「九条の会・わかやま」 438発行(2021年11月06日付)

 438号が11月6日付で発行されました。1面は、「第18回憲法フェスタ」開催 守ろう9条 紀の川 市民の会、「表現の自由・精神の自由2021」③(志田陽子氏 ③)、九条噺、2面は、衆議院も改憲派が3分の2を占める厳しい選挙結果に 引き続き改憲阻止に全力で奮闘しましょう  です。
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「第18回憲法フェスタ」開催
守ろう9条 紀の川 市民の会


 11月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第18回憲法フェスタ」が和歌山市・河北コミュニティセンターで開催され、約120人が参加しました。
 午前10時から「展示の部屋」では会員の人形・押し絵・絵手紙など、数多くの趣味の作品が賑やかに展示され、会員同士が交流しました。

(展示の部屋)

 例年実施している「リサイクルひろば」も、10時15分から開かれました。いらなくなった物をみんなが持ち寄り、気に入った物があれば持って帰ってもらいました。

(リサイクルひろば)

 また例年開催している「映像の部屋」は、今年は広い多目的ホールで10時30分から「DVD上映会」として開催。19年12月に凶弾に倒れた中村哲医師が遺した文章と記録映像による現地活動の実践と思索を伝える『荒野に希望の灯をともす~医師・中村哲 現地活動35年の軌跡』が上映され、約60名が鑑賞しました。

(DVD上映会)

 午後2時から多目的ホールでメインプログラム開始です。最初に原通範代表から開会の挨拶があり、原代表は総選挙結果を踏まえ、「野党共闘をやらなかったらもっと負けていた。失敗だったというのは自公の思うツボだ。野党共闘にもっと磨きをかけよう。そうすれば、野党連合政権の世の中を実現することができる。私たちが自公政権から離脱することを言い続けよう」と訴えられました。

(原通範代表)

 第1部は和歌山大学マンドリンクラブのOB・OGを中心に結成された「紀の国マンドリンオーケストラ」の演奏が行われ、「G線上のアリア」「ポールモーリアベストセレクション」「炎(ほむら)」「また君に恋してる」を始め、素晴らしい演奏が行われました。

(紀の国マンドリンオーケストラ)

 第2部は立命館大学教授(憲法学)多田一路氏の講演が行われました。演題は「私たちはなぜ憲法を守るのか~立憲主義、民主主義、平和主義~」で、総選挙結果について「改憲を阻止するのであれば、小選挙区で共闘するしかない」と述べられました。今日の講演の狙いは「憲法とは何か」を知り、「憲法を護る」とはどういうことかを理解してもらうことだと話され、憲法は国家権力に対する指令書で、立憲主義のない憲法は憲法ではない。憲法を作るのは国民だ。憲法があっても権力濫用が起こる。だから運動も必要だ。憲法を「獲得する」ことが必要だなどと話され ました。

(多田一路氏)

講演要旨は次号以降に掲載する予定です。



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「表現の自由・精神の自由2021」③

 4月28日和歌山県民文化会館で青年法律家協会和歌山支部の「憲法を考える夕べ」が開催される予定でしたが、コロナ禍の中、中止となりました。講師の武蔵野美術大学教授・志田陽子氏の講演内容がYouTubeに公開されましたので、その要旨を4回でご紹介します。今回は3回目。

志田陽子氏 ③



 文化芸術を支援する公けの施設や行事はたくさんあり、それを支える法律もたくさんある。公民館、図書館、博物館、美術館などは博物館法で扱い、公営ホールを安く使えるのも支援だ。表現への規制ではなく支援の方向ならOKという考え方だ。これは憲法13条の幸福追求権の中に「文化享受の権利」が含まれると考えられており、25条の生存権の「健康で文化的な最低限度の生活の保障」の中に「文化的」があり、最低限度までは国が支援しなくてはならない。26条の教育を受ける権利も、国は義務を負う義務教育を行うとともに、高等教育も国・自治体が支援する。社会人の社会教育もあり、26条の教育はかなり広い範囲をカバーしている。国や自治体が市民の文化的な豊かさを支援するのは望ましい方向だ。世界の方向を見ても、国連世界人権宣言では27条1項に「すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する」と、芸術に親しむ権利と学術の恩恵を受ける権利の両方が保障されている。2項では「すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する」と、「保護される権利」と言っているが、保護するのは国だ。こうした国際条約や人権宣言は加盟している国を意識しており、それぞれの国が国民に対して利益を保護するようにと、国に言っている。その支援の際にも「自由」が尊重される。
 日本でこの考え方を生かした文化政策、文化行政を行う法律は「文化芸術基本法」だ。この法律は憲法の内容や国際社会における文化芸術支援の方向が盛り込まれている。1条の「文化芸術活動を行う者の自主的な活動の促進として、文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与する」がこの法律の目的だ。最終目的は「国民生活」を豊かにし文化的な「社会」を活性化していくことだ。これに基づき文化・芸術の支援として受け皿を「公」が作っている。ところが公権力の関与で実際に起きたことは「あいちトリエンナーレ」などで、支援を受けることが決まった企画に後から排除する発言が相次いだ。これは作家の実感としては表現を見てもらえなくなり、検閲だと感じるものだったが、これまでの判例を見ると検閲とは言えないことになってしまう。一般社会の中でこんなことが起きたら検閲だが、「公」が支援するのにふさわしくないという話になると、日本の裁判の中では検閲とは考えないということが、教科書検定をめぐる判例の中で確立した考え方だ。しかし、一旦支援を決めて後からダメと個別に排除することは、その作品の思想性などから差別的な扱いをしていることになり、やってはいけない差別だ。
 さて、民主主義と「表現の自由」が新たな問題局面としてクローズアップされ、社会に顕在化してきたと思う。公けが支援する中でのキーワードは「公共性」だ。今は民主主義に見合う「公共性」がある事業を支援するものでなければならない。民主主義の中で「行政の政治的中立」が急に言われるようになった。表現内容に対して政治的中立を言う前に、それを引き受けた行政が行政の中立を守らなければならないことが本来の筋だ。行政の中立とは、まず行政の文化政策のあり方を決め、行政は予算を決め、決まったことをやる。中身は表現者の表現の自由や自主性を尊重する。求められる「中立」は芸術表現の中立ではない。古典芸術や文化財の保護は、政治体制やその時々の政策理念に合うかどうかとは別の芸術的・歴史的価値によるもので、その価値判断はその世界の専門家が行う。市民がやりたい様々な表現、例えば講演会を開く時に、市民の表現活動や企画に中立を求めるのもナンセンスな話だ。民主主義は多様な意見や価値観を持ち寄って集約するものだ。宗教や習慣、文化、食べ物の好みや宗教的な戒律など様々な人が同じテーブルについて、互いを認め合いながら何らかの合意を作っていかないと社会はまわらない。この時、テーブルにつく前から真ん中に揃えるのは意見の持ち寄りではなくなる。民主主義は最初の段階はいろんな意見があって、最後に集約した結論が出たら、行政はその結論を実行するのが中立だ。持ち寄る段階で「真ん中に合わせるルール」を作ってしまうと民主的な思考にならない。「公の施設」の側がやってはいけないことは私物化だ。憲法89条に反して特定宗教団体への便宜の供与をしてはならない。ただ、文化芸術的価値の観点からの文化財の保護はOKだ。また、図書館や公民館を特定の政党・政治家が事務所などに使い、一般市民が使えないとか、公民館便りが特定の政党・政治家の広報になってはいけない。しかし、市民が政策について講演会や討論会を開くための場所を貸したり、講師が色んな立場を持っているのは構わない。我々は子どもではなく、批判の能力や相対化する能力があり、講師がどんな考え方を持っていても、それをどう受け止めるかは、受け止める側の自由だし、それだけの力はある。今、市民の表現の自由に関わる問題が起きている。政治的主張を掲げた路上での無言デモを巡る訴訟は市民が勝訴している。公けの施設を、特に平和についての講演会場などに使わせてもらえないとか、公けの後援を出してもらえないとか、公けが発行する冊子に掲載してもらえないとか、補助金を交付してもらえない(取り消しになる)とかが起きている。ここで、公けの側に願うことは「精神的自由」への理解を進めることだ。政府から独立した芸術や学問をやれることこそ、下から多様な意見を上げていくことが出来るようになるからだ。(つづく)

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【九条噺】

 「国連環境計画」は10月26日、各国が掲げる温室効果ガス削減目標を達成しても、今世紀末には世界の平均気温が産業革命前から2.7度上がるという報告書を公表した▼15年のパリ協定では気温上昇を「2度未満、できれば1.5度」に抑えるとした。31日からCOP26が始まるのを前に各国から提出された新たな30年目標と未提出国の状況も含めて分析すると、全世界の30年の温室効果ガス排出量は10年比で16%増になるという▼日本は昨年10月に「50年ゼロ」を表明し、4月に30年度は13年度比46%削減を打ち出したが、世界が石炭火力全廃に向かう中、日本は石炭火力に30年の発電量の19%を依存する方針は変えていない▼日本の全CO2排出量の4分の1は、火力発電所19、製鉄所11のわずか30の事業所から排出されているそうだ。この内23事業所が石炭を使用している。COP26議長国の英国は日本に、遅くとも40年までに石炭火力全廃を求めている▼世界が地球温暖化防止に真剣に取り組んでいる時にとんでもない発言が飛び出した。麻生太郎自民党副総裁の「北海道の米がうまいのは、農家の努力ではなく地球温暖化のおかげだ」というものだ。北海道農民連盟は抗議談話を出した▼北海道の米がうまくなったのは、北海道農民の品種改良への必死の努力の賜物だろう。それを「地球温暖化のおかげ」などと言うとんでもない発言は、北海道農民と地球温暖化防止の活動を愚弄するものでとても許すことはできない。(南)

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衆議院も改憲派が3分の2を占める厳しい選挙結果に
引き続き、改憲阻止に全力で奮闘しましょう


 総選挙の結果、自民党は261議席と「絶対安定多数」を獲得したものの、前議席から15議席後退しました。公明党は32議席と3議席増となりました。
 一方、自公政権の政治に不満なものの、野党支持に回れなかった人々の支持を得て、維新の会は前議席数の4倍以上の41議席を得ました。
 結果、自民、公明、維新を合わせて334議席となり、衆議院では改憲派が引き続き3分の2を占める結果となりました。
 他方、野党は市民連合と4野党の「共通政策」、立憲民主党と共産党の「政権協力」、各党が「候補者調整」をした総選挙戦を実現させ、多くの選挙区で接戦にもつれこむ「自公vs野党共闘」の選挙戦を展開しました。しかし、れいわ新選組は3議席、社民党は1議席を獲得し、国民民主党は3議席増やしたものの、立憲民主党は14議席減らし、共産党も2議席減らしました。野党には厳しい結果ですが、引き続き改憲阻止のたたかいに全力で奮闘しましょう。(「憲法しんぶん速報版11月1日」より)

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(2021年11月06日入力)
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