「九条の会・わかやま」 426発行(2021年05月21日付)

 426号が2021年5月21日付で発行されました。1面は、第83回「ランチタイムデモ」実施、混迷の世界と日本国憲法(柳澤協二氏講演)①、入管法改定を断念、九条噺、2面は、9条は今のまま大切に みなべ「九条の会」が街宣活動実施、数々の問題で議会制民主主義を否定する安倍・菅政権(上脇博之 氏 ②)  です。
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第83回「ランチタイムデモ」実施



 生憎の雨天の5月12日、第83回ランチタイムデモ(呼びかけ:「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」)が、60名の市民が参加して行われました。
 コロナ禍の中、サイレントデモとされましたが、それはそれで「無言の迫力」というものがあったかもしれません。コール役(デモ中はコールなしですが)は丸山哲弁護士でした。今回は「憲法九条を守るわかやま県民の会」の写真コンテストで贈られた「のぼり」が初登場しました。
 参加者は和歌山城西の丸広場から京橋プロムナードまで、「9条守れ」などを訴えて(サイレントで)行進しました。



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混迷の世界と日本国憲法(柳澤協二氏講演)①

 5月15日、プラザホープ(和歌山市)で「2021 We Love憲法~5月の風に~」が開催され、元内閣官房副長官補・柳澤協二さんが「混迷する世界の中で、改めて考える戦争と憲法-息長い護憲と平和のために-」と題してリモート講演されました。その概要を2回に分けてご紹介します。



(1)《安倍長期政権の負の遺産》
 アベノミクスの失敗、国民とリスクを共有せず説明しない政治で、政治不信と社会分断や諦めと不寛容が発生した。そして安保法制により米国との従属的な「血の同盟」を促進した。アジアの心情を無視しつつ、「見捨てられない」ため「巻き込まれる」ジレンマに陥る。
(2)《米中対立の行方》
①「覇権国(米)の不安と台頭国(中)の不満」の形で「専制対民主」「供給網分離」「西太平洋の優位(焦点は台湾)」を争う。かつて米ソ冷戦は、勢力圏確定・経済依存なし・核相互抑止で共存したが、米中は、勢力圏が確定せず、経済リンクにより、問題が複雑だ。バイデン政権は同盟国に対中包囲を求めている。
②米国は新戦略(20年)で、中国ミサイルの射程内で対抗することに。日本は「第一列島線」に配備の攻撃ミサイルの攻撃範囲に含まれ、報復で戦場になる。
③対中軍事バランスでの台湾優位が逆転。香港の一国二制度の崩壊が台湾の独立志向を強めるなど、戦争がなかった要因が失われている。軍隊がある台湾との統一の鍵は台湾人民の支持。2027年武力統一論」は誤り。
④米中戦争は米基地と安保法制で日本も他人事ではない。
⑤日中発火点の尖閣。2020年の中国海警の日本漁船排除などは、主権主張そのもの。しかし中国が優先するのは台湾で、尖閣は実効支配の均衡狙い。「占拠されれば奪回」と言うが、占拠しあう反復は続けられず、講和が課題に。米軍介入と拡大は解決にならない。
(3)《抑止の問題点と日本の安全保障》
①「抑止」と言う言葉は落し穴もある。冷戦時代は核戦争の恐怖から互いに核使用を我慢した。しかし今の米中対立は限度が不明で、防御のつもりが相手には挑発となる「安全保障のジレンマ」が憂慮される。同盟国は守ってもらうつもりが戦争に巻きこまれる「同盟のジレンマ」に陥る。(柏原)
(つづく)

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入管法改定を断念

 入管法(出入国管理及び難民認定法)改定案は、今国会での成立が断念され、事実上の廃案となりました。国民の批判に菅政権が追い詰められた結果です。日本の入管法は、国連人権理事会、国連難民高等弁務官事務所から「国際法違反」と指摘されています。戦前、入管の担当は特高警察で、入管の隠蔽体質、強権的な姿勢や入管法は、こうした歴史の影響も考えられます。

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【九条噺】

 内閣官房参与の高橋洋一氏がツイッターに「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止かというと笑笑」とツイートした。これを見て、「腸が煮え返る」とはこのことかと思った▼おざなりコロナ政策を連発している菅政権だが、その人命軽視ぶりを証明するようなとんでもないツイートを内閣官房参与が行っていた▼日本のコロナによる死者は既に1万人を超えている。そして、現在大阪は医療崩壊状態で、多くの人が適切な治療を受けられず、毎日のように数十人の死者が出ている。高橋氏は、大阪市の特別顧問も務めていたという。にも拘らず「この程度のさざ波」などと評し、あげく「笑笑」と結び、笑いネタのように扱うとはどういう人間なのか▼示されたグラフは、感染者が非常に多い国と並べたもので、日本が少ないように見えるのは当り前の話だ。私たちが実際に毎日体感している波は、決して「さざ波」のレベルではない。死者の1万人は、阪神淡路大震災の死者(6434人)を大きく上回っている▼東アジア・オセアニア地域の国の100万人当りの感染者数を比べると、日本5398人、韓国2543人、中国65人、台湾50人、ベトナム32人、オーストラリア1168人、ニュージーランド532人と、日本が一番多い。これが「さざ波」で「笑笑」か▼このツイートに対し菅首相は「彼なりの分析を発表しているのではないか」と述べた。何故直ちに高橋氏を罷免できないのか。ここに菅政権の本質が見える。(南)

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9条は今のまま大切に
みなべ「九条の会」が街宣活動実施




 みなべ「九条の会」は5月3日、例年取り組んでいる地方紙折り込みビラ配布と、町内全域の街宣活動を実施しました。
 「今日5月3日は憲法記念日です。太平洋戦争で多くの犠牲を払った痛苦の反省に立ち、日本国憲法は9条で、徹底した平和主義を国民や世界に向け宣言しました。日本は戦後他国に戦争をしかけたことも、他国からしかけられたこともありません。日本は世界中から『平和主義の国』として信頼されてきました。私たちは、日本に『憲法9条』がある幸せを絶対に手放したくありません。ところが、自民党政権は、憲法9条に自衛隊を書き込んだ改憲案を国民に提起しようとしています。私たちは、米国との同盟の下で日本を『海外で戦争をする国』にしてしまうと考えています。私たちみなべ『九条の会』は、『9条は今のまま大切に守り育てていきたい』と願っています。町民のみなさん! どうかお力をお貸しください」と訴えました。

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数々の問題で議会制民主主義を否定する安倍・菅政権

 4月17日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第17回総会で神戸学院大学法学部教授(憲法学)・上脇博之氏が「安倍-菅政権の憲法無視・破壊の政治と私たちの反撃」と題してオンライン講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。



上脇博之 氏 ②

 国会を内閣総理大臣中心と考えて、それを実行してきたのが安倍政権で、官邸主導と呼ばれ、側近・官邸官僚が強い体制が生まれてきた。自民党改憲草案では知る権利を保障すると言いながら、まだ、個人の法律上の権利として主張するには熟していないとしている。日本国憲法で知る権利は保障されており、情報公開法で個人の具体的な権利とされている。知る権利を否定する自民党だから公文書を勝手に改竄することも簡単に出来た。「桜を見る会前夜祭」事件では国会で事実と異なる答弁を118回も行い、「森友学園」の国有地売却公文書改竄事件でも、うその答弁が130回あった。
 改憲草案を見ると、「自衛権の発動を妨げるものではない」という改憲を考えている。自衛権には集団的自衛権が含まれ、その行使には何ら制約もないとしている。集団的自衛権は「他衛権」だ。集団的自衛権は条約に基づくと国際法上の義務が発生し、アメリカの戦争に日本が巻き込まれる。戦争をする国家に変わろうという訳だから、平和的生存権を保障出来なくなり、前文から削除している。国民の抵抗で明文改憲が出来ないので、憲法の条文はそのままだが、政府の解釈を勝手に変え、憲法違反の法律を作り、改憲の目的を達成しようとしたのが安倍政権だ。内閣法制局は、独立して憲法を中心に解釈を行う専門部署で、集団的自衛権は9条がある以上は違憲だとの立場を保持していた。安倍政権は内閣法制局が自分たちの言いなりにならないので、元外交官を長官に据え、14年7月に集団的自衛権行使合憲の閣議決定を行い、翌年に戦争法を強行採決した。いわゆる立法改憲だ。戦争法は国民の6割が反対で、「国民の理解が得られていないのは事実だ」と言いながら、採決を強行した。憲法無視だけでなく民意も無視した。戦争法に基づくPKOの南スーダン派遣の日報を情報公開請求したところ、「既に廃棄して、保有していないから、文書不存在で不開示」という決定だったが、実際はこの文書は存在した。「森友学園」で公文書の改竄・廃棄が問題になったが、この日報の時から公文書が隠されていた。日本の戦争する国家づくりの中で情報隠しが既に行われていた。
 教育への政府の介入は、「加計学園」「森友学園」問題だ。「加計学園」問題は安倍首相の友達の加計孝太郎氏のために獣医学部の設置が、当時の文科省を黙らせて行われた。「森友学園」問題は、決裁文書が改竄され、応接録も廃棄と答弁された。「森友学園」問題の背景には、大阪維新と官邸の政治的結託がある。大阪の小学校は借りた土地の上に校舎がある場合は認可が下りないにも拘らず、大阪府は認可を出した。最初は借りるということで森友学園が動いたが、大量のゴミが出たのでその後買うという話に変わる。買う時も8億円の値引きがあり、会計検査院も「8億円を超える値引きは適切とは認められない」という結論が出ていた。大阪維新は「大阪府の公立学校職員に君が代の起立斉唱を義務付ける条例案」を提出した。教育基本法改悪を行なった政権が、教育勅語を教えるという森友学園に便宜を図ったというものだ。改憲草案には「教育が国の未来を切り拓く上で欠くことの出来ないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない」と書いている。教育勅語を教える学校を作ろうとした森友学園に予算を付ける代わりに、安倍グループが支援したのが土地値引きだ。設置趣意書を見るとこどもの権利条約等々を「日本人の品性を貶め、世界一流の教育をわざわざ低下させた」と森友学園が書いたが、安倍が書いたものと同じだ。
 日本学術会議の6名の任命拒否を菅首相が行ったが、安倍政権の下でも行われていたことが発覚し、安倍・菅体制は日本学術会議をどうしても許さないと考えていた。学術会議が軍事研究を認めないので、ここを潰したいと、下村博文氏は「軍事研究否定なら行政機関から外れるべきだ」と述べ、正に軍事研究を行わないという研究者を狙い撃ちにしたのが昨年の事件だ。
 官僚支配では、内閣法制局以外に、内閣人事局の創設が「森友」「加計」「桜を見る会」に影響している。さらに官邸の守護神と言われた黒川弘務氏を検事総長にするため定年延長までやった。賭マージャンで没になったが、黒川氏が検察を操り、影響力を行使していたということが分ってきた。甘利大臣の斡旋利得にも介入したと言われ、森友学園では担当検事は立件を考えていたのではないかと思うが、東京地検が大阪地検に圧力をかけて潰した。(つづく)
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「幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について③」は次号以降に掲載予定

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