「九条の会・わかやま」 428発行(2021年06月18日付)

 428号が2021年6月18日付で発行されました。1面は、コロナ禍で考える「9条改憲」の資格 「九条の会・わかやま」呼びかけ人・江川治邦さん、総がかり行動実行委員会が国会行動 改憲手続改正法案参議院本会議での採決強行に抗議!、九条噺、2面は、幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について③、パンフ紹介『9条改憲ストップ!』 憲法を生かしたコロナ対策、政治・社会の実現を  です。
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[本文から]

コロナ禍で考える「9条改憲」の資格
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・江川治邦さん




 昨年来の政府や東京都のコロナ対応を見ていると、「憲法9条を改定して戦争ができる国家にしたい」という現政権には、改憲を言う資格すらなく国家の安全を任せられない。こんな政権に改憲を許すと、先の大戦の二の舞を踏むだろう。彼らには最悪の事態を想定した非常時(コロナ禍)への戦略がなく、対応は常に後手後手に回り、対策は三密・手洗い・マスク着用で何ら変わりがない。記者会見では「夜の街と飲食」を異口同音に繰り返すばかりである。菅首相の記者会見は、記者たちと前もって調整された質疑応答を、首相は間違いなく答えるように官僚が書いた返答メモを淡々と読み上げるだけである。ヤラセと言っても過言ではない。これでは国民の心に届くコミュニケーションとはならないし、こんなやり方なら誰にでも首相が務まる。医学的な質問には分科会会長の尾身氏に振り向けて応答させる。彼は政府に気兼ねしながらも自らの言葉で発信し、説得力がある。両者の応答姿勢を見ていると、どちらが首相かと見誤ってしまう。一方、小池東京都知事は元ニュースキャスターらしく要領よく応答をするが、なぜか白々しくて人情味がない。コロナで毎日何十人という市民が亡くなることへの思いやりが見えない。記者会見ではその都度、服装やイヤリングを替え、まるでファションショーのようだ。毎日市民が亡くなる喪の中でのファッションショーは失礼である。これではコロナで死去した家族への惻隠の情も伝わらない。
 1984年にダイヤモンド社が出版した『失敗の本質』は、ノモンハン事件・ミッドウエイ作戦・ガダルカナル作戦・インパール作戦・レイテ沖海戦・沖縄戦を挙げながら、第2次世界大戦時の「大日本帝国の主要な失敗策」を通じて、日本軍が敗戦した原因を究明した本である。ここでは、失敗の原因を3点に要約している。①根拠なき楽観論、②戦略なき目標のあいまいさ、③事に当っての逐次投入である。今回のコロナ禍への政府の対応も『日本の発症人数は西欧に比べて少なく、日本人の自粛精神は優秀』といった楽観論に酔いしれて、戦略目標を策定せず不明確で、対処の仕方も行き当りばったりである。この非常時での戦略のあいまいさは、常に上層部が責任を取らない・取らせない仕組みと、関係する人々の上層部への忖度による事なかれ主義が遠因となっている。第2次大戦中に兵士や銃後の市民が310万人も亡くなった。負け戦を「勝った、勝った」と大本営がうそぶき放送する裏で、多数の兵士が戦場で餓死し、家族に送られた遺骨箱には石しか入っていなかったことを思い起こしたい。森友学園・文書改ざん・桜を見る会をみると、靖国にいます英霊も「日本政治は変われないのか?」と、嘆いているかも知れない。

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総がかり行動実行委員会が国会行動
改憲手続改正法案参議院本会議での採決強行に抗議!




 6月11日昼、総がかり行動実行委員会の「『改憲手続法』採決強行反対!自民党4項目改憲案反対!『重要土地調査規制法案』廃案!6・11参議院議員会館前緊急行動」が、直前に改憲手続法改正案が参議院本会議で可決・成立したことから、怒りのシュプレヒコールで始まりました。立憲民主党の屋良朝博衆議院議員、社会民主党の福島瑞穂参議院議員、日本共産党の山添拓参議院議員、沖縄の風の高良鉄美参議院議員が挨拶しました。
 総がかり行動実行委員会共同代表の高田健さんが主催者挨拶を行い、「国民投票法案が本会議で採決されたが、最低投票率がないなど欠陥法で、その法律で改憲の国民投票が行われても民意が公平・公正に反映されない。今なぜこの法案を通さなければならないのか。改憲議論を許さない運動を続け、総選挙で自公政権を倒すため、決意を固め合おう」と呼びかけました。
 改憲問題対策法律家6団体連絡会の大江京子弁護士は、「国民投票法案は、重大な問題をはらんだ欠陥法、違憲立法だ。CM規制など、金で改憲を買うことやビッグデータで投票を誘導しかねない。投票環境も後退している。成立を急ぐのは、明文改憲を進めるのが狙い。国民は改憲を望んでいない。憲法擁護義務がある首相が改憲を進めるのは憲法違反。違憲立法の下での改憲発議は許されない。世論を大きくしていこう」と訴えました。
 日本山妙法寺の武田隆雄さんは、「菅政権は、辺野古埋立てに沖縄戦の遺骨が入った土砂を使おうとしている。お骨にも人権がある。これは私たちの人権を守ることにもつながる。菅政権を退陣に追い込もう」と呼びかけました。  行動提起を総がかり行動実行委員会共同代表の小田川義和さんが行い、土地利用規制法案阻止のために力を合わせること、東京都議会選挙や総選挙で菅政権を退陣に追い込むため奮闘することを呼びかけました。(憲法共同センターNEWS6月11日号より)

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【九条噺】

 夕刻からアオバズクが大きな声で2回ずつ「ホーホー」と鳴く日が続いている。数年前に和歌山城の居場所を知り、巣の見張りや夜の餌運びの姿を写真に収めた。しかしひな鳥の巣立ちの頃に蛇の被害にあって以来、たまに声を聞いても目撃できなかった。それが近くの附属学校の森に来ている▼以前も城から飛来していたことは「わたしの自然観察路コンクール」27回(2010年)佳作の附小3年野口さんの自由研究に「お城からはアオバズクがとんで来ます」とあるので分かる。今後は巣をこちらに移すのか。鳥の生命の場も歳月によって変動があるのを6年ほどの経験で感じている▼生命と歳月と言えば、人間界では新型コロナの蔓延が多くの命を奪い、生活と経済を痛めている▼疫病は周期的にやってくる。適切な対応と日頃の備えが何より大切だ。しかし自公政権は大規模PCR検査にブレーキをかけ、休業補償や医療への支援を渋り、病床削減は進めてきた。逆にGoTo事業や五輪という流行を呼ぶ事業には執着している▼国会で菅首相は「私は五輪ファーストではなく命ファーストだ」と答えたが、具体的に何をするかは示さない。国民の生命を危険にさらして五輪強行に邁進する。感染拡大を呼ばなければ幸いだが保証のない賭博だ。本気の命ファーストを願う▼五輪論議に隠れがちだが改憲国民投票法の具体化は、戦争できるための9条改憲が狙いだ。戦争も命ファースト違犯になることを付言しておきたい。(柏)

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幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について③

 憲法9条は、マッカーサーから押し付けられたとの議論があります。そうではないことを裏付ける文書があります。当時の首相・幣原喜重郎から聞き取ったもので、聞き手は幣原の秘書官の平野三郎氏です。幣原の意見に全て賛同するものではありませんが、何回かのシリーズでご紹介します。今回は3回目。(前回は425号)(『みんなの知識 ちょっと便利帳』より)

  (幣原喜重郎)

【答】(続き)すなわち協定なき世界は静かな戦争という状態であり、それは嵐の前の静けさでしかなく、その静けさがどれだけ持ち堪えるかは結局時間の問題に過ぎないと言う恐るべき不安状態の連続になるのである。そこで軍縮は可能か、どのようにして軍縮をするかということだが、僕は軍縮の困難さを身をもって体験してきた。世の中に軍縮ほど難しいものはない。交渉に当たる者に与えられる任務は如何にして相手を偽瞞するかにある。国家というものは極端なエゴイストであって、そのエゴイズムが最も狡猾で悪らつな狐狸となることを交渉者に要求する。虚々実々千変万化、軍縮会議に展開される交渉の舞台裏を覗きみるなら、何人も戦慄を禁じ得ないだろう。軍縮交渉とは形を変えた戦争である。平和の名をもってする別個の戦争であって、円滑な合意に達する可能性などは初めからないものなのだ。
 原子爆弾が登場した以上、次の戦争が何を意味するか、各国とも分るから、軍縮交渉は行われるだろう。だが交渉の行われている合間にも各国はその兵器の増強に狂奔するだろう。むしろ軍縮交渉は合法的スパイ活動の場面として利用される程である。不信と猜疑がなくならない限り、それは止むを得ないことであって、連鎖反応は連鎖反応を生み、原子爆弾は世界中に拡がり、終りには大変なことになり、遂には身動きもできないような瀬戸際に追いつめられるだろう。
 そのような瀬戸際に追いつめられても各国はなお異口同音に言うだろう。軍拡競争は一刻も早く止めなければならぬ。それは分っている。分ってはいるがどうしたらいいのだ。自衛のためには力が必要だ。相手がやることは自分もやらねばならぬ。相手が持つものは自分も持たねばならぬ。その結果がどうなるか。そんなことは分らない。自分だけではない。誰にも分らないことである。とにかく自分は自分の言うべきことを言っているより仕方はないのだ。責任は自分にはない。どんなことが起ろうと、責任は凡て相手方にあるのだ。
 果てしない堂々巡りである。誰にも手のつけられないどうしようもないことである。集団自殺の先陣争いと知りつつも、一歩でも前へ出ずにはいられない鼠の大群と似た光景―それが軍拡競争の果ての姿であろう。
 要するに軍縮は不可能である。絶望とはこのことであろう。唯もし軍縮を可能にする方法があるとすれば一つだけ道がある。それは世界が一斉に一切の軍備を廃止することである。
 一、二、三の掛声もろとも凡ての国が兵器を海に投ずるならば、忽ち軍縮は完成するだろう。勿論不可能である。それが不可能なら不可能なのだ。
 ここまで考えを進めてきた時に、第九条というものが思い浮かんだのである。そうだ。もし誰かが自発的に武器を捨てるとしたら―。
 最初それは脳裏をかすめたひらめきのようなものだった。次の瞬間、直ぐ僕は思い直した。自分は何を考えようとしているのだ。相手はピストルをもっている。その前に裸のからだをさらそうと言う。何と言う馬鹿げたことだ。恐ろしいことだ。自分はどうかしたのではないか。若しこんなことを人前で言ったら、幣原は気が狂ったと言われるだろう。正に狂気の沙汰である。(つづく)
平野文書→ https://www.benricho.org/kenpou/shidehara-9jyou-text.html

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パンフ紹介『9条改憲ストップ!』
憲法を生かしたコロナ対策、政治・社会の実現を




●全面的な集団的自衛権を認め、9条への自衛隊の明記、緊急事態条項の創設を掲げる自民党「改憲4項目」は許すことはできません。
●国民の命とくらしを守るため、憲法の諸条項を生かしたコロナ感染対策を求めます。
●憲法をくらしに生かしましょう。
●総選挙で勝利し、憲法を生かす政権への交代を実現しよう。
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判型:A5判、24ページ
頒価:100円/冊(多数冊割引有、送料別途)
発行年月日:2021年6月1日
憲法会議 東京都千代田区神田神保町2-32 金子ビル103
 FAX :03-3261-5453  電話:03-3261-9007
 E-mail:mail@kenpoukaigi.gr.jp
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