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「平和といのちと人権を!11・3大行動」開催
日本国憲法が公布された11月3日、全国各地で集会・デモ・宣伝行動など様々な取り組みが行われました。国会正門前では、総がかり行動実行委員会主催で「平和といのちと人権を!11・3大行動」が開催され、3000人が参加しました。
古今亭菊千代さんの進行で行われ、冒頭の主催者挨拶で、共同代表の高田健氏は、日本学術会議への政治介入で菅政権の本質が早くも現れたと指摘し、「市民と野党の共闘で菅政権を打倒し、政権交代を実現しよう」と呼びかけました。駆けつけた立憲民主党、日本共産党、社民党、沖縄の風の議員が挨拶をしました。
その後、「コロナから見えてきた社会矛盾から」とのテーマで、格差問題で瀬戸大作氏、差別問題で朝鮮学校の学生、憲法問題で清水雅彦氏、教育問題で佐野通夫氏、医療問題で伊藤真美氏、女性問題で北原みのり氏が発言しました。清水氏は「菅政権は自助を強調し、生存権を無視している」、伊藤氏は「自助・自立は人の手を借りて成り立つものであり、まずは公助が大事です」、北原氏は「女性が死にたくなる社会に未来はありません。性差別に本気で向き合いましょう」とスピーチしました。(憲法しんぶん速報版1114号より)
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憲法9条「日本は戦争をしない」が学者の世界でも基本原則
11月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第17回憲法フェスタ」が開催され、立命館大学教授・君島東彦さんが「コロナと憲法」「日本学術会議問題とは何か~<戦後>が終り<戦前>となったのか~」の二本立てで講演をされました。講演要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。
君島東彦(きみじま・あきひこ)氏 ②
日本学術会議問題はデマとすり替えが多く、本質を見極めることが大事だ。日本学術会議は210名の会員で組織され、3年毎に105人ずつ選ばれる。日本学術会議法17条は「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」とあり、推薦の基準はこれしかない。これ以外のものに従うのは違法行為だ。7条は「日本学術会議は210人の会員をもってこれを組織する。会員は17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とある。内閣総理大臣は「推薦に基づいて任命する」が核心部分だ。推薦リストは8月末に送られており、10月1日、105名の推薦の中から6名が任命されなかった。6名は何故任命されなかったのか。菅首相は絶対に言わないが、ネトウヨは全部言っている。
日本の科学者の戦争協力を反省して戦後日本学術会議を作ったというのは、話が単純化されていて不正確だ。40年代の日本は総力戦体制だった。どこの国も総力戦体制で、総力戦では戦争から逃れられる人はおらず、科学者を含む全ての人を動員する。科学者も軍事研究から逃れることは出来なかった。初歩的な段階で終ったが、理化学研究所の仁科研究室は陸軍と、京都大学の荒勝文策研究室は海軍と原爆開発をしていた。40年には「科学動員計画要綱」、41年には「科学技術体制確立要綱」が決定された。総力戦で科学者は勝利に貢献するように組み込まれていく。この科学動員は100%悪かったかというと、そうでもない。良い面は長老支配を打破し、一番出来る科学者が抜擢された。戦前の日本の学界はボス支配だったが、戦時動員で出来る若手は登用され、近代的な合理化の側面はあり、理系の研究を促進した側面は否定出来ない。原爆は非人道性で肯定出来ないが、非人道性を別にすると、科学技術の到達点である。人類を滅亡させる破壊力があったところに根本的なジレンマがあるが、西洋文明の到達点というところは見る必要がある。文明の進歩であり、同時に人類に対する破壊力だから、倫理的な枠が必要で、これからの学問は倫理の枠を設定しない訳にはいかないということを示唆している。
戦前にも学術会議のようなものはあり、封建的な長老支配で、戦後否定される。戦後は若手の一番出来る人たちが中心となって学術会議に向っていく。学術会議は占領政策の日本の民主化の一環だ。占領政策の初期には財閥解体、農地改革、労働組合運動の解放などの良い側面があり、学術会議もそのひとつだ。
48年に学術会議法が出来た。最初は立候補による選挙制で、何十万という学者が投票した。今、学術会議は1部が人文・社会科学、2部が生命科学、3部が理学・工学だが、長い間7部制だった。1部が文学、2部が法学・政治学、3部が経済学、4部が理学、5部が工学、6部が農学、7部が医学で、これは東京大学の学部に合わせたものだ。東大、京大の比率が高くて多様性がないというのは、昔はそうだったかもしれないが、今は随分多様性が実現している。
選挙制は民主主義だが弊害もあり、権力闘争になることもある。途中から推薦制になり、最初は学会の推薦だったが、学会推薦だと学会の利益の奪い合いになるので、今は学会代表ではなく、会員が推薦する。これは長い間の経験から改善してきたことだ。今の学術会議は昔から見れば大きく改善した訳で、菅首相が言っていることは既にやっていることだ。多様性とか若手とか言うのなら、6人を外すことは全く矛盾する。
学術会議が反政府的・反体制的だとネトウヨは思っているのだろうが、そんなことはない。学術会議は政府と違うことを言ってきた訳ではない。戦後の日本は日本国憲法が社会の原理だから、学問の自由が入っているし、思想・良心の自由、言論の自由に基づく学術研究になる。今回の事件で、誰でも滝川事件や天皇機関説事件を思い出す。この事件は将来「学術会議6教授任命拒否事件」と名付けられ、教科書にも載っていると思う。戦時体制を作る中では、思想統制をし、学者の思想に文句をつける。つまり、リベラルな思想は許さない。滝川事件や天皇機関説事件は、基本的に国体護持を徹底させる極めてナショナリスティックな右翼思想に思想統一をする中で出てくる訳で、リベラルな思想は許さないことを明確にした。滝川事件が33年、天皇機関説事件が35年で、美濃部達吉の学説が帝国議会で攻撃され、文部省は全国の憲法学者が天皇機関説の授業をしていないかの思想調査をしている。そして天皇機関説は学説として否定され、37年に日中戦争が始まった。戦時体制を作っていく時には思想統制をし、研究者・学者の思想を問題にする。戦争準備に、ある思想は邪魔になるというのが垣間見える。だから、私が「<戦前>になったのか」と演題を付けたのは、日本の戦前という意味ではなく、次の戦争が近付いているのではないかという意味だ。「戦時体制を作りたいのか」「戦争準備をするのか」と菅首相に言いたい。
戦後の日本では、憲法9条の「日本は戦争をしない」が学者の世界でも基本原則となる。学術会議は50年と67年に「戦争目的の研究はしない」という声明を出し、17年3月に「軍事的安全保障研究に関する声明」を出した。安倍・菅政権は、この声明が気に食わない。この声明は、「軍事研究は学問の自由を侵すから注意しよう」というもので、9条を引用している訳ではなく、平和主義の話ではない。そこに踏み込むと論争になるからだ。政府の憲法解釈は、自衛権行使とか攻撃された時の武力行使は認めるというものだから、そこに踏み込むと非常に複雑なことになるので、軍事研究は学者の自主性を侵し政府が介入してくるし、秘密になるので学者の手から離れ、コントロール出来ない。それは学問の自由への脅威だから注意が必要だ。各大学はそれらの研究の適切性を審査する基準なども設定することが求められるとしている。これは抑止力にはなる訳で、理学・工学の研究は民生技術でも軍事に転用可能なものがたくさんある。今、理系の研究者は、喉から手が出るほど研究費がほしい。防衛装備庁がスポンサーの研究費でも貰いたくなる。学術会議はそれを放置出来ない認識があったので、一定のガイドラインがスタートした。これが、安倍政権からすると困るということで、攻撃理由になった。(次号につづく)
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【九条噺】
今回は「ワクチン」だ。新型コロナのワクチンは全世界で緊急に開発が行われている。トランプ大統領の9月上旬に開発出来るという大嘘に、世界の開発企業9社は拙速な承認申請はしないと声明を出した。我々も冷静に待つ必要がある▼人体に外部から侵入する抗原(ウイルス・細菌)に対して免疫細胞などが抗体を作り人体を守る仕組みが免疫だ。ワクチンは抗原の役割をするが、病原性を弱めたり、無くしたりしている。ワクチンは、「生ワクチン」「不活化ワクチン」や、最近は「mRNAワクチン」などがあるそうだ▼「生ワクチン」は、生きた抗原の病原性を弱めたもので、接種するとその病気にかかったのとほぼ同じ免疫力がつく。病原性を弱めたウイルスや細菌が体内で徐々に増えるので、接種後に自然にかかったのと同じような軽い症状が出ることがある▼「不活化ワクチン」は、病原性を無くしたウイルスや細菌の一部を使うが、「生ワクチン」に比べて免疫力が付き難く、何回かに分けて接種する▼「mRNAワクチン」は、ファイザーやモデルナが開発に成功したと言われるのがこれだ。ウイルスの遺伝情報を人に投与し、体内でウイルスのタンパク質を作らせ、それによって免疫を発動させるものだとか▼ワクチンは開発国だけでなく、世界で広く使われなければならない。ここでも、「自国主義」を超えた国際協力・協調が欠かせない。ワクチンを必要なところから公平・公正に配る優先順位の基準も必要だ。(南)
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学術会議の任命拒否撤回!
19の日行動 「改憲発議反対」 署名79万超提出
菅首相による日本学術会議への人事介入に抗議し、改憲に反対する『いのちをまもれ!学術会議の任命拒否撤回!敵基地攻撃能力保有反対!改憲反対!11・19議員会館前行動』が11月19日夕、衆院議員会館前で実施され、1000名が参加しました。
主催者を代表し、総がかり行動実行委員会共同代表の藤本泰成さんがあいさつ。日本学術会議への人事介入は「民主主義への公然とした攻撃です」と強調。怒りの声を各地であげながら「総選挙を市民と野党の共闘で勝利しよう」と呼びかけました。
立憲民主党の石垣のりこ参院議員、日本共産党の藤野保史衆院議員、社民党の福島みずほ参院議員、参院会派「沖縄の風」の伊波洋一参院議員があいさつしました。
その場で、各議員に「改憲発議に反対する全国緊急署名」79万3571人分を手渡し、「署名を力に、改憲を許さない声をさらに広げていこう」とアピールしました。なお、全国緊急署名は6月4日提出分と合わせて105万4925人分となりました。(憲法しんぶん速報版1119号より)
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書籍紹介『檻を壊すライオン』
暴走の事例とともに権力の制御方法を考える。全国46都道府県で計500回以上開催された憲法講座のなかの「憲法からみた最新の時事問題」が1冊にまとまりました。いまの政治のなにが駄目なのか?これを読めばスッキリわかります。
※日本国憲法の統治システムの解説とともに、憲法に違反している現政権の事例を約50紹介します。
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著者:楾 大樹(はんどう・たいき 弁護士)
判型:四六判、264ページ
定価:1,600円+税
初版年月日:2020年10月26日
かもがわ出版 電話:075-432-2868
FAX:075-432-2869
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