「九条の会・わかやま」 413発行(2020年11月17日付)

 413号が11月17日付で発行されました。1面は、第77回「ランチタイムデモ」実施、新型コロナから人間を守るのは安全保障の核心的問題(君島東彦(きみじま・あきひこ)氏 ①)、世論調査結果、九条噺、2面は、言葉「学問の自由」、書籍紹介『安倍政権の終焉と新自由主義政治、改憲のゆくえ』  です。
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[本文から]

第77回「ランチタイムデモ」実施



 秋も深まった晴天の11月11日、第77回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」)が行われ、50名の市民が参加しました。
 今回は戸村祥子弁護士がコーラーを務められました。参加者は和歌山城西の丸広場から京橋プロムナードまで、女性の戸村祥子弁護士のさわやかなコールに合わせて、「戦争する国ぜったい反対」「9条守れ」などを訴えて行進しました。



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新型コロナから人間を守るのは安全保障の核心的問題

 11月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第17回憲法フェスタ」が開催され、立命館大学教授・君島東彦さんが「コロナと憲法」「日本学術会議問題とは何か~<戦後>が終り<戦前>となったのか~」の二本立てで講演をされました。講演要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

君島東彦(きみじま・あきひこ)氏 ①



 新型コロナ問題の核心も9条だ。安全保障は一言で言うと軍事ではない。平和とか安全保障問題は軍事では解決出来ないということだ。新型コロナ感染症は一番重要な平和・安全保障の問題だ。
 安全保障は、多くの人は軍事問題だと思っているが、それは違う。日本に国家安全保障会議や国家安全保障戦略があり、これは正に軍事問題だが、安全保障は「security」という英語の翻訳で、それは「不安、心配がないこと」だ。これが根源的な意味だ。「社会保障(social security)」という言葉が一番安全保障の意味を表している。「security」が軍事的意味を持つようになったのは第二次大戦後で、それ以前は国防(defense)と言っていた。90年の冷戦終結後の頃から、安全保障は軍事だけではないという潮流が出てきて、軍事でないものも安全保障問題だと言われるようになった。これは原点に戻ったというべきで、「先祖返り」だと思っている。
 不安や心配の多くは軍事ではない。「安全保障とは何か」とは「あなたの死ぬ原因は何ですか」という問題だ。おそらく多くの日本人は自分が死ぬ原因は「癌」「心臓病」「脳の病気」「交通事故」だと思っている。北朝鮮や中国のミサイルで死ぬと考える人はまずいない。自分が「何で死ぬか」に備えることが安全保障だ。だから、社会保障費と軍事費の予算の比率はこれでいいのかという問題になる。94年に国連開発計画(UNDP)という機関が「人間の安全保障(human security)」という考え方を提案した。この考え方は世界中で支持され、「経済・雇用の安全(職があること)」「食糧の安全」「健康の安全」「環境の安全」「個人の身体の安全」「地域社会の安全」「政治的自由」の7つをあげ、これらのことが安全保障だと言った。これは安全保障の原点に返ることだ。日本政府は「人間の安全保障」を推進した。日本のイニシアティブにより世界の有識者で「人間の安全保障委員会」が設立され、03年に「安全保障の今日的課題」という報告書を出した。これには軍事は一切なく、「難民」「貧困」「感染症」をどうするなどが報告されている。
 人間の歴史には常に新しい感染症が広がっている。エイズ、エボラ出血熱、SARS、MERSや、新型コロナウイルス感染症というように、10年に一度くらいは必ず新しい感染症の世界的なパンデミックが起きている。そこでUNDPは軍事費を減らして、社会保障費に回すべきだと言った。「核心的安全保障問題としての感染症」と言っているが、これにどう取り組むかが安全保障問題だ。
 感染症のリスクから国民を守るのは国家のミニマムの責任で、私たちにはどう責任を果させるかが問われる。憲法は国家権力の暴走を食い止めるために、国家権力に一定の枠をはめるものだが、憲法の核心には命を守るという観点もある。憲法13条は、生命権で、いのちを保障している。25条は生存権で、人々が生きていく権利を保障している。国家は国民を餓死させてはいけない。それを国民の側から国家に要求しなければならない。
 今、コロナ禍を奇貨として火事場泥棒的な改憲論が出ているが、これは完全に議論のすり替えだ。自民党改憲4項目に「憲法に緊急事態条項を入れる」がある。コロナ禍で緊急事態条項を入れないと国家は生命を守れないと言うが、これは全く見当違いで、緊急事態条項を入れることと国家がコロナ対策を行うことは別問題だ。コロナ対策は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」という法律に基づいて政府や都道府県知事が権限を持って行う法律の問題であり、憲法とは基本的に関係がない。「緊急事態条項」は人を騙す話で、「措置法」を国会で議論すればいいだけの話だ。「緊急事態条項」とは、国会を飛ばして内閣に権限を集中するための条項だ。コロナ対策で国会の審議を飛ばすような条項はいらない。
 英国の政治学者メアリー・カルドーは「人間の安全保障によって軍は変わる」と言っている。軍隊は命を奪う組織であるとともに人命を救う組織でもある。自衛隊の活動にも災害救援が入っている。軍隊の命を奪う側面を縮小し、命を救う側面を拡大していくと、軍隊の暴力性がなくなり、警察に近づき、さらにNGOに近づいていく。自衛隊を考える時、災害救援の側面を拡大し、攻撃の側面を縮小していく改革をすると、9条適合的になっていく。
 憲法13条、25条からは、生活保護や失業保険も出てくる。コロナ禍のために営業停止や自粛を求めると、生計が成り立たない。そこで、ベーシックインカム(一律給付)という考え方がこれから議論になる。竹中平蔵氏のように、社会保障制度を全部壊してベーシックインカムに一本化するということになると、それは危ない。コロナ禍を生きていくために一律給付という考え方はあり得るが、今後コロナ感染症がどうなるかの中で注意が必要だ。
 今回の感染症はどこで発生し、どう広まったのか。野生生物と人間の接触場面が増え、野生生物由来のウイルスが人間にうつってきたからだ。人間が奥深く入ることで出会う機会が増え、人間に広まった。これは、開発や自然破壊の結果だ。国連環境計画(UNEP)の今年7月の報告書では、「新型コロナは動物から来たウイルスで、人間と動物との環境全体での関係が崩れ、人間が環境を破壊した結果だ。人間と動物との環境の関係の作り直し」ということを言っている。感染症は自然破壊や気侯変動など、環境が壊れて生態系が壊れるのがウイルスが来る原因だから、そこを保全する必要がある。つまり、「環境的平和」を実現していく必要がある。コロナの対策は3蜜防止・マスク、医療従事者の努力、ワクチン開発もあるが、より根源的な予防は「環境的平和」だという観点が必要だ。(次号につづく)

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世論調査結果



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【九条噺】

 14年12月に打ち上げられ、小惑星「リュウグウ」に19年2月と7月にタッチダウンに成功した「はやぶさ2」が、今年12月6日に地球に帰還する▼10年6月の「はやぶさ1」の帰還の時は、試料が入ったカプセルをオーストラリアの砂漠に届けたが、本体は大気圏に突入し燃え尽きた。この情景をインターネット中継したのが和歌山大学の尾久土(おきゅうど)正己教授らの和大撮影チームだったことを思い出す▼「はやぶさ2」は、「1」のように試料カプセルをオーストラリアの砂漠に向けて分離するが、本体はカプセル分離後に軌道修正を行い地球から離脱し、「1998KY26」という直径約30mの小惑星の探査に向い、31年7月に到着予定とのこと。夢の広がる話だ▼ところで、小惑星「ベンヌ」に向っていたNASAの「オシリス・レックス」も、10月20日にサンプル採取に成功したとのことだ▼「はやぶさ2」のライバルとも言うべき「オシレス・レックス」だが、昨年4月、NASAのプロジェクトチームが来日し、「ベンヌ」も「リュウグウ」と同じく細かい岩石が多く、直径6mの狭い範囲への着陸を成功させたJAXAの「2」チームから精密な誘導方法などについて助言を受け、互いに採取したサンプルを交換する合意をしたとのことだ▼両チームのサンプルリターンの成功を期待したい。このような科学の日米共同作戦は大賛成だ。日米関係は、米軍と自衛隊の軍事の共同作戦ではなく、「JAXA-NASA」のようにいきたいものだ。(南)

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言葉「学問の自由」

 憲法23条「学問の自由」とは。学問は真理の研究に関わります。既存の価値や考え方を疑うところにその本質があるので、その批判的性格のために、時の権力による干渉を受けやすい面を持ちます。特に日本では、明治憲法下で滝川事件や天皇機関説事件など学問の自由が国家権力によって侵害された歴史があるため、精神的自由権の重要なひとつとして位置づけられています。
 また、伝統的に大学が学問の中心であったため、大学への権力の干渉を排除する「大学の自治」が制度として保障されています。特に、治安維持に名を借りて警察権力が大学構内で警備公安活動を行なうことは、自由な学問研究を萎縮させる効果を持つために許されません。
 なお、今日、原子力や遺伝子技術、医療技術など先端科学技術の発展にはめざましいものがあります。その危険性から規制も必要となりますが、13条が保障する「人間の尊厳」が抽象的な制約根拠としてひとり歩きすることは避けなければなりません。(法学館憲法研究所HPより)
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 憲法23条がある以上、日本学術会議の会員任命拒否で菅首相が言うように、15条によって学術会議の会員は公務員だから言うことを聞けということは通用しません。「学問の自由」とは、専門領域の自律性を尊重し、それに対して、首相などの権力者の介入は絶対に許されないということです。

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書籍紹介『安倍政権の終焉と新自由主義政治、改憲のゆくえ』



 ポスト安倍をめぐるメディアの大騒ぎを経て、9月16日に菅内閣が誕生した。安倍政権は倒れたが、それで、安倍が追求した新自由主義政治も憲法改悪も終わったわけでは全くなく、菅政権の下で「安倍なき安倍政治」が続けられる。本書で、「安倍政治」というのは、安倍政権が追求した、新自由主義政治、アメリカの戦争に加担する戦争体制づくり、新自由主義政治を強行する反民主主義的強権体制をめざす政治のことを指している。「安倍政治」をなんとかしたい、改憲に今度こそ終止符を打ちたい、そのために何かしたいと頑張ってきた、たくさんのみなさんに、ぜひお読みいただきたい。
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著者:渡辺治(一橋大学名誉教授、九条の会事務局)
四六判、168ページ  定価:1,200円+税
初版年月日:2020年10月31日
(株)旬報社  電話:03-5579-8973
        FAX :03-5579-8975

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(2020年11月17日入力)
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