「九条の会・わかやま」 435発行(2021年09月27日付)

 435号が9月27日付で発行されました。1面は、戦争法強行からまる6年 総がかり行動 国会正門前行動実施 総選挙で勝利し違憲の安保法制を政権交代で廃止しよう、自公政権の首相の顔だけ変えても日本の窮状は解決しない 「九条の会・わかやま」事務局・柏原 卓、九条噺、2面は、特権支配から多様性社会へ 検証・菅政権の1年 中野晃一上智大学教授に聞く、「小中学生向け防衛白書」を公開  です。
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戦争法強行からまる6年 総がかり行動国会正門前行動実施
総選挙で勝利し、違憲の安保法制を政権交代で廃止しよう




 安保法制(戦争法)強行成立から6年となる19日、国会正門前で総がかり行動実行委員会と全国市民アクションが安保法制(戦争法)廃止、政権交代を求めて19日国会前行動を行い、同時にオンライン配信しました。参加者は市民と野党が力を合わせ、同法の廃止と野党連合政権を実現しようとアピールしました。
 主催者あいさつで、9条壊すな!実行委員会の菱山南帆子さんは、菅政権の命切り捨てのコロナ対策を批判し、「自民党、公明党に命と暮らしと尊厳を守ることは期待できません」と述べ、「野党4党と市民連合が結んだ政策合意を力に総選挙で政権交代を実現させよう」と訴えました。
 駆けつけた国会議員があいさつ。立憲民主党の菅直人衆院議員は「この集会を総選挙での政権交代のスタートとし、総選挙で政権交代を実現させよう」と呼びかけました。日本共産党の田村智子参院議員は「6年間、共闘を前へという努力によって、4野党が市民連合と総選挙での共通政策に合意し、党首がそれぞれ政権を代える決意を表明した。総選挙で政権交代を実現し、新しい政治へと踏み出そう」と訴えました。社民党の福島瑞穂参院議員はビデオメッセージを寄せました。
 市民の発言では、6年前に安保法制(戦争法)廃案に向けて奮闘した方々が行いました。立憲デモクラシーの会の石川健治東京大学教授は、「菅首相の断末魔は、壊れてしまった統治システムが無残に機能不全になるのを目の当たりに見せてくれた。共有すべき大前提が壊されている。その部分で連帯の輪を広げて行きたい」と述べました。安全保障関連法に反対する学者の会の高山佳奈子京都大学教授は、隠ぺいや忖度の政治が広がり、「専門性が生かされる仕組みが壊された。総選挙で取り戻したい」と強調しました。市民連合の福山真劫氏は、各地で200を超える市民連合が結成されるなど、「6年前とは大きく違う。野党と政策合意も結んだ。私たちの力で新しい政権をつくろう」と訴えました。さらに、元シールズの元山仁士郎さん、安保法制に反対するママの会の高岡直子さんが6年間のたたかいを振り返りながら、コロナ対策の菅政権を厳しく批判し、新しい政権を実現させようと訴えました。
 行動提起を行った総がかり行動実行委員会の小田川義和共同代表は、「これから1カ月半余り、市民と野党の共闘の力で政権交代を実現するために力をあわせる時です。憲法を守り生かすことこそ、命、暮らし、生業を守る道です。そのことを発信し総選挙勝利めざす行動に各地で取り組みましょう」と訴えました。(憲法しんぶん速報版9月23日付)

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自公政権の首相の顔だけ変えても日本の窮状は解決しない
「九条の会・わかやま」事務局・柏原 卓


 本紙434号冒頭は「菅首相が1年で退陣 国民の信頼失い政権投げ出し」と、9年間の安倍・菅政権、自公政治の破綻の結果と指摘した。この事態に目下、9月17日告示29日投開票の自民党総裁選挙がマスコミの興味をさらい、連日4候補の発言や選挙情勢が焦点化している。安倍・菅政治、自公政権を批判し政権交代を唱える野党の訴えが霞みがちだ。もちろん新聞各紙「これまで上手く行かなかった政策の転換と政権運営の反省こそが急務で、自民党内の勢力争いに終わるべきではない」との指摘はあるが、影が薄い。
 4候補に細かい相違や程度の差、たとえば選択的夫婦別姓について高市候補だけが明確に反対している等はある。しかし改憲推進、原発再稼働などの基本では4候補とも自民党の基本方向で一致している。とりわけ自民党改憲4項目にいう9条への自衛隊明記の推進は、安保法制とも相まって、自衛隊が海外での戦争に巻き込まれる道を広げるものであり、平和な日本を守りたい立場から私たちは強く反対する。原発は、事故の危険や放射性廃棄物の処理問題から廃止を願う世論が広範であり、自民党内にさえ原発廃止論があるほどだ。
 また、安倍・菅政権で発生した、もり・かけ・桜の利権癒着と隠蔽行政は国会軽視であり、民主主義破壊、自殺者まで出した人命破壊の重大問題だが、こうした悪行を本気で裁いていくかどうか注視が必要だ。
 一方、菅首相はコロナ対策に専念するとの理由で総裁選に出馬せず次期首相退陣が決まったのだが、喫緊のコロナ禍で医療を受けられず自宅待機中に急に悪化し死去する例が発生しているのに、菅首相はもちろん総裁選4候補も医療体制充実や検査拡大などの抜本的な目ぼしい方針転換を提起しない。せいぜいワクチン接種が進んだと誇るだけだ。これまで自公政権のコロナ対策と言えば、一方で緊急事態宣言や重点措置で市民生活を規制し、一方でオリ・パラ強行開催をはじめ経済活動のための規制緩和と言う、ヤジロベイ対策でこれまで失敗を繰り返してきた。それを転換するメッセージが見えない。その他、小泉構造改革やアベノミクスと貧困の問題も大きいが、その転換もあいまいだ。
 このように、4候補の誰になっても国民の命を大切にする政治が期待できない。それどころか安倍前首相が応援する高市候補は、軍事費増加や台湾有事関与と言った突出タカ派発言が特色だ。もし新首相になってその通りに猛進したらと想像するだけでも背筋が凍る。この候補を担ぎ出した安倍前首相が在職中に安保法制を強行したことも忘れてはなるまい。自公政権のままで首相の顔だけ変えても日本の窮状は解決しない。もはや政権交代しかあるまい。

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【九条噺】

 小泉純一郎元首相の5年5カ月の在任期間で、評価できるのは北朝鮮を訪問、日朝平壌宣言に署名し、拉致被害者5人の帰国を実現したことだけで、内政では郵政民営化を始め新自由主義経済を押し進め、対外的にはテロ特措法でアフガンでの給油活動、イラク特措法で自衛隊派兵を強行した最悪の首相だと思っていた▼ところが、近年「原発ゼロ、やればできる」と、福島原発事故から10年余、原発再稼働を批判し、脱原発を訴えている▼小泉氏は言う。私は日本の原発は安全で、コストが安い、CO2を出さないクリーンエネルギーだと、経産省や原発推進論者の主張をうのみにしていた。福島原発事故を見て、原発は安全じゃないと思い、いろんな本を読んで勉強した▼原発推進論者が言っている「日本は資源がない、大事なエネルギーだ。原発は安全、コストが安い、クリーンエネルギーだ」とは全部ウソだと分かったと言う▼論語に「過ちて改めざる、これを過ちという」という言葉がある。「過ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ」という言葉も思い出し、講演を頼まれると、原発の話を中心に「私は間違っていた」「日本は原発を使ってはいけない」と話し始めたと言う▼河野太郎氏は「脱原発」を言っていたのに、総裁選では「いずれ原子力はゼロになる」などと言って、「脱原発」をごまかしている。他の3人は論外だが、彼の「脱原発」は何だったのか。「過ちて改めざる、これを過ちという」を真剣に考えてはどうか。(南)

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特権支配から多様性社会へ
検証・菅政権の1年
中野晃一上智大学教授に聞く




 日本学術会議会員候補の任命拒否や、後手後手のコロナ対応、緊急事態宣言下での東京五輪の強行……。菅政権の一年をどう見るか、上智大学の中野晃一教授(政治学)に話を聞きました。

「やってる感」だけの政権

 菅政権の問題点は何か。中野教授は「安倍政権の時代から続いた『アカウンタビリティー(説明責任)のなさ』です。市民への説明責任を果たさない。果たすつもりもない。全くタガが外れた政治が今も続いています。その点で菅政権は安倍政権より悪くなっています」と話します。
 この姿勢はコロナ対応に表れています。朝令暮改、専門家無視。批判を顧みず、十分な説明はありません。「感染症を甘く見ているのでしょう。ワクチン接種さえ広げれば大丈夫と高をくくっている。より正確な知見や、デルタ株など新たな知見があっても対応しない。『やってる感』を見せていれば、乗り切れると考えているのだろう」 。

行政ゆがめたツケの末に

 さらに「能力のない首相が2代続いたことで官僚の姿勢が劣化しています。正確な事実、不都合な事実が上に報告されない。聞こえのいいことや首相が好む情報だけが上がり、甘い判断が続く。世論の批判に対しては『誤解している』ぐらいにしか思っていないのでは」と憂えます。
 森友・加計学園の問題など、安倍政権が強めた、官僚への強権支配が、過度な忖度を生み、行政をゆがめました。不十分なコロナ対応は、そのツケなのかもしれません。

こんな政治では日本没落

 今秋には総選挙が行われます。何が問われているのでしょうか。  中野教授は「日本は今、説明責任のない特権階級による独善的支配が続いています。自民党の2世、3世の世襲議員や、そこに群がる財界、官邸官僚。そうしたお仲間たちが国家に巣食い、食い物にしています。感染対策を怠った結果、医療崩壊が起き、自宅で亡くなる人が相次いでいます。世界3位の経済大国でこんなことが起きているのに、政権が吹き飛ばないのは異様なことです」。
 一部の企業による助成金支給事業の独占や利益の中抜き、森友・加計学園問題にみられる行政の私物化、相次ぐ汚職、カジノ導入を経済政策として進める不見識。「このような政治を続ければ、日本は没落する」と警告します。
憲法理念に立脚した日本を

 ではどうするべきか。同教授は「まず憲法の理念に沿って命や暮らしを優先すること。(社会保障の拡充や最賃引き上げなどの)再分配政策や医療、教育の充実、女性の権利確保や性的少数者(LGBTQ)への差別撤廃など、社会の多様性を大切にすることで活気のある経済をつくることが求められます。一人一人を大切にし、自己実現できるようにすることを、権利の面でも、経済の面でも保障することが、『立憲野党』(立憲民主、共産、社民など)の共通の考え方です」と話します。
 一部の特権階級のための社会か、それとも多様性が生きる社会を選ぶのか。日本社会は今、分岐点にあります。(機関紙連合通信社HPより)

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「小中学生向け防衛白書」を公開



 防衛省は「はじめての防衛白書~まるわかり!日本の防衛~」を小中学生向けとして公開しました。
 本文と資料編を合わせて約600ページの白書を30ページに再編集し、ホームページに公開したものです。
 「国の防衛はなぜ必要なの?」「憲法と自衛隊の関係」など10項目にまとめ、自衛隊の役割や「抑止力の意義」、安全保障環境などの白書の内容を平易な表現で解説、紹介する初めての試みとしています。
 「憲法と自衛隊の関係」では、憲法9条のもとで、「自衛権や自衛隊・武力の保持が認められている」と極めて端的に述べています。
 「少国民(軍国少年少女)」をつくり出した戦前の教科書や読み物の復活は論外です。
詳細は→ https://www.mod.go.jp/j/kids/wp/all.pdf 

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(2021年09月27日入力)
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