「九条の会・わかやま」 437発行(2021年10月25日付)

 437号が10月25日付で発行されました。1面は、「表現の自由・精神の自由2021」②(志田陽子氏 ②)、総がかり行動実行委員会が国会前行動 市民と野党の共同で政権交代し歴史を変えよう、九条噺、2面は、みなべ「九条の会」124回目のピースアピール実施、ご参加をお待ちしております 第18回憲法フェスタ  です。
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「表現の自由・精神の自由2021」②

 4月28日和歌山県民文化会館で青年法律家協会和歌山支部の「憲法を考える夕べ」が開催される予定でしたが、コロナ禍の中、中止となりました。講師の武蔵野美術大学教授・志田陽子氏の講演内容がYouTubeに公開されましたので、その要旨を4回でご紹介します。今回は2回目。

志田陽子氏 ②



 表現の自由はなぜ大切か。憲法21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という条文だ。集会とは人が集まること、結社とは団体や政党を作ること、言論、出版はスピーチをしたり、印刷物にすることで、これらは自由だということだ。表現の裾野は技術の進歩とともに広がり、インターネットやSNSなど新しい表現ジャンルも生まれている。「その他一切の表現の自由」は、新しいジャンルも発展を妨げず支える自由で、解放的な方向性を持っていると言える。表現の自由の基本の意味は国家からの自由で、公権力が関わることを拒否する権利だ。戦前、女性は政治集会を行うことは法律で禁止され、新聞に投書したり発言することは到底できないことだった。そんなお節介を断る自由が表現の自由だ。公権力は税金をプールし、人を従わせる強い力を持っている。その力は市民のために使ってもらうものであり、市民の自由の領域は公権力のエネルギーが氾濫してくることを防ぐ必要がある。そういう護岸工事をしているのが憲法だ。精神の自由に関わる様々な人権の邪魔をしないように自由の領域はある。表現の自由は裁判になることも多く、大切にすべき理論が発達している。
 表現の自由は、個人の人格の形成と発展にとって不可欠だと考えられている。我々の人格や個性は最初から作られているものではなく、コミュニケーションを通じて作られる。最初は親や家族など物理的に身近な人たちとのコミュニケーションから始まり、次第にコミュニケーションのレベルも幅もアップしていく。文化・芸術、メディアも重要な役割を果たす。映画や絵画を見て大きな刺激を受けた人も、テレビ、ラジオからいろんな考え方を吸収して自分の性格が耕された人もいる。人格形成は一般社会での自由なコミュニケーションに任せるべきで、国が妨害をしたり、人格をある方向に育つように操作したりしてはならない。人間の生存にとって不可欠なライフラインの情報や災害情報など我々の五感ではキャッチできない情報に関しては、国は不都合な情報を隠したり歪曲してはならず、迅速に知らせなければならないし、メディアが知らせようとしている時、それを妨害してはならない。コロナに関する情報もきちんと知らせ、デマを防ぐことも必要だ。国は必要な情報を発信し、市民の情報公開請求に答えることが我々の生存を支えるものになってきている。民主主義の社会ではそれをトップダウンでやるのではなく、我々の判断を生かしながら行う必要がある。自由な情報公開や意見交換は民主的な社会の基礎だ。我々は知る権利から表現の自由・情報公開という民主主義の循環を止めないようにする必要がある。
 民主主義を支える人権には選挙権があり、補うものとして請願権もある。しかし、これだけでは民主主義の車輪は動かない。ペダルをこぐことが必要で、そこに精神の自由が必要だ。そうした社会の中で我々の表現を伝えることと、何を伝えようとするかという思考がセットになっている。思想でなくても事実を伝えようという思考がある。その事実をどうキャッチして自分の判断材料にするかも各人の自由だ。そして表現の自由は共存社会を支えるためにも必要不可欠なものだ。暴力を回避し、相互理解を実現するためには問題解決のコミュニケーションが必要だ。異文化理解コミュニケーションも必要で、人間として違いを認めながら同じ社会の中で暮らしていけるために様々な表現が必要だ。ここでは文化・芸術による交流が重要だし、社会教育の役割も大きい。コミュニケーションには公けの価値づけをしない、価値の有無は「公」ではなく一般人が決める。これを「思想の自由市場」と言う。ここでは批判の自由が大切だ。自由市場にどんな表現が出てもよいが、「私はそれが嫌です」と言える自由があることによって、良いものは良い、悪いものは悪いと淘汰されていく、それを「公」がするのではなく、一般人がするというのが表現の自由だが、誰でも往来できる道のイメージと思えばよい。或いは人間の血管だと思えばよい。
 表現の自由というものは「触らぬ神にたたりなし」のように委縮効果を受けやすい弱くてデリケートなものだが、それで得はしないかもしれないが、社会に対する関心を「でも、こう思う」というように出していける社会が重要だ。「黙っておれば得だ」と思う社会は長い目でみるとみんなの首を絞めることになる。目先だけを考えると「黙っていても生きていける。だから黙っていた方が得だ」という社会だと表現が委縮し、民主主義の社会が萎んでいってしまう。だから手厚く自由を保障する必要がある。
 憲法21条2項に「禁止」ルールが2つある。精神の統制をしてはいけないという検閲、通信の秘密の侵犯(通信を傍受してはいけない)で、憲法は国に対してこの2つを禁止している。過去に行われた検閲は、出版や報道の内容事前チェックや写真報道を不許可にすることが行われた。政府にとって都合のよい情報しか市民に与えられず、市民の判断材料がなくなることになる。通信の秘密はプライベートなコミュニケーションに公権力が立ち入ってはいけないということだ。共謀罪などで警察の権限が拡大していく危険があると議論になっている。この考え方からすると、自治体が芸術祭をするとか学問に対して支援があるとか、公けの資金で運用される組織があるとかは、ない方がよいという考えも出てきそうだが果してそうか。(つづく)

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総がかり行動実行委員会が国会前行動
市民と野党の共同で政権交代し、歴史を変えよう




 総がかり行動実行委員会は衆議院議員選挙が公示された10月19日夜、「自公政権交代、政治を変えよう総選挙勝利10・19国会議員会館前行動」を行い、600人が参加しました。市民と野党の共闘で自公政権を終わらせ政権交代するため、力を結集してたたかっていくことを確認し合いました。日本共産党の伊藤岳参議院議員が挨拶。立憲民主党、社民党からのメッセージが読み上げられました。
 総がかり行動実行委員会共同代表の小田川義和さんが主催者挨拶。「市民連合と4野党の間で、6本柱20項目で政策合意がなされ、213の小選挙挙区で野党統一が行われた。憲法・民主主義を破壊する政権を打倒して政治を変える大きなチャンスだ。私たちで歴史を変えよう。市民と野党の新しい政治か、アベ・スガ政治の継続を選ぶかが問われている。市民と野党の力を結集しうねりを大きくしていこう」と呼びかけました。
 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは、辺野古埋め立てに「遺骨の混じる土砂」を使うことは戦没者の尊厳が踏みにじられると反対を訴え、イラストレーターの大島史子さんは、「フラワーデモの取り組み」を紹介し、性暴力への対策を訴えました。看護師の宮子あずささんは、「武蔵野市長選挙では野党共闘の松下玲子さんが再選された。公約を守り、きちんと市政を行ってきたからだ。野党共闘の力を確信した。野党候補の一本化は大きな力だ。地域ごとに勝利を勝ち取ろう」と呼びかけました。
 戦争をさせない1000人委員会の勝島一博さんが行動提起を行いました。(「憲法共同センターニュース 21年10月20日号」より)

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【九条噺】

 10月3日に発生した和歌山市六十谷(むそた)の水管橋崩落事故による断水は筆者宅も直撃した。知人が夕方に崩落を知らせてくれ、直ぐにペットボトルに水を入れたが、20時に断水が始まった▼まず、飲料水の確保で困ったが、友人がペットボトルの飲料水をたくさん持ち込んでくれた。不幸中の幸いだが自宅には井戸があり、バケツ数個に水を貯え、トイレの水はなんとか凌ぐことが出来た。井戸は知人や近所の人たちにも解放した。困ったのは風呂だ▼それから我慢の1週間が始まった。6日から隣接する橋に仮設の水道管設置工事が行われ、9日8時から送水が始まった。自宅にちょろちょろと水が届いたのは15時頃だった▼1日の停電は経験したことがあるがこんなことは初めてだ。ライフラインと言われる生活維持に必要不可欠な電気、水道、ガス、通信、運輸などが機能不全に陥ると如何に大変な生活になるのかを身に染みて感じた▼そもそも紀の川という大河に550mもの橋を架け、水を送ること自体が無茶なことではないのか。建設は1975年で耐用年数は48年、既に46年が経過している。北岸に浄水場を建設することこそ、解決策だと思う。民営化など論外だ▼憲法は「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定める。健康で文化的な生活には民主主義や平和主義を守るとともに、国、自治体、企業などが真剣にライフラインを堅持し、改善することも求められていると思う。(南)

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みなべ「九条の会」、124回目のピースアピール実施



 10月10日、みなべ「九条の会」は新しい幟も活用し、スピーカーで呼びかけるスタンディングでの124回目のピースアピールを実施しました。
 「岸田文雄氏が新たな首相となりました。新首相には期待できるのでしょうか。過去の自民党政権の政策の反省を期待することもできません。自民党総裁選では、候補者がこぞって改憲への意欲を示しました。コロナ対策は憲法を変えなくても法律でできます。憲法に緊急事態条項がないからではありません。一番の原因は政府の無為無策にあります。岸田首相は、19日公示、31日投開票で総選挙を行うことを明らかにしました。国民に今度の内閣はどのようなことをしてくれるのかを見せることもなく、私たちに政権のあり方を選択させようとしているのです。私たちは、憲法をないがしろにする今の自公連立政権には退場してもらいたいと思っています」と訴えました。

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会員でなくてもどなたでも参加できます。
ご参加をお待ちしております。




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(2021年10月24日入力)
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