「九条の会・わかやま」 443発行(2022年01月15日付)

 443号が1月15日付で発行されました。1面は、今の改憲論は最も危険な思想だ 「九条の会・わかやま」呼びかけ人・石橋 芳春、「災害緊急事態条項」の不必要性(金子 勝 氏 ②)、九条噺、2面は、第91回「ランチタイムデモ」実施、新年3日からスタンディング  です。
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[本文から]

今の改憲論は最も危険な思想だ
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・石橋 芳春




 昭和16年12月8日は開戦の日、20年8月15日は日本の歴史が180度変わった日です。昭和16年、私は小学2年生で12月8日は寒い朝でした。担任の先生は寒さと開戦のためか震えながら開戦したことを話し、その日は終日戦争の話ばかりでした。
 3年生、4年生と進級するにつれ遠足や運動会はなくなり、遠足は行軍と言って往復30キロを歩いたり、体操の時間は学校農園を耕したり、運動場を開墾して「さつまいも畑」にしました。教育は勉学より食糧増産と軍国主義の思想教育一色になっていました。戦況は次第に悪化し、中学4年生、5年生(旧制中学)の先輩達は特攻隊にかきたてられ、小学5年の私達まで海洋少年隊という名で海軍に志願させられました。18歳で海軍少尉になるとのことでした。和歌山も東亜燃料が爆撃されたり、グラマン戦闘機に追い回されました。学校には教育の監視と軍国主義のため、職業軍人のOBが配属され、本土決戦に備え陸軍部隊が学校に駐屯していました。
 昭和20年8月15日突然の終戦で、軍国主義から180度変わり、自由主義・民主主義へと急激な変化と、今までの重苦しさから一度に開けた明るさとに戸惑いました。自由主義・民主主義は初めて知った社会制度でした。
 戦争では310万人の日本人が、世界では3千数百万の人命を犠牲にしました。戦争は集団の殺し合い・集団殺人です。終戦を機に日本人は今までの行為を深く反省し、二度とこの誤りを繰り返さないと世界に誓ったのが日本国憲法です。これが世界に誇る平和憲法です。
 自衛隊という既成事実をつくり、実状に合わないから9条に明記するとか。敵基地先制攻撃が必要だとか。第2次大戦前の情勢とよく似てきました。今が最も危険な時期だと思います。現憲法は世界に誇る平和憲法であることを、党派を越えて広く論議すべきです。
 先の衆議院選挙ではこの重大問題が論点になっていなかったのではないでしょうか。選挙が終わると国民不在で民意でない改憲論を持ち出してくる。憲法を守るのか、改憲か、平和か、戦争をする国にするのか、国民的世論として取り上げるべきです。次の参議院選挙では今の改憲論は最も危険な思想だと社会に知らせるべきです。

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「災害緊急事態条項」の不必要性
 自民党改憲4項目の「緊急事態条項」創設に関する金子勝氏(立正大学名誉教授)の論考(『憲法運動』506号)から、その要旨を2回に分けてご紹介しています。
金子 勝 氏 ②



 今日、大規模災害に関する緊急事態対処措置は現行の法律で整えられており、憲法に「緊急事態条項」を新設することは、屋上屋を架すことになる。現行の法律で対処できない時は、法律を改正して対処すればいいのである。災害対策のために日本国憲法に「緊急事態条項」を新設して、国民主権と民主主義、基本的人権、地方自治を制限しようとすることは、国民による救援行為や被災者・被災自治体による復旧・復興行為を制約することになり、逆効果をもたらす。
 内閣が緊急事態発生を理由に「緊急政令」を制定する場合、日本国憲法の下では、政令は「法律の委任がないと罰則を設けることができない」が、「緊急事態条項」下での緊急政令は、法律と同一という位置付けとなるので、自由に罰則を設けることができる。
 内閣は、「災害から国民の生命、身体及び財産を保護するための緊急政令」を制定し、徴用(労働強制)・徴発(物品取り立て強制)、都市封鎖、地域封鎖の措置を定めること、緊急政令と矛盾する憲法の条項は停止するという措置を実施することができる。基本的人権、地方自治、国民主権、裁判の停止を実行することができる。
 また、内閣は、「武力攻撃災害に対処する緊急政令」を制定し、「戒厳」の宣告を行うことができる。「戒厳」が宣告されると、軍が立法権や行政権や司法権を手中にして、国や地域を統治し、軍事独裁が実行できる。国民主権とそれに基づく民主主義の制限・剥奪(国会・内閣・裁判所の休止・廃止、選挙の休止・廃止、政党や団体の活動停止・解散)が可能となり、基本的人権の制限・剥奪(デモ・集会の禁止、外出禁止、SNSの禁止など)、地方自治の制限・剥奪が可能となる。軍による民衆虐殺や裁判なしの死刑が可能となる。
 21世紀は、世界各国の民衆の「反戦平和」「基本的人権尊重」「民主主義尊重」「地球環境保護」の思想と運動の高揚により、「対話」による紛争の平和主義的解決が主流となる時代であり、武力攻撃災害に対処する「緊急事態条項」は、時代錯誤で不用のものになる。時代錯誤のものを憲法に取り入れるのは、憲法の退歩をもたらし、憲法改正の趣旨(憲法の進歩)に反する憲法の改悪になる。
 改憲案は、「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる」としている。
 衆議院と参議院の全選挙区の選挙の実施が不可能となる大規模災害は起るであろうか。「東日本大地震」でも被災地は限定的であったように、自然界の非常事態は、日本列島の全国土で生じることはない。衆議院と参議院の全選挙区で選挙の実施が不可能となるような大規模災害が起ることはないのに、それが起るかのような虚言は、国民を脅して憲法へ「緊急事態条項」の取り入れを認めさせようとする謀略である。
 日本国憲法は、「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と定めているので、大規模災害の被災地の選挙区から選出される予定の議員が、一定期間欠員となっても、両議院は活動できる。日本国憲法では、国会議員は「全国民を代表する選挙された議員」であるので、大規模災害の被災地の選挙区から選出される予定の議員が、一定期間欠員となっても、被災地国民の声が国会に届かない事態はありえないはずである。その声が国会に届かないとしたら、それは国会議員の怠慢である。公職選挙法では、「天災その他避けることのできない事故により、投票所において投票を行うことができないとき、又は更に投票を行う必要があるときは、都道府県の選挙管理委員会は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない」とする「繰延投票」が定められている。
 もし、大規模災害による国会議員の任期の延長が可能となると、現議員による保身のための任期延長や与党議員による政権維持のための任期延長が可能となる。戦争のための任期延長も可能となる。国会議員の任期延長は、主権者国民の新たな議員を選出する権利(選挙権)及び新たに立候補する権利(被選挙権)の制約となり、国民主権の制約となる。
 緊急事態における国会議員の任期の問題は、日本国憲法の定める「参議院の緊急集会」の制度や衆議院・参議院の「議事を開く定足数(総議員の3分の1以上)」及び「議決の定足数(総議員の3分の1以上)」の制度、また、公職選挙法の「繰延投票」の制度で対処することができるので、改憲の必要はないと言うことができる。(この項おわり)

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【九条噺】

 「共産党は反対ばかり」と共産党を揶揄する声は聞いたことがあるが、いまは野党第一党の立憲民主党と野党共闘を貶めるために、「野党は批判ばかり」との声が意識的に流されている▼これに対して、いち早く、作家の平野啓一郎氏が、自身のツイッターで「コロナ対策が、どれだけ野党の提案に負っているか?」と問いかけ、「報道がすべきは、『野党は批判ばかり』というが、実際にはこれだけ野党の提案が政策に反映されており、また批判していたのはこれだけのどうしよもない腐敗があったからだと、整理し、示すことではないのか?」(原文ママ)と提言したと知り、私はよくぞ言ってくれたと感銘を受けた▼10月の総選挙結果についてもさまざまな論評があるなか、私がよくぞ書いてくれたと思ったのは、小塚かおる氏の「首をかしげたくなる立憲と共産共闘への集中攻撃」だ(【小塚かおるの政治メモ】)▼そこで、小塚氏は、野党第一党である立憲民主党の野党共闘への消極的態度・説明不足、自民党の野党共闘への脅威と連合の機を見極めない発言、「民主党」の案分票の問題と国民民主党議席増への冷静な分析などに触れている▼野党共闘は市民連合が提言した「共通政策」合意に基づく。「共通政策」や共闘の本気度が伝わった地域で勝利したが、合意の遅れがあり、全国的には国民に十分理解してもらえるに至らなかったのが選挙の敗因だと思う▼参議院選挙に生かすべき教訓はここにあるのではないか。(田)

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第91回「ランチタイムデモ」実施



 1月13日、第91回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が、寒気と強風の中50人の市民が参加して元気に行われました。14年6月23日から毎月1回実施され、91回目となったものです。
 今回のコーラーは、阪本康文弁護士でした。和歌山県のオミクロン株も含むコロナ感染者の増加に注意喚起も行われ、参加者は屋外でもマスクをして、和歌山市役所から京橋プロムナードまで、阪本弁護士のコールに合わせ、「憲法9条をまもれ」「戦争反対」などを訴えて行進しました。



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新年3日からスタンディング



 毎月3日にアピール行動を行っている和歌山県の有田共同センターは、新年1月3日もアピール行動を実施しました。
 有田川町役場下の交差点で午後1時から30分余りのスタンディングでしたが、クラクションを鳴らしてくれる車も多くありました。終了後、20人を超える参加者で、「2022年、9条守り切る!」の横断幕を持って記念撮影をしました。

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(2022年1月15日入力)
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