「九条の会・わかやま」 408号を発行(2020年09月11日付)

 408号が9月11日付で発行されました。1面は、安倍首相 辞任表明 持病悪化理由に 7年8カ月を振り返ると、第75回「ランチタイムデモ」実施、自民 感染症対応で「緊急事態条項を」、九条噺、2面は、書籍紹介『ほとんど憲法(上・下)』、「敵基地攻撃能力」で日本を守れると本気で考えているのか?  です。
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[本文から]

安倍首相、辞任表明
持病悪化理由に/7年8カ月を振り返ると


 安倍首相は8月28日、持病の悪化を理由に辞任を表明しました。07年9月の辞任に続き、2度目の途中辞任です。
 12年12月に第2次安倍政権は発足しました。13年7月の参議院選挙で衆参のねじれを解消し、いわゆる「1強体制」を確立すると、暴走ともいうべき動きを始めます。
 13年12月には「特定秘密保護法」成立を強行。14年4月に消費税を8%に(19年10月に10%に)引き上げました。
 「憲法を変えない限り行使できない」との解釈が維持されてきた集団的自衛権を、憲法を改正せず行使できるようにするために、13年8月に「法の番人」といわれる内閣法制局長官に、法制次長が次の長官に就任するという慣例を破り、集団的自衛権行使に積極的な外務省出身者を起用しました。そして14年7月に集団的自衛権行使容認の閣議決定を行い、それに続き15年9月には安全保障関連法(戦争法)の制定を強行しました。
 17年4月に辺野古新基地建設に着工。5月の憲法記念日には「自衛隊を9条に明記し、2020年に施行したい」と、憲法9条に自衛隊を書き込む明文改憲案を打ち出し、任期中の改憲に強い執念を示しましたが、これは国民のたたかいによって実現しませんでした。6月には「共謀罪法」を強行成立させました。
 他方、安倍政権は14年5月に内閣人事局を新設。従来は各省庁が幹部人事案を練ってきた慣例を廃し、内閣人事局を通じて事務次官などの幹部人事に官邸が直接関わることにし、官僚が政治家に従属する構図を固めました。官邸によるトップダウン人事が行われ、官僚は官邸の顔色をうかがうようになりました。
 こうした中、17年2月、「森友・加計学園問題」が発覚。19年11月の「桜を見る会」など一連の問題は、安倍首相や妻・昭恵氏に近い人物に対する「身びいき」や、それを取り繕わなければという周囲の「忖度」が政権にはびこっているという「国政私物化」や、行政文書の改ざん・隠ぺいについても世論の厳しい批判にさらされました。20年1月には黒川東京検事長の定年延長問題も起りました。
 安倍首相の後任に菅官房長官が取沙汰されています。結果は分かりませんが、9月8日の所見発表会で菅氏は、ほとんどの課題で「安倍政権の継承」を強調しました。それならできる政権は安倍政権の続編で、「第3次安倍政権」とも言えます。今、国民が求めているのは、自民党政治を根本から変える新しい国民のための政治です。安倍亜流政治を許さない活動が必要です。

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第75回「ランチタイムデモ」実施



 あいにくの雨天となった9月9日、第75回「ランチタイムデモ」(「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」呼びかけ)が行われ、40人の市民が参加しました。
 憲法9条を中心に改憲を進めようとした安倍首相は、8月28日に辞任を表明しました。しかし、後任と言われる候補者も改憲を含む安倍路線を継承すると述べています。
 デモの出発に先立ち和歌山城西の丸広場で藤井幹雄弁護士は、「安倍首相は退任するが、新しい総裁も旧路線を継承すると思われる。私たちは、引き続き、子どもたちを戦場に送らないため、行進を続けよう」と呼びかけました。
 参加者は京橋プロムナードまで「憲法9条を守ろう」と訴えて行進しました。



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自民、感染症対応で「緊急事態条項を」

 自民党の「新たな国家ビジョンを考える議員連盟」は27日、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、憲法を改正して緊急事態条項を設けるべきとする提言をまとめました。
 現行憲法は12条で「国民は人権を濫用してはならず、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と規定しています。コロナ禍についても、公衆衛生の確保のために国民の自由を規制する立法は可能です。足りないのは、適切に執行する意思と能力だけです。

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【九条噺】

 過日、新型コロナ感染症拡大の中、山中伸弥京大教授の免疫がテーマのNHK番組を見た。ワクチン理解のために紹介したい▼感染症に対抗する鍵は免疫で、免疫とは外部から人体に侵入する抗原(ウイルスなど)に対して免疫細胞などが「自分」と「自分でないもの」を識別して人体を守る仕組みだという▼ウイルスが侵入(感染)した細胞は警報物質(インターフェロン)を放出し、警報物質を感知した食細胞(好中球)という免疫細胞が血管から出て、感染が起きている現場に急行しウイルスを食べる。これが誰もがもっている自然免疫という▼だが、新型コロナウイルスのある遺伝子が働くと放出される警報物質は10分の1になり、警報が伝わらず食細胞が出動せず重症化する。自然免疫で抑えられないと、伝令となった食細胞から新型コロナの断片を受け取った免疫細胞は新型コロナだけを狙い撃ちするキラーT細胞となり、感染細胞は攻撃されウイルスもろともバラバラになる。さらに抗原を認識できるB細胞が抗体を放出する。抗体がウイルスに当たるとウイルスは細胞に感染できなくなる▼人体が回復してもT細胞やB細胞は体内に待機し続け、ウイルスの再攻撃に備える。これを獲得免疫という▼新型コロナワクチンはRNAワクチン、DNAワクチンや不活化ワクチンなどがあるそうだが、いずれも人体に接種して抗体を作るものだ。我々も免疫の仕組みを理解して、睡眠・食事・運動などで免疫力を下げない努力が必要だ。(南)

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書籍紹介『ほとんど憲法(上・下)』

 

   憲法はいつ、どのように使えばいい? 日々のささいな揉め事も、憲法で解決できる? 小学生から楽しめる、憲法の使い方を学べる入門書。
 毎日小学生新聞の大人気連載の書籍化。子どもたちが日々感じているモヤモヤやちょっとした思いつきをお題に、憲法学者・木村草太氏が、日常生活と憲法のむすびつき、知っておきたいキーワードについて解説します。朝倉世界一氏の漫画をはさんで展開する全105項目のエピソードには、同じクラスにいそうな友だちがたくさん登場し、読者自身の身近な話題と結びつけて読み進めることができます。
【内容】(上巻)第1章~第3章、(下巻)第4章~第10章
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発行:(株)河出書房新社
   東京都渋谷区千駄ヶ谷2-32-2
    TEL:03-3478-3251 メール:info@kawade.co.jp
著者:木村 草太、朝倉 世界一
判型:A5判変形、(上)200ページ (下)208ページ
出版:2020年2月27日
定価:1500円+税(上巻、下巻とも)

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「敵基地攻撃能力」で日本を守れると本気で考えているのか?

 「敵基地攻撃能力」とは、弾道ミサイルなどによる「敵」の攻撃に対し、「敵」の領域内にある発射基地をたたいて攻撃を防ぐ能力で、具体的には、下の「敵基地攻撃のイメージ」図のように、目標に正確に誘導できる巡航ミサイルや精密誘導弾、航続距離が長く、敵レーダーに捕捉されずに接近できるステルス戦闘機、電子攻撃機、偵察衛星などが想定されます。



 政府は冷戦期から「座して自滅を待つというのが憲法の趣旨だとは考えられない」と、他に手段がない場合は敵基地攻撃が許されるとの立場を示していますが、憲法9条から導かれる「専守防衛」を逸脱しかねないとの懸念も持ち、「他国に攻撃的な脅威を与える兵器を持つことは憲法の趣旨ではない」としてきました。
 「専守防衛」とは相手から武力攻撃を受けた時、初めて防衛力を行使するもので、保有する防衛力も必要最低限度とされます。攻撃も受けない内から「反撃」するのは、明らかに先制攻撃で、憲法9条に違反します。一部の人が言う「他国に人を出すのはダメだが、兵器なら良い」というような空論が通る訳はありません。
 「敵基地攻撃能力」は、自民党の提言では具体的な国名はあげていませんが、その対象に中国や北朝鮮を想定しているのは明らかでしょう。確かに、中国や北朝鮮のミサイル開発を含む軍備の拡張は、日本の安全にとって「脅威」かもしれません。だからといって、中国や北朝鮮の領域内にある発射基地を攻撃する「能力」を持つことで、その「脅威」を除去することができるのでしょうか。
 中国や北朝鮮の領域内にある基地を攻撃して、発射前のミサイルの破壊に成功したら(成功しなくても)、その後の事態がどうなるかは明らかです。いくら日本が「他に手段がなかったから行った。自衛の範囲だ」と主張してみても、相手は、日本が先制攻撃を行ったので、国連憲章第51条に基づき自衛権を行使すると主張し、日本に「反撃」してくるのは火を見るより明らかです。日本が「敵基地攻撃」を行ったら、「敵」に日本攻撃の口実を与えることになり、「脅威」を除去するどころか、「脅威」を一層拡大してしまいます。
 安倍首相は4日、「敵基地攻撃能力」保有について年内に結論を得ると記した談話を出す方針を固めたとのことです。その際「敵基地攻撃能力」という表現の言い換えも検討しており、この「能力」に如何に大きな問題があるかを示しています。
 日本の防衛はあくまで「専守防衛」の範囲内であり、それより、憲法9条に基づき、外交や政治によって「脅威」にならないようにするのが、日本の進むべき道であるのは明らかです。

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安倍政権の新型コロナ対策はどうだったのか

 安倍政権は、2月27日に事前の十分な検討もなく出した学校の一律休校要請で全国に混乱を広げました。4月7日、7都府県へ(16日には全国へ)の「緊急事態宣言」で休業要請を出しましたが、「自粛と一体の補償」という国民の要求には応えませんでした。国民への支援策は後手後手の対応で、1人当り10万円の給付金や雇用調整助成金の特例措置の拡充、家賃支援給付金などの支援策は野党の提案・追及によって実現したものです。
 PCR検査は一向に進めようとせず、他国に比べてあまりの少なさに国民の批判と不信の声が渦巻きました。他方、思いつきの「アベノマスク」全戸配布や、音楽に合わせ犬と遊ぶ動画投稿で国民をあきれさせました。
 7月以降、感染者が再び増える中、国は重症者が少ないと、医療体制は「逼迫していない」と言い続け、医療従事者が非常に困っている問題にも対応しませんでした。その上で経済活性化策だとして、国民の反対の声が大きい「GoToトラベル」を7月22日に強行開始しました。
 このように、安倍政権の新型コロナ対策は行き当りばったりで、全く基本戦略がないものに終始したのが実態でした。

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(2020年09月11日入力)
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