「九条の会・わかやま」 429発行(2021年07月07日付)

 429号が2021年7月7日付で発行されました。1面は、第84回「ランチタイムデモ」実施、「和歌山障害者・患者九条の会」15周年の集い開催、九条噺、2面は、言葉「『改正改憲手続法』の問題点①、幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について④、書籍紹介『井上ひさしの憲法指南』  です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

第84回「ランチタイムデモ」実施



 梅雨の中休みの晴天の6月23日、第84回ランチタイムデモ(呼びかけ:「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」)が、80名の市民が参加して行われました。
 6月23日は、「沖縄慰霊の日」であるとともに、7年前(2014年6月23日)に第1回ランチタイムデモが行われた記念日です。以来、毎月欠かすことなく実施され、84回となったものです。
 今回はコーラーを芝野友樹弁護士が務められました。出発に当り、芝野弁護士から、7年前のランチタイムデモの始まりを回顧した上で、「初心を忘れず続けていきましょう」という挨拶がありました。先月はサイレントデモでしたが、今月はコーラーの先導でコールを繰り返しながら、和歌山市役所前から京橋プロムナードまで、「憲法を壊すな」「9条活かした日本を作ろう」などを訴えて行進しました。
 第85回は7月12日(月)、第86回は8月6日(金)で、いずれも12時20分出発です。



    ---------------------------------------------------------------------

「和歌山障害者・患者九条の会」15周年の集い開催



 「和歌山障害者・患者九条の会」は6月27日、和歌山市ふれ愛センターで23名が参加して、15周年の総会と記念講演会を行いました。
 「和歌山障害者・患者九条の会」は、2006年6月4日に結成総会を開催。「障害者は平和でなければ生きられない」をスローガンに、地道な活動を続けてきました。総会ではコロナ禍の1年にも拘らず、天野(あまの)の里交流バスハイキングやジェンダー学習会の取り組みを振り返りました。そして、7年8カ月余に及んだ安倍政権をもってしても改憲を実現できなかったのは、世論の力によるものであり、私たちの活動に自信と誇りを持たなければなりません。
 新型コロナ緊急事態等の影響で、当初予定していた京都の岸博実先生の記念講演は次回に延期して行う運びとなりました。「憲法九条を守るわかやま県民の会」の坂本文博先生に急遽講演をしていただくことになりました。先の国会で成立した国民投票法改定案のねらいと背景について、判りやすくお話をいただきました。
 なぜ改憲の準備を急ぐのか。4月16日の日米首脳会談の共同声明において、台湾海峡をめぐってアメリカと中国が交戦状態に入った場合、自衛隊が武力行使に加担することを約束しました。また2020年3月、アメリカの新しい軍事方針に基づいて、奄美、宮古、石垣に陸自ミサイル部隊の設置を進めるそうです。このように、安保法制を根拠にアメリカに付き従って戦争できる国にすることが真の狙いだそうです。9条の条文だけを守るのではなく、その背景にしっかり目を向けなければならないと話されました。
 マスコミで報道されないような最新の情勢を学ぶことができました。運動によって世論を喚起するとマスコミも無視できなくなるとのこと。これからも絶え間なく活動を続けていきたいと思います。(会の事務局・野尻誠さんより)

    ---------------------------------------------------------------------

【九条噺】

 高齢者向けのワクチン接種で筆者も2回目の接種が終った。和歌山県の2回目の接種の進捗は全国2位だとか。それはそれで結構なことだが、全国の高齢者の接種が迅速に進むように願っている▼筆者が接種を受けたワクチンはファイザー社の「mRNAワクチン」で、コロナウイルスのスパイク蛋白の設計図「mRNA」を脂質の膜に包んだ製剤だ。この「mRNA」が体内に取り込まれると、細胞内でスパイク蛋白が作られ、スパイク蛋白に対抗する中和抗体が作られることで、新型コロナ感染症の予防が出来ると考えられている▼1回の接種では中和抗体の量は十分ではなく、2回の接種が呼びかけられている。発症予防効果は95%と高く、変異のデルタ株にも効果は高いという。ただ、中和抗体が出来るのは接種後2週間程度とされ、兵庫県で2回の接種をした人の感染が報告された。2回接種したら絶対にかからない訳ではなく、日頃の感染予防策が必要だ▼ワクチン接種で一番大切なことは、「集団免疫」の獲得で、人口の6~7割の免疫獲得が必要と言われている▼これは日本が6~7割になればよいという話ではない。世界全体が「集団免疫」を獲得した状態にならなければならない。ワクチンが途上国に行き渡っていない現状では、一部の国で「集団免疫」が獲得出来ても、世界全体を守ることにはならない▼日本を含むワクチンを確保出来た富裕国が、ワクチンを入手出来ない国々へ至急供給する義務があると思う。(南)

    ---------------------------------------------------------------------

言葉「『改正改憲手続法』の問題点①」

 6月11日、改正改憲手続法(改正国民投票法)が成立しました。主権者である国民が直接、意志表明をする「国民投票」は国民主権の具体化かもしれませんが、「国民主権」は国民が直接、投票出来れば良いという形式的な意味だけで理解するのは適切ではありません。国民が公正・公平な投票環境で投票出来ることも「国民主権」原理の要請となります。ネットのウソの情報に欺かれた状態での国民投票は、「真の主権者意志の表明」とは言えません。改憲手続法にはテレビCM、インターネット、外国資本などへの規制がなく、「金で買われた憲法改正」「デマから生まれた憲法改正」「外国資本に買われた憲法改正」となり兼ねず、主権者である国民の意志が真に表明されるためには、これらの規制が適切に法で明記されなければなりません。
 改正改憲手続法にはCMに関する規制がなく、公正公平な投票環境を整備するため、適切なCM規制がないと、「金で買われた憲法改正」となり兼ねません。
 フェイクニュースに欺かれた状況で国民投票が行われれば、「デマから生まれた憲法改正」となり兼ねず、ネットに関しても適切な法規制が必要になります。(つづく)
(名古屋学院大学教授・飯島滋明氏の論考より)

    ---------------------------------------------------------------------

幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について④

 憲法9条は、マッカーサーから押し付けられたとの議論があります。そうではないことを裏付ける文書があります。当時の首相・幣原喜重郎から聞き取ったもので、聞き手は幣原の秘書官の平野三郎氏です。幣原の意見に全て賛同するものではありませんが、何回かのシリーズでご紹介します。今回は4回目。(前回は428号)(『みんなの知識 ちょっと便利帳』より)

(幣原喜重郎)

【答】(続き)しかしそのひらめきは僕の頭の中でとまらなかった。どう考えてみても、これは誰かがやらなければならないことである。恐らくあのとき僕を決心させたものは僕の一生のさまざまな体験ではなかったかと思う。何のために戦争に反対し、何のために命を賭けて平和を守ろうとしてきたのか。今だ。今こそ平和だ。今こそ平和のために起つ秋ではないか。そのために生きてきたのではなかったか。そして僕は平和の鍵を握っていたのだ。何か僕は天命をさずかったような気がしていた。
 非武装宣言ということは、従来の観念からすれば全く狂気の沙汰である。だが今では正気の沙汰とは何かということである。武装宣言が正気の沙汰か。それこそ狂気の沙汰だという結論は、考えに考え抜いた結果もう出ている。
 要するに世界は今一人の狂人を必要としているということである。何人かが自ら買って出て狂人とならない限り、世界は軍拡競争の蟻地獄から抜け出すことができないのである。これは素晴らしい狂人である。世界史の扉を開く狂人である。その歴史的使命を日本が果たすのだ。
 日本民族は幾世紀もの間戦争に勝ち続け、最も戦斗的に戦いを追求する神の民族と信じてきた。神の信条は武力である。その神は今や一挙に下界に墜落した訳だが、僕は第九条によって日本民族は依然として神の民族だと思う。何故なら武力は神でなくなったからである。神でないばかりか、原子爆弾という武力は悪魔である。日本人はその悪魔を投げ捨てることに依て再び神の民族になるのだ。すなわち日本はこの神の声を世界に宣言するのだ。それが歴史の大道である。悠々とこの大道を行けばよい。死中に活というのはその意味である。
【問】お話の通りやがて世界はそうなると思いますが、それは遠い将来のことでしょう。しかしその日が来るまではどうする訳ですか。目下の処は差当り問題ないとしても、他日独立した場合、敵が口実を設けて侵略してきたらです。
【答】その場合もこの精神を貫くべきだと僕は信じている。そうでなければ今までの戦争の歴史を繰り返すだけである。然も次の戦争は今までとは訳が違う。
 僕は第九条を堅持することが日本の安全のためにも必要だと思う。勿論軍隊を持たないと言っても警察は別である。警察のない社会は考えられない。殊に世界の一員として将来世界警察への分担負担は当然負わなければならない。しかし強大な武力と対抗する陸海空軍というものは有害無益だ。僕は我国の自衛は徹頭徹尾正義の力でなければならないと思う。その正義とは日本だけの主観的な独断ではなく、世界の公平な与論に依って裏付けされたものでなければならない。そうした与論が国際的に形成されるように必ずなるだろう。何故なら世界の秩序を維持する必要があるからである。若し或る国が日本を侵略しようとする。それが世界の秩序を破壊する恐れがあるとすれば、それに依て脅威を受ける第三国は黙ってはいない。その第三国との特定の保護条約の有無に拘らず、その第三国は当然日本の安全のために必要な努力をするだろう。要するにこれからは世界的視野に立った外交の力に依て我国の安全を護るべきで、だからこそ死中に活があるという訳だ。(つづく)
平野文書→ https://www.benricho.org/kenpou/shidehara-9jyou-text.html

    ---------------------------------------------------------------------

書籍紹介『井上ひさしの憲法指南』



「日本国憲法は世界史からの贈物、最高の傑作」と語る井上ひさし。常に憲法を軸に社会を見つめ、小説、戯曲、エッセイなどの作品を書き続けました。本書には、憲法の成り立ち、三原則、九条の精神などについて分かりやすく説いたエッセイ、講演録を収録。「日本国憲法って何だろう?」その答えがここにあります。
第一部 憲法と生きて
 第一章 憲法を読む
 第二章 九条を語る
第二部 二つの憲法――大日本帝国憲法と日本国憲法
-----------------------------------------------------
著者:井上ひさし 解説:小森陽一
判型:A6判、232ページ
定価:1,100円+税
初版年月日:2021年3月21日
岩波書店 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
         電話:03-5210-4000

    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2021年07月06日入力)
[トップページ]