽症だが、残り2種は02年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)や12年以降発生している中東呼吸器症候群(MERS)で、重症化する。7種目が新型コロナウイルス(SARS-CoV2)だ▼ウイルスに抗生物質は効かない。新型コロナウイルスは新型なので、世界の人々に抗体もなく、有効なワクチンも出来ていない。現時点で蔓延は、飛沫感染と接触感染が原因と考えられている▼ウイルスのことを多少知ると「してはいけないこと」「しなければならないこと」が理解できる。我々もしっかり理解して真剣な対応が必要だ。が、生活と営業へのスピーディな補償がなければ真剣な対応も出来なくなる。(南)

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第70回「ランチタイムデモ」実施



 4月とは思えない寒さの4月13日、14年6月23日以来、回を重ねて70回目となった「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が行われ、32人の市民が参加しました。過去最少の人数ではありましたが、この状況の下でも、毎月欠かすことなく続けて70回にもなったことは賞讃に値します。
 今回のデモは新型コロナへの配慮が必須と、①飛沫感染防止のためにシュプレヒコールは行わない「サイレントデモ」とする。②いつもの3列隊列ではなく、今回は2列に減らす。③前者との間隔を普段よりは多めにとるように心がける。という方針を参加者に説明し確認しました。
 出発に際し、藤井幹雄弁護士は「武器よりコロナ対策」というプラカードを掲げ、「国民の暮らしをきちんと確保することこそ一番の安全保障です」と参加者に呼びかけ、デモに出発しました。

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ブックレット紹介『安倍改憲のねらいと危険性 ―改憲発議阻止のために―』



 2020年2月27日に予定した「九条の会」事務局主催学習会は中止させていただきましたが、用意した講演レジメをブックレットとして発行しました。
<内容>
◇安倍改憲のねらいと危険性-自衛隊明記論を中心として-
 山内敏弘(一橋大学名誉教授/九条の会世話人)
◇安倍改憲をめぐる新たな情勢と阻止のたたかい
 渡辺 治(九条の会事務局/一橋大学名誉教授)
◇はじめに
 小森陽一(九条の会事務局長/東京大学名誉教授)
◇あとがき
 小沢隆一(九条の会事務局/東京慈恵会医科大学教授)
◇資料編 2020年2月10日 九条の会声明
     自民党改憲4項目(抜粋)
発行:2020年4月1日 サイズ:A5判68頁
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1冊400円(送料別)/10冊以上320円(2割引)
注文は、氏名、注文数、届け先住所、TEL・FAX番号を
「九条の会」事務局へ
   FAX:03-3221-5076 Eメール:mail@9jounokai.jp

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(2020年04月15日入力)
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