「九条の会・わかやま」 417発行(2021年01月16日付)

 417号が2021年1月16日付で発行されました。1面は、第79回「ランチタイムデモ」実施、改憲発議反対! 菅政治を転換させよう 2021年の年頭に思う 「九条の会・わかやま」呼びかけ人・副島 昭一、菅内閣支持率(世論調査結果)、九条噺、2面は、『檻を壊すライオン』~日本学術会議任命拒否問題を考える(抜粋)楾 大樹(はんどう・たいき)さん(弁護士)  です。
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[本文から]

第79回「ランチタイムデモ」実施



 14年6月から毎月継続実施されてきた「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」)が第79回目を迎え、好天気に恵まれた1月13日に60名の市民が参加して行われました。
 今回は重藤雅之弁護士がコーラーを務められ、「コロナに負けず声を上げていきましょう」と呼びかけられました。参加者は和歌山城西の丸広場から京橋プロムナードまで、重藤弁護士のコールに合わせて「9条守れ」などを訴えて行進しました。



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改憲発議反対! 菅政治を転換させよう
2021年の年頭に思う
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・副島 昭一




 後世の世界史の年表には2020年~202□年 新型コロナ大流行、死者△万人」と記載されることになるでしょう。この□が1、△ができるだけ少ない数になることを今は期待するのみです。世界史上の大事件もその渦中にいると、えてしてそうとは気づかないで過ごしていることが多いでしょう。また多くの人が、コロナの早い終息と「コロナ後の世界」を待ち望んでいることでしょう。しかし待ち望んでいるすべての人がこのパンデミックを無事生き延びるという保証はありませんし、私自身ももしかしたら「コロナ後の世界」には存在していないかもしれないと思うことがあります。しかしいずれにしてもコロナ後の世界は確実に来ることでしょう。
 2021年の年明け早々、コロナの感染者数、死者数はうなぎ登りに増え続け、最高数を更新し続けています。オリンピック・パラリンピックやGoToトラベルに使われる予算はすべてコロナ対策に使われるべきですが、今に至ってもこれらの中止どころか「場合によってはオリンピック・パラリンピックの中止も考える」とも一度も言明していません。放映権と広告に絡む五輪の利権、GoToトラベルに絡む大手旅行業者の利権を人命よりも重視しているとしか思えません。
 史上最長・戦後最悪の政権は交代したとはいえ、最悪政権はさらに引き継がれています。人事を掌握して官邸に人事権を集中し忖度官僚をはびこらせたのみならず、司法機関の人事まで介入、三権分立を危機に陥れてきました。のみならず、意に沿わない学者の学術会議会員任命を拒否しながらその理由を説明しないという民主主義国ではあり得ないことが起こっています。これは民主主義国家にとって恐ろしい事態です。前現首相はことあるごとに「欧米諸国との価値観の共有」を言っています。しかしこの2人が本当に価値観を共有しているのは独裁的権力を有している近隣国の国家指導者でしょう。そして深刻なのは主要メディアがこれを批判する視点を欠き、権力者の言葉をそのまま伝え、「やってる感」を垂れ流しています。世界的にも日本の報道の自由度に対する評価は下がり続けています。
 「『自助』に依存し『公助』を積極的に進めなかった日本の政権は、コロナの対策に著しく立ち後れ、有効な対策を出せず被害を長引かせ拡大させた。これに疑問や不満を持つ国民の声を背景に野党連合は選挙で与党連合を破って政権を交代させ、法治主義を回復して平和憲法を守った。憲法を守る上で各地にできた9条の会は積極的役割を果たした」。後世の歴史書にこう書かれることを期待し、できれば自分の目で確かめることができればと思っています。

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菅内閣支持率(世論調査結果)



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【九条噺】

 新年になりコロナは収束どころか拡大一方だ。緊急事態宣言を出したが、遅すぎるし、十分な補償が手当されているのか。衆参の議院運営委員会への出席を拒み、記者会見も途中で打ち切った菅首相は真剣なコロナ対策を行っているのか極めて疑問だ▼12月には〝ガースー〟で、こんな時に何を言うかと国民をあきれさせ、5人以上の会食は控えよと言いながら、自分は8人と会食し、さらに直後に5人以上で会食した。とても真面目にコロナ対策を行っているとは思えない▼これに比べ、ドイツのメルケル首相は、死者が最多となり、激しい口調で身振り手振りを交えた訴えは、世界中にインパクトを与え、感動的ですらあった。自分の意思を自分の言葉で発する首相と、官僚のメモを読む首相との違いは歴然としている▼「一律に5人以上はダメとは言っていない」との西村大臣の〝迷答弁〟は一体何なのか。内閣の対策の実相がよく分かる▼年末に日本医師会・中川会長は「国民が、緊急事態宣言を発した時のような連帯感を持った危機感や緊張感を取り戻さなければならない」と、東京都医師会・尾﨑会長は「これからの3週間は『真剣勝負の3週間』と言わせていただく」と、医療の責任者は極めて真剣に語っている▼「勝負の3週間」は感染拡大は止めらなかった。「外出は自粛しなさい、しかし旅行は奨励します」では止められるはずがない。菅首相をさっさと退場させ、真剣な対策を実施する政権に交代させるしかない。(南)

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『檻を壊すライオン』~日本学術会議任命拒否問題を考える(抜粋)
楾 大樹(はんどう・たいき)さん(弁護士)




 国家権力は、百獣の王ライオンのような、強くて頼りになる仕切り役です。しかし、ライオンが暴れたら大変です(権力は濫用される)。そこで、ライオンを檻に入れ、檻の中、つまり憲法というルールの枠の中で権力を使ってもらうことにしましょう。このような比喩で憲法を解説した『檻の中のライオン』を16年に出版しました。
 『檻の中のライオン』出版後も、次から次へと様々な憲法問題(ライオンが檻を壊す動き)が起き続けています。そこで、20年10月に『檻を壊すライオン』を刊行しました。
 憲法は、「個人の尊重」「人権尊重」という目的に向かって組み立てられた、立体的な1つの構築物のようなものです。繋がった一連の「線」と捉え、それを「立体」的な憲法の仕組みの中に位置づけました。
 日本学術会議の会員候補者6人の任命を内閣総理大臣が拒否する問題が起きました。このような新しい問題についても、基本原理から考えることができるはずです。



1.法律に基づかない行政
①憲法の原理原則
 政治に民意を反映させ(民主主義)、権力同士がチェックしあう(権力分立)ことで、人権が侵されないように政治をする。これが憲法の基本原理です。
 そこで、民意を反映した国会が作った法律に基づいて内閣が行政をすることとし(民主主義)国会が内閣をチェックする(権力分立)ことで、行政権による人権侵害を防ぎます。もし法律の内容に問題があるなら、国会で審議したうえで法改正をしなければなりません。立法権と行政権はこのような関係にあります。
②最近の事例
 最近、法改正をしないで内閣が法律と違うことをする事例が続いています。検察官の定年延長問題は、「定年延長できない」という法律であるはずなのに、国会で法改正をせず、内閣の閣議決定で黒川検事長の定年延長を決めてしまいました。国会と内閣の関係、権力分立や民主主義という基本原理を壊す動きということができます。 ③日本学術会議問題
 これとよく似た問題が日本学術会議の任命拒否問題です。日本学術会議の推薦通りに内閣総理大臣が任命するという法律であるはずなのに、国会で法改正をせず、内閣総理大臣が、推薦された学者の任命を拒否したのです。

2.独立性が求められる機関の人事への政治介入
①憲法の原理原則
 権力分立の要請から、政治権力から圧力や干渉を受けないことが憲法上求められる国家機関があります。裁判所が典型です。 ②最近の事例
 このような独立性が求められる機関の人事に政治権力が介入する事例もいろいろ起きています。内閣法制局長官の人事、最高裁判事の人事、内閣の判断で検察官の定年延長を可能とする法案、といった問題です。 ③日本学術会議問題
 日本学術会議法にも「独立して」という言葉があります。これは、政治権力が学問に介入してはならないという憲法23条(学問の自由)を踏まえたものと考えられます。委員の任命について日本学術会議の推薦どおりに任命するとされてきたのも、政治権力からの独立が求められるためです。ですから、政治権力が、合理的な説明もなしに任命を拒否することは、日本学術会議法に違反し、憲法23条の趣旨にも背く行為と言えるでしょう。

3.国民に情報を知らせない
①憲法の原理原則
 知る権利は、民主主義の前提となる重要な権利です。しかし、権力者は都合の悪い情報を隠そうとしがちです。権力分立の観点からも、内閣がきちんと仕事をしているかどうか、国会で明らかにしてチェックすることが必要です。そのため、大臣は国会からの求めに応じて国会に出席し、答弁する義務があります(憲法63条)。 ②最近の事例
 第2次安倍内閣以降、憲法63条に反して大臣が国会で答弁を拒否する事例が急増しています。特定秘密保護法、文書の隠蔽・改ざんなど、国民や国会に情報を隠す動きもいろいろあります。 ③日本学術会議問題
 これについても、国民に対しても、国会で質問されても、なぜ任命拒否するのかについて説明らしい説明がありません。一連の動きで、国民の知る権利(民主主義)や、国会のチェック機能(権力分立)が侵されているように思われます。 4.公私の区別の崩壊
①憲法の原理原則
 公権力を憲法の枠内で使ってもらう(立憲主義)ことで、私たちの「自由」が守られています。憲法で様々な自由が保障されています。  ライオンの檻の中が「公」、檻の外が「私」。これを区別する「憲法」という一線が崩壊すると(ライオンが檻の一線を踏み越えて出てくると)、「公私混同」「権力の私物化」が起きます。檻から出たライオンは、お友達に駆け寄って優遇したり、嫌いな人に駆け寄って噛みついたりするかもしれません。 ②最近の事例
 森友学園問題、加計学園問題、桜を見る会など、そのような出来事がいろいろ起きています。 ③日本学術会議問題
 学術会議の任命拒否問題についても、政権に批判的だから任命拒否されたのではないかという憶測もあるところです。政権に批判的な研究活動をすれば不利益があるかもしれない、となれば、学問研究が萎縮し、学問の自由(憲法23条)が危うくなるかもしれません。

 以上のとおり、それぞれ②~③は、繋がった一連の問題と捉えることができます。1つひとつを「点」で捉えれば小さな問題に見えるかもしれませんが、「線」で繋がっており、それを「立体」的な憲法の全体像に位置づけていくと、憲法そのものが壊れていくという重大な問題が見えてくるように思われます。
(「法学館憲法研究所」HPより。全文は下のURLから)
全文 → http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20201214.html

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(2021年01月16日入力)
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