「九条の会・わかやま」 424発行(2021年04月26日付)

 424号が2021年4月26日付で発行されました。1面は、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第17回総会開催 上脇博之氏がオンライン講演、衆院憲法審今国会初の開催 【警戒】自民「議論尽くした」と採決を主張、九条噺、2面は、幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について①、朝日新聞世論調査(4月13日)  です。
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「守ろう9条 紀の川 市民の会」第17回総会開催
上脇博之氏がオンライン講演


 「守ろう9条 紀の川 市民の会」は4月17日、和歌山市・河北コミュニティセンターで第17回総会を開催しました。総会では、神戸学院大学教授(憲法学)・上脇博之さんが「安倍-菅政権の憲法無視・破壊の政治と私たちの反撃」と題して、新型コロナウイルス感染症第4波の状況を考慮し、神戸市からライブ配信するオンライン方式で記念講演をされました。

(原通範代表)

 開会に当り代表の原通範さんは、「今、新型コロナ感染症は第4波に入ったと言われている。4月15日に自民党・二階幹事長は東京オリンピックを『これ以上とても無理だということなら、スパッと止めなければいけない』と言った。この発言の限りではよく言ったと思う。元来オリンピックは平和を願っての世界の一大事業で、根本原則に『活動は5大陸にまたがり、世界中の選手を集める時、頂点に達する』と言われる。コロナを危惧して、世界各国からのボイコットが増えれば、到底オリンピックとは言えないものになってしまう。二階氏の発言への支持はここまで。憲法審査会で改憲に躍起になっている自民党などの改憲勢力にくさびを打ち込まなければならない」と挨拶を行いました。

(講演中の上脇博之さん)

 続いて、記念講演に移り、宇田ともえさんが講師プロフィールを紹介しました。上脇博之さんは10ページのレジュメに基づき、「菅首相は『安倍政権の路線を継承する』と言っているので、安倍政権を振り返ることは菅政権の本質を知ることになる。第2次安倍政権が長期政権になったのは官邸主導の政治で、総理・総裁らの政治資金分配権と立候補者公認権の取得だ。さらに総理の権限強化を狙う官邸主導の改憲案だ。戦後長らく日本は官僚国家と言われてきたが、それを官邸主導にしたのが安倍政権だ。そして国民の知る権利を否定し虚偽答弁を繰り返している。改憲では『9条の明文改憲』を主張し、他方で、9条・立憲主義・法の支配・民意を蹂躙している。その内容は内閣法制局長官の恣意的な人事、南スーダン派遣自衛隊の日報隠蔽、そして『加計学園』事件と『森友学園』事件の行政の私物化と情報・証拠の隠蔽だ。日本学術会議の会員人選への安倍・菅首相の介入も起った。安倍政権の官僚支配では、内閣人事局の設置と黒川検事長定年延長問題がある。国会軽視では、国会での説明責任を果さず、議員内閣制を機能不全にしている。さらに自民党の党員激減と得票数減少への対応として『桜を見る会』問題もあった。これらの事件の真相解明は行われていない。今、我々に課されているのは、『明文改憲阻止』『戦争法などの憲法違反の法律の廃止』『戦争する自衛隊にしてはならない』などだ。今、市民連合と立憲4野党とで政策合意ができている。過去の国政選挙では一定の成果を収めている。政権交代のカギは投票率のアップを図ることだ。がんばろう」と訴えられました。(講演要旨は次号以降に掲載予定)

(宇田ともえさん)

 続いて、宇田ともえさんを議長に選出し、総会議事に移り、萩田信吾さん(事務局長)から、「2020年度の活動報告」と「決算報告」がありました。
(萩田信吾さん)

「活動報告」では、中止した「第16回総会」と開催した「第17回憲法フェスタ」についての報告、会員拡大や署名・宣伝活動などについて報告があり、続いて金原徹雄さん(運営委員)から、「私たちを取り巻く情勢」が、原通範さん(代表)から、「2021年度の取り組み課題」の提案と「運営委員」の推薦が、萩田さんから、「予算案」の提案があり、いずれも承認されました。最後に金原徹雄さんの閉会挨拶があり、総会は無事終了しました。

(金原徹雄さん)

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衆院憲法審、今国会初の開催
【警戒】自民「議論尽くした」と採決を主張




 衆院憲法審査会は4月15日午前、今国会初となる審査会を開き、憲法改正国民投票の「利便性を高める」ための国民投票法改正案を審議した。自民党の新藤義孝氏は「この法案は公職選挙法の改正内容を反映させるものだ。議論は既に尽くされている」と述べ、速やかな採決を主張。立憲民主党と共産党は反対した。
 改正案は2018年に提出され、昨年の臨時国会で実質審議入りした。自民、立憲両党は今国会で「何らかの結論を得る」ことで合意している。
 新藤氏は審査会で、「何らかの結論とは採決を意味することは衆目の一致するところだ」と強調。公明党、日本維新の会、国民民主党が早期採決に同調した。
 これに対して、立憲の大串博志氏は「CM規制などの論点が議論されないまま採決することを意味するものではない」と反論。共産党の赤嶺政賢氏は総務省接待問題などを挙げ、「国民の不信が高まっている。改憲につながる議論は大前提を欠く」と訴えた。
 なお、参院憲法審査会は21日、今国会初の幹事懇談会を開いた。与党は28日に審査会を開催して自由討議を行うことを提案。共産党を除く野党も賛成した。今後、与野党の筆頭幹事間で詳細を調整する。(時事ドットコム4月15日付より)

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【九条噺】

 「2020オリンピック・パラリンピック日本大会」で、思い出すのは19年の「ラグビーワールドカップ日本大会」だ。台風で試合ができなかった選手が被災地の泥かきを手伝った。試合前にマスコットキッズがその国の歌を歌い、スタンドでも日本人が他国の歌を歌って応援した。試合が終れば互いに健闘を讃え合い、日本式のオジギで観客に応える光景も見られるなど、世界と心が通う大会だった▼「2020オリ・パラ」が、「ラグビーワールドカップ」と決定的に異なるのは、19年に「コロナ騒動」はなかったことだ。日本の感染者は欧米に比べ少ないが、ここに来て激増し正に第4波で、緊急事態宣言も発せられた▼「オリ・パラ」は選手・チーム役員・国際競技連盟スタッフだけで3万人以上という。海外観客は入れないと決めたが、ボランティアや国内観客を含めると何人になるのか。常識的に考えても、安全に開催出来るとはとても思えない▼さらに約1万人もの医療関係者も必要だという。多くの国民に早急にワクチン接種を進めなければならない重要な時期に、コロナ対策の足を引っ張ることになる▼朝日新聞世論調査(4/13)では、開催28%、再延期34%、中止35%だ。国民の大多数は今年の開催を支持していない▼アスリートには気の毒だが、国民の生命あってのスポーツだ。現下の状況で、何故開催しなければならないのか。「平和な社会の推進にスポーツを役立てる」という目的にまで遡って考える必要がある。(南)

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幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について①

 憲法9条は、マッカーサーから押し付けられたとの議論があります。そうではないことを裏付ける文書があります。当時の首相・幣原喜重郎から聞き取ったもので、聞き手は幣原の秘書官の平野三郎氏です。幣原の意見に全て賛同するものではありませんが、何回かのシリーズでご紹介します。今回は1回目。(『みんなの知識 ちょっと便利帳』より)

(幣原喜重郎)

 私が幣原先生から憲法についてのお話を伺ったのは、昭和26年2月下旬である。同年3月10日、先生が急逝される旬日ほど前のことであった。場所は世田谷区岡本町の幣原邸であり、時間は2時間ぐらいであった。なお、当日の幣原先生のお話の内容については、このメモにもあるように、幣原先生から口外しないようにいわれたのであるが、昨今の憲法制定の経緯に関する論議の状況にかんがみてあえて公にすることにしたのである。(1964・昭和39年2月公開)
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【問】かねがね先生にお尋ねしたいと思っていましたが、幸い今日はお閑のようですから是非うけたまわり度いと存じます。
 実は憲法のことですが、私には第九条の意味がよく分りません。あれは現在占領下の暫定的な規定ですか、それなら了解できますが、そうすると何れ独立の暁には当然憲法の再改正をすることになる訳ですか。
【答】いや、そうではない。あれは一時的なものではなく、長い間僕が考えた末の最終的な結論というようなものだ。
【問】そうしますと一体どういうことになるのですか。軍隊のない丸裸のところへ敵が攻めてきたら、どうするという訳なのですか。
【答】それは死中に活だよ。一口に言えばそういうことになる。
【問】死中に活と言いますと…
【答】たしかに今までの常識ではこれはおかしいことだ。しかし原子爆弾というものが出来た以上、世界の事情は根本的に変わって終ったと僕は思う。何故ならこの兵器は今後更に幾十倍幾百倍と発達するだろうからだ。恐らく次の戦争は短時間のうちに交戦国の大小都市が悉く灰燼に帰して終うことになるだろう。そうなれば世界は真剣に戦争をやめることを考えなければならない。そして戦争をやめるには武器を持たないことが一番の保証になる。
【問】しかし日本だけがやめても仕様がないのではありませんか。
【答】そうだ。世界中がやめなければ、ほんとうの平和は実現できない。しかし実際問題として世界中が武器を持たないという真空状態を考えることはできない。
 それについては僕の考えを少し話さなければならないが、僕は世界は結局一つにならなければならないと思う。つまり世界政府だ。世界政府と言っても、凡ての国がその主権を捨てて一つの政府の傘下に集るようなことは空想だろう。だが何らかの形に於ける世界の連合方式というものが絶対に必要になる。何故なら、世界政府とまでは行かなくとも、少くなくとも各国の交戦権を制限し得る集中した武力がなければ世界の平和は保たれないからである。凡そ人間と人間、国家と国家の間の紛争は最後は腕づくで解決する外はないのだから、どうしても武力は必要である。しかしその武力は一個に統一されなければならない。二個以上の武力が存在し、その間に争いが発生する場合、一応は平和的交渉が行われるが、交渉の背後に武力が控えている以上、結局は武力が行使されるか、少なくとも武力が威嚇手段として行使される。(つづく)

平野文書→ https://www.benricho.org/kenpou/shidehara-9jyou-text.html

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朝日新聞世論調査(4月13日)



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(2021年04月26日入力)
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