「九条の会・わかやま」 433発行(2021年08月30日付)

 433号が8月30日付で発行されました。1面は、「伊都橋本9条平和まつり」開催 原爆の絵 平和の尊さ示す、「和歌山市ひがし9条の会」総会開催 講演「平和憲法とオリンピック」、九条噺、2面は、菅首相の改憲を進めさせてはならない「緊急事態条項」創設に要注意 「九条の会・わかやま」事務局・南本 勲、言葉 「領海」「接続水域」「EEZ」  です。
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[本文から]

「伊都橋本9条平和まつり」開催
原爆の絵、平和の尊さ示す




 憲法9条を守る伊都・橋本連絡会主催の第13回「9条平和まつり」が8月7日、和歌山県橋本市高野口町の同市産業文化会館で開かれた。
 今回は広島の高校生が描いた「原爆の絵」を、初めてDVDで紹介、写真で展示、冊子も配布され、参加者は「戦争の怖さ、平和の尊さ」を噛みしめていた。
 この日、開会式には約50人が参加。開会挨拶に立った同連絡会の玉置元成共同代表は、今年、核兵器禁止条約が発効したのに、被爆国・日本も、アメリカや中国も、批准していないことを強調。「きょうは原爆の絵をご覧ください。みんなで核兵器のない平和な世界を…」と訴えた。



 「原爆の絵」は、広島原爆記念資料館の依頼で、広島市立基町高校の生徒たちが、被爆者の悲惨な体験談を聞き取り、丹念に表現した秀作ばかり。
 この「原爆の絵」について、同連絡会の吉田政忠事務局次長は、同資料館の協力を得て、DVD(解説入り)を制作、スクリーンで紹介した。
 また、複写作品63点は卓上に展示。編集・発行した「原爆の絵」の冊子(200冊)は、希望者に配布して、戦争の悲惨さを示した。
 例えば、タイトル「うめつくされゆく川」の絵では、原爆投下後、川に飛び込もうとする人、川いっぱい流れゆく人々などが描かれていて、被爆体験証言者は「永遠に語りかけてくれる絵ができてうれしい」とコメントしている。
 今回も新型コロナ感染防止のため、太鼓や踊りなどのイベントは断念したが、参加者は「原爆の絵に心打たれた」「この絵さえ見れば、誰も戦争へは向かわない」と話していた。
(「高野山麓橋本新聞」8月8日付)



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「和歌山市ひがし9条の会」総会開催
講演「平和憲法とオリンピック」




 「和歌山市ひがし9条の会」は8月1日、東部コミュニティセンター(和歌山市)で総会を開催しました。
 オープニングは鎌倉さん・日野さんのコカリナ二重奏で、エーデルワイス・草競馬・スワニー河・アメイジンググレイスなど数曲が演奏され、澄んだ音色に心を癒されたひとときでした。
 総会は、昨年が中止のため2年分の報告になりました。コロナ禍で会独自での行動は難しく、各団体の取り組みへの参加が多くなりました。活動方針は、改憲発議を許さない取り組みを進めることや、平和コンサート開催の提案を行い、承認されました。
 記念講演は和歌山大学名誉教授で、「守ろう9条 紀の川 市民の会」代表の原通範先生から「平和憲法とオリンピック」の演題で話していただきました。
 酷暑とコロナ禍のもと、多くの反対を押し切ってオリンピックが7月23日から開催されましたが、多様性、調和と言われながら招致からの問題や、数々の不祥事がありました。8月1日には新規感染者は1万2341人と報道されていました。
 東京オリンピック大会憲章の中には「すべての個人は、いかなる種類の差別も受けることなく、スポーツをする機会を与えられなければならない」と書かれています。
 今から53年前、1968年のメキシコ大会で、黒人選手が人種差別への抗議の黒いグローブを突き上げ、オリンピックに政治を持ち込んだとして、即追放されました。同じ表彰台で2位になったオーストラリアの白人選手が2人に同調する行為を示したため、次のオリンピックでは代表を外され、64歳で死去するまで迫害を受けたそうです。
 今大会では出場選手から「あらゆる差別や不平等とたたかいたい」などの社会的発言が起こり、政治からの自立と自由を表明する大会へと変化してきています。平和憲法もオリンピック憲章も「平和・人権・民主主義」を求める理念は共通しています。
 コロナ禍で開催されただけに、人命や人権について深く考えさせられる内容でした。(事務局・神谷さんより)



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【九条噺】

 先日の横浜市長選挙で、IRカジノ誘致反対・コロナ対策を掲げた野党共同候補が菅首相の推す前国家公安委員長を大差で下して当選した。投票率も上がり、カジノとコロナでの民意の高さが示された。生活環境破壊への懸念とコロナの感染爆発に伴う生命の危機感は、和歌山にいても共感できる▼ところでこれと同じ頃に別の一つの興味深い報道が目を引いた。防衛省が8月末にまとめる22年度予算概算要求に「イージス・システム搭載艦」を計上しないことを決めた件だ。21年度予算で17億円の調査費を計上していただけに建造費見送りは異常事態と言える▼安倍前首相がアメリカ製兵器爆買いで契約した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア(陸上イージス)」配備を予定2地点の問題(秋田:地図不正確、山口:ブースター落下の恐れ)で断念し、代替として昨年12月閣議で「イージス・システム搭載艦」2隻の導入を決めた▼ところが2隻の建造費が5000億円以上、運用経費込みで総経費が9000億円以上に膨らみ、自民党からも疑問の声があり、防衛省も「増え続ける防衛費の押し上げ要因になり、総選挙前に紛糾する材料」と判断したとされる▼地上に置くべき大型レーダーのSPY7を艦載するには船体が大型化し費用が膨らむ。防衛省はSPY7の対米契約1700億円超があり違約金を避けるため採用に固執した▼コロナを克服し、国民がまっとうに暮らしていける国作りにこそ予算を使う時だ。(柏)

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菅首相の改憲を進めさせてはならない
「緊急事態条項」創設に要注意
「九条の会・わかやま」事務局・南本 勲


 菅首相は月刊誌「Hanada」9月号に掲載された「菅義偉総理大臣 国民の疑問に答えます」と銘打ったインタビューで、「憲法改正に取り組む方針は全く変わらない」と明言しました。この発言は「コロナ対策でも浮かび上がったように、改憲して緊急事態条項を創設するのが急務だと思われる」と取材者から水を向けられて飛び出しました。菅首相は、自民党の改憲4項目に触れ、党是として掲げた自主憲法制定の考えに変更はないと主張し、「コロナに打ち勝った後、国民的な議論と理解が深まるよう環境を整備し、挑戦したい」と宣言しました。
 自民党の改憲4項目とは、「①自衛隊の明記」「②緊急事態条項」「③合区解消」「④教育の充実」のことです。
 「自衛隊の明記」とは9条1項、2項をそのままにして、自衛隊を9条に書き込むものですが、これは、9条2項の「戦力不保持」の規定を「死文化」させ、無制限な海外での武力行使に道を開くもので、台湾をめぐり米中の軍事的緊張が高まっている中、危険な日米同盟の強化を後押しするものです。
 「合区解消」は憲法を改正する必要は全くなく、人口の少ない県は1名の議員を、人口の多い県は人口に見合った人数の議員を選べばよいだけの話です。
 「教育の充実」も改憲は必要ありません。要は教育の無償化の実施や私立学校への助成の強化を行えばよいだけの話で、改憲の本当の狙いを覆い隠すための国民への人気取りの話にすぎません。
 今、注意しなければならないのは「緊急事態条項」です。自民党には「コロナのピンチをチャンスと捉えるべきだ」と、「緊急事態条項」創設の主張があります。「緊急事態条項」とは「戦争・内乱」や「自然災害」の時に内閣が憲法を守らず自由に行動する「超憲法的措置=独裁体制」をつくる極めて危険な条項です。菅首相は、インタビューでも「コロナ対策に、改憲して緊急事態条項創設が急務だ」と取材者から言われて改憲に取り組むと言っています。コロナ感染爆発を抑えることが出来ない菅内閣は「自然災害」だと言っています。人流抑制を言いながらオリンピック・パラリンピックを実施するなど支離滅裂、言葉だけで具体策は何も実施できない無為無策の菅内閣の「人災」です。
 今、必要なのは、国会を開き、過去の誤りの反省の上に、国民にきちんと説明を行い、早急に医療機能を強化した宿泊療養施設や臨時の医療施設を増やし、早い段階から治療を開始することによって重症化を防ぐ責任を果たすことです。
 「自然災害」などといった言葉に騙されて、「緊急事態条項」の創設をさせてはなりません。

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言葉 「領海」「接続水域」「EEZ」



 中国は、尖閣諸島で海警局の公船による領海侵入を繰り返しています。そもそも「領海」「接続水域」「EEZ(排他的経済水域)」とは何で、どのような範囲を言うのでしょうか。
 「領海」とは、国家の領域の一部で、海岸に沿って一定の幅をもつ海域で、その上空・海底・地下にも沿岸国の主権が及びます。「領土」と同じ概念です。
 「接続水域」とは、領海の外側の海域で、沿岸国の法令により一定の規制が認められますが、沿岸国の排他的な支配は及ばず、航行の自由などの公海自由の原則が適用されます。ただ、自国の通関、財政、出入国管理、衛生に関して法令の違反を防止することや処罰することができるとされています。
 「EEZ(排他的経済水域)」とは、領海外の海洋資源の最適利用を確保することを目指し、82年の国連海洋法条約によって制度化されたものです。
 「領海」は国家の領域ですが、すべての国の船舶が領海内を無害通航することができます。無害通航とは、沿岸国の平和・秩序・安全を害しない通航のことです。「接続水域」は、沿岸国の通関、財政、出入国管理、衛生に関する法令違反を処罰することは出来ますが、排他的な支配は及ばず航行の自由などの公海自由の原則が適用されます。
 尖閣諸島での中国公船のとても無害通航とは言えない覇権主義的な行動は国際法からも許されるものではありません。

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(2021年08月30日入力)
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