「九条の会・わかやま」 416発行(2021年01月01日付)

 416号が2021年1月1日付で発行されました。1面は、安倍改憲を振り返る(新聞社説要旨:毎日、東京、朝日)、年賀状、改憲発議反対! 菅政治を転換させよう 改憲退治に思う 「九条の会・わかやま」呼びかけ人・江川 治邦、九条噺、2面は、太平洋戦争勃発の日に街宣活動 みなべ「九条の会」、問われて答えられないなら首相失格 小林節・慶応大学名誉教授  です。
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[本文から]

安倍改憲を振り返る(新聞社説要旨)

毎日新聞「憲法改正の議論『安倍流』の見直しが先だ」

 菅首相の憲法観は見えない。ただ、安倍前政権の継承を掲げ、「憲法審査会で憲法改正の議論を重ね、国民の理解を深めていくことが国会議員の責任ではないか」と、議論活発化への期待感を示した。
 憲法の改正は、一般の法改正とは異なる。最終的な判断は国民投票に委ねられている。これを意識し、安倍政権以前の憲法論議は与野党合意を重視して進められてきた。
 ところが、前首相は「改憲ありき」で、野党との対話や合意形成を軽視した。16年の参院選で「改憲勢力」が発議に必要な3分の2を超える議席を参院でも占めるようになり、その姿勢は露骨になった。
 翌年の憲法記念日には、自衛隊を明記する案を唐突に打ち出した。これを基に、自民党に改憲4項目をまとめさせ、昨年の参院選では、「憲法を議論する政党を選ぶのか、しない政党を選ぶのか」と野党を挑発した。前政権は、歴代政権が認めてこなかった集団的自衛権の行使を、閣議決定により憲法解釈を変更するという強引な手法で容認した。憲法を粗雑に扱い、敵と味方を峻別する「安倍流」が、超党派で行うべき憲法論議の停滞を招いたといえる。
 乱暴な進め方で憲法論議の土台を壊した前政権の轍を踏んではならない。まずは、冷静な議論を重ねて幅広い合意を目指すという憲法論議の原点に立ち返るべきだ。

東京新聞「改憲論議 立憲主義の原点に戻れ」

 ルールを壊してから進む、それが安倍政権の政治手法ではなかったか。第2次政権発足から間もなく主張したのは、「96条改憲論」だった。改憲のルールそのものに手をつけようとしたのだ。
 そもそも「憲法とは何か」という教科書的な定義、「憲法とは権力をしばるもの」という素朴で分かりやすい理解に対し、「かつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考えだ」と国会で反論した。人は生まれながらに持つ権利や自由を国家権力はこれを奪ったりするから、憲法を定め、権力をしばっている。その立憲主義への理解を首相が欠いていることも国会で大問題になった。
 それが先鋭化したのが集団的自衛権の行使容認の閣議決定のときだった。これまで歴代内閣が憲法上認められないとしたのに一内閣の一存で180度転換した。反対する内閣法制局長官の首をすげかえて。大多数の憲法学者が「違憲・違憲の疑い」と反応した。「法学的なクーデターだ」とする声も上がった。
 9条に自衛隊を明記する案、緊急事態条項の創設など4項目も掲げたが、参院選での合区解消や教育無償化など、どれも一般法で対応できる項目であろう。
 9条改憲も自衛隊を合憲化するためというが、現在、違憲・合憲の深刻な対立があるわけでもない。緊急事態条項も新型コロナという国難に直面し、首相に権限を集中しても何の効力もない現実をあらわにした。
 つまりは国民のためより、個人的な悲願が源泉ではないか。新政権は立憲主義の原点に戻り、「改憲のための改憲論」から脱しなければならない。

朝日新聞「安倍改憲 首相が自ら招いた頓挫」

 念願の改憲を果たせなかった理由は安倍氏自身にある。
 まず、米占領下で制定された現憲法を何でもいいから変えたいという「改憲のための改憲」だったこと、そして現にある条文や議論の蓄積を平然と無視して、不信を深めたことだ。
 安倍氏は07年の年頭記者会見で「憲法改正を私の内閣でめざしていきたい」と表明した。当時は国民投票法の制定に向け、与野党協議が進んでいた。だが安倍氏が改憲を選挙の争点とする考えを示したことを機に決裂。議論を重ねるなかで、改正の当否も含めて憲法問題を考えていこうという機運は失われた。
 12年に首相に返り咲き打ち出したのが、96条の改正だ。96条は、衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成を過半数に引き下げようというものだ。改憲を否定しない人たちからも「裏口入学だ」との批判が噴出。安倍氏も引っ込めざるを得なくなった。
 17年の憲法記念日に掲げたのが「9条に自衛隊を明記する」という案だった。
 野党に必要以上の敵対姿勢をとる安倍氏の政治スタイルは、丁寧な議論を通じてという憲法改正のルールにはそぐわなかった。
 何よりも、憲法のどこに問題があり、どう正せばいいのかという、根源的な議論を欠いていた。今後の憲法論議にあたっては、自民党がまず態度を改め、いびつな「安倍改憲」の手法をリセットすることが不可欠だ。

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改憲発議反対! 菅政治を転換させよう
改憲退治に思う
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・江川 治邦




 コロナ禍で「自粛」が飛び交う昨今である。自粛とは「自ら慎む行為」と心得るが、政治家が責任を負わないで国民に責任をなすり付けるご都合主義の用語と見る。公助を避けた自助への押し付けでもある。第二次大戦末期に「一億総玉砕」を強要し、敗戦直後に「一億総懺悔」に置き換えた戦争指導者は、その自己責任を国民にすり替えた。この言葉のあやの中で、広島・長崎に原爆が投下され、多くの無辜(むこ)の国民を戦死させ、人生を破滅に追いやった。国民に義務を押し付けるこの無責任な自粛政治が、今もコロナ禍を拡大させ、解釈改憲を生み育て、忖度政治を助長させている。政治とは、政治家が結果責任を負う行為でもある。責任を負いたくない政治は「祭り事」に値しないし、国民の存在をないがしろにする。そんな政治家は今すぐ退場願いたい。現政権のコロナ対処を見る限り、彼らには生命・財産を預託するに値しない。ましてや人為的に死に追いやる「戦争のできる9条改憲政治」は論外であり阻止するしかない。
 今後の大国間戦争は原水爆による一瞬のボタン戦争となろう。そこでは勝者もなく人類の破滅だけが待っている。そんな戦争に参戦でき、軍事力を投入可能な憲法改正は馬鹿げている。貿易収支に帳尻を合わす外圧外交に便乗して、軍事予算を拡大して戦争の出来る国に舵を切りたい政治家もいる。しかし第二次大戦の戦禍を体験した私は、戦力を持たず、平和共存に向けた国際力(外交)と民際力(市民間親善交流)で世界に名誉ある地位を得ようとする現平和憲法を擁護維持することこそが、国民が選ぶべき現実的な選択と思う。破滅と裏腹な戦力で常に不安な人生を送るのか、それとも多様な世界の人々と安心して豊かに共存する人生を送るのか、今、私達に問われている。劇場型政治に無自覚であっては、知らず知らずの内に「いつか来た道」に揺り戻されるだろう。
(愚作川柳を献上)
 コロナ禍でコロコロ変わるゴーツー政治
 祭り事ゴーツー・トラブルに逃げ迷う
 LeaderがReader演ずる菅総理

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【九条噺】

 年末と言えば大掃除だ。昔は「煤払い」「煤掃き」だった。昨今はハタキや箒でなく電気掃除機や化学雑巾を使うが、それはさておき、昨今の世上にただよう嫌な雰囲気も大掃除したいところだ▼その原因を菅政権発足以後で選べば、1に学術会議会員任命拒否、2に新型コロナ対応無策とGoTo事業強行が上げられよう。どちらも世論の猛反発を受けた。学術会議問題は前回書いたので新型コロナ問題を中心にする▼毎日新聞が12月の世論調査結果を「内閣支持40%、 不支持49%、初の逆転」「コロナ対策評価せず62%」「GoTo事業中止を67%」と報じた(13日付)▼新型コロナ対策については前回11月と比べ、「評価する」34%→14%、「評価しない」27%→62%で、新型コロナ対策の評価が低下したことが支持率の大幅減につながったと分析。また、新型コロナに対する医療・検査体制に「不安を感じる」は69%だったが、「第3波」の重症患者急増と医療逼迫に危機感を持ったと見ている。GoToトラベル事業は「中止すべきだ」67%で、「継続すべきだ」19%を大きく上回った▼先立って政府の新型コロナ対策分科会が、感染急増地域でのGoToトラベル事業一時停止を提言した。菅首相は11日、全国での一時停止を否定した▼しかし分科会の強い提言や毎日新聞世論調査がこたえたのか、政府の対策本部会合で12月28日から1月11日まで全国一斉の一時停止を決めた。世論は政治を変えることが出来る。大掃除を進めたい。(柏)

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太平洋戦争勃発の日に街宣活動
みなべ「九条の会」




 みなべ「九条の会」は、12月8日、今年も新聞折込と町内街宣活動を実施しました。
 「12月8日は79年前、日本がハワイの真珠湾を攻撃し、泥沼の戦争へ突入した日です。この戦争で、日本国民やアジアの多くの人々に地獄の苦しみを与えました。みなべ町でも814人もの戦死者を出しています。日本は戦後、『二度と戦争はしない』と世界に誓いました。その誓いが憲法9条です。戦後の日本は海外で戦争をしたこともなく、一人の他国民も殺傷していません。しかし、今の自民党政権は、自衛隊が海外で軍事活動をしやすくし、憲法9条を変えようとしています。日本が再び戦争をすることがないように憲法9条を大事に守っていきましょう」と訴えました。


(新聞折込チラシ・両面印刷の表面)

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問われて答えられないなら首相失格
小林節・慶応大学名誉教授




 臨時国会で所信表明演説を行った日の夜、菅首相はNHKのニュース番組に出演した。そこで日本学術会議の任命拒否問題を問われて、「説明できることとできないことがある」などと目に怒りをみなぎらせて答えを拒否した。その直後に、内閣広報官がNHKに電話して「首相は怒っていた」旨を伝えたとのことである。
 さらに、最近、官房副長官が取材に対して、「首相への出演依頼は『所信表明』についてだったのに、番組では、所信表明で触れていなかった『学術会議』問題への質問が多かった。これは『約束違反』である」旨の認識を示したとのことである。
 今年は米国で大統領選挙があったので、日本でも米国の政治家たちの演説や記者会見をテレビで見る機会が多かった。そこでは、責任ある政治家たちが、当然、原稿なしでその場に合わせて自分の意見を語り、突然の質問にも逃げずに臨機応変に答えていた。これが、言葉によって立つオピニオン・リーダーたる政治家の在り方であろう。
 今回、菅首相は、憲法23条(学問の自由)を根拠に、特別法により、一般職公務員とは違った自律機関とされている日本学術会議の人事に介入した。これは明白に違憲・違法な異常行動であるが、首相はあえて介入した。
 だから、それには政治家として確たる理由があったはずである。もしそうでなかったら、そもそも介入すべきではなかった。
 にもかかわらず、それほど重大な決定を首相として公然と行っておきながら、主権者国民の知る権利を代行しているNHKの番組内で、その「時の話題」を問われて「答えられない」と凄み、後に側近から「約束違反だ」と言わせて放置する。全く論外な話である。
 公人中の公人である首相が、現行の憲法と法律に明らかに矛盾する政治的決定を行った事実は動かしようがない。その点を公然と問われて、答える内容を持ち合わせていないのなら、政治家失格である。また、きまりが悪くて答えられないのなら、それは悪事の自白のようなもので、これまた政治家失格である。
 この人は本当に首相の器なのであろうか? (日刊ゲンダイDIGITALより)

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(2020年12月27日入力)
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