「九条の会・わかやま」 445発行(2022年02月16日付)

 445号が2月16日付で発行されました。1面は、「改憲ストップ 全県意思統一集会」開催① 憲法九条を守るわかやま県民の会、「自衛隊明記」は「自民党改憲草案」の先取り的改憲(金子 勝 氏 ④)、九条噺、2面は、第92回「ランチタイムデモ」実施、書籍紹介『哲さんの声が聞こえる』-中村哲医師が見たアフガンの光-  です。
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[本文から]
「改憲ストップ 全県意思統一集会」開催 ①
憲法九条を守るわかやま県民の会


(小田川義和氏)

 「憲法九条を守るわかやま県民の会」が呼びかけた「改憲ストップ! 草の根からの運動をつくる全県意思統一集会」が1月30日開催され、講演、方針案提起と意見交換が行われました。
 開会挨拶に立った「憲法9条を守る和歌山市共同センター」深谷登氏は「コロナで困難な一方で改憲の動きが急だ。首相は年頭挨拶で改憲推進を述べ、予算委員会開会中にも憲法審査会を開く動きなど、参院選挙までに改憲発議が現実化しかねない深刻な情勢だ。現状は苦しくても、かつて安倍改憲を止めた成果、勤評闘争や原発建設をさせなかった力を想起し、草の根からの運動が試される正念場に新署名運動を頑張ろう」と述べました。
 「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」事務局長・浅野喜彦弁護士は「ランチタイムデモへの協力に感謝する。改憲の動きが深刻だ。自民党改憲案は危険なのに、一般の人は安易に改憲を口にしている。現憲法は危機に対処できない古くて時代に合わないと言うが、市民社会はもっと知性的なはずだ。本集会を知性的な市民社会を醸成する機会にしよう」と訴えられました。
 続いて小田川義和氏(「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動」共同代表)がZOOMで「総選挙後、急加速する改憲暴走~その狙いと反撃の闘い強化に向けて」と題して講演をされ、次のように話されました。
 総選挙の結果、議席を急増させた維新が「参院選前の改憲発議」を唱え、国民民主が接近すると、自民は維新を改憲の先導役に利用、自公・維新・国民と衆院憲法審査会幹事らが「定例日に憲法審査会の安定開催」で合意、立民・共産に申し入れるに至った。
 これまで市民と野党の共闘は前進進化してきた。出発は14年の「総がかり行動実行委員会」結成。戦争する国づくりを進める安倍政権への危機感を共有し憲法理念実現で過去のいきさつを越えて他団体と大同団結し、最初の大規模共同行動を15年5月横浜臨港パークで開催。その後「戦争法の廃止を求める2000万人統一署名」(15~16年)と16年参院選で野党統一候補につながる市民連合と野党の政策合意、「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国署名」(17年~)を行い、19年参院選の1人区で野党統一候補が10勝して参院で改憲勢力が3分の2を割り20年施行を目論んだ安倍改憲を止めた。21年は共通政策合意、政権合意、候補者一本化の三点セットで総選挙に臨んだ。
 総選挙結果を受けて岸田首相は明文改憲に前のめりの姿勢を見せ、年頭には「改憲は本年の最大テーマ」と明言。緊急事態での国会機能維持は議論が必要、敵基地攻撃は自衛に限らないと実質改憲にも言及した。
 軍拡と改憲の背景にはアメリカの圧力があり、21年4月の日米首脳会談で「日米同盟をインド太平洋地域と世界の平和と安全の礎に、日本の防衛力強化、引き続き辺野古新基地をはじめ在日米軍再編、台湾海峡の平和と安定」で合意。「QUAD」「AUKUS」の対中包囲網参加、日豪地位協定、軍事費GDP1%枠撤廃、思いやり予算増額を行っている。また安倍前首相も集団的自衛権行使、敵基地攻撃力の保有を煽っている。
 日米安保条約はアメリカが日本を守る約束ではない。安保法制(戦争法)のもとで日米安保から英豪印仏独などと軍事ブロック化へ変質の動きと合同軍事訓練が加速している。(つづく)(柏原)

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「自衛隊明記」は「自民党改憲草案」の先取り的改憲

 自民党改憲4項目の「自衛隊明記」に関する立正大学名誉教授・金子勝氏の論考(『憲法運動』505号)から、その要旨を「緊急事態条項」に引き続き、2回に分けてご紹介しています。今回は2回目で最終回。

金子 勝 氏 ④



 9条2項のもとでは、「前項の目的を達するため」、即ち、全ての戦争と全ての武力による威嚇及び武力の行使の放棄を実現するため、陸海空軍という戦力(戦争に用いることを第一義的目的として作られている一切の武装人間集団と一切の物理的精神的実力のこと)とその他の戦力を保持しない、また、国の交戦権は認めない、としている。
 「その他の戦力」には、軍隊(外国でも国内でも人間を殺害し、土地や建物を破壊する武力組織)以外の、①軍需産業(兵器を生産する企業)とその製品(武器とその他の兵具)、②軍事企業(武力行動を販売する企業)とその保有する兵士及び武器、③軍事研究・軍事教育、④軍の名前や形は持たないが、陸海空軍に相応する実力を有し、何時でも陸海空軍に転化できる武力組織(例えば、警察予備隊、保安隊、創設【54年7月1日】時の自衛隊がこれに相当する)、⑤人間以外の軍隊(動物やロボットの軍隊)、⑥外国の軍隊(在日米軍)、⑦自他国の武器、⑧傭兵(買い取った兵士)などが含まれる。
 「交戦権」とは、国家が保有する戦争権のことだが、具体的には、①開戦権(「宣戦布告権」)、②講和権(戦争を終結し、平和状態を回復する権利)、③交戦国(戦争している国)の保有する戦闘権(攻撃権、占領地行政権、捕虜に対する権利、船舶の臨検・拿捕権など)で構成されている。
 2項では、「戦力」の不保持による「非武装主義」と「交戦権」の否認による「対話主義」が貫かれている。
 9条の基本原理とは、「非戦永久主義」(1項)と「非武装主義」及び「対話主義」(2項)から生まれる「非戦・非武装・対話・永久平和主義」に基づいて、個別的自衛権も集団的自衛権も、保有・行使しないで、国際紛争を対話的手段で平和的に解決する道の実践である。
 改憲案は、「自衛の措置をとるための実力組織として」「自衛隊を保持する」と明記することによって、自衛隊を軍隊としての自衛隊に昇格させる操作を行っている。
 これまで歴代の内閣は、自衛隊は自衛のため必要最小限度の実力であるから、戦力(自衛のため必要な最小限度を超える実力ではなく、軍隊ではないと言ってきたが、「実力組織」という表現の中には、自衛のため必要な最小限度という制約は存在しないから、従って、「実力組織」としての自衛隊とは、「軍隊」としての自衛隊という意味になる。
 そして、改憲案は、軍隊となった自衛隊について、(1)内閣総理大臣が、その自衛隊を単独で、直接に指揮する、(2)その自衛隊が行動するに当っては、在日米軍司令部の統制を受ける、としている。
 自衛隊法は、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」と規定しているから、内閣総理大臣の暴走的指揮を閣僚が阻止できる可能性が存在しているが、改憲案では、軍的自衛隊は、内閣総理大臣の御用軍であるから、内閣総理大臣の暴走的指揮は野放しとなっている。
 改憲案は、自衛隊の行動は法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」と規定している。自衛隊は、「日米安全保障条約」体制のもとでは、在日米軍の統制下にあるので、「その他の統制に服する」とは、自衛隊の「自衛の措置」として実行される軍事活動は、在日米軍司令部の統制を受けることの表現であると考えられる。
 改憲案は、自衛隊を「21世紀日米安全保障条約」体制を実行する対米従属軍に格付けしようとするものである。
 「個別的自衛権」と「集団的自衛権」を行使して自衛戦争や侵略戦争や制裁戦争を実行できる及び自衛目的・侵略目的・制裁目的の武力による威嚇又は武力の行使を実行できる軍的自衛隊が憲法に明記されれば、9条2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」は、転覆する。そうなれば、1項の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」も、転覆する。結局9条は、「戦争の放棄」の放棄となり、「戦争の保障」に代わることになる。「自衛隊の明記」に関する改憲案は、「日本国憲法改正草案」の先取り的改憲案となる。(おわり)

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【九条噺】

 書店に立ち寄った時、昨年NHKで放送された「コロナ新時代への提言2 福岡伸一×藤原辰史×伊藤亜紗」が書籍になっているのを見つけ購入した。書籍を読み、再度テレビの録画を見て、なお理解するのに難しいが、いろいろと教えられる▼この中で、歴史学者の藤原辰史氏が、アジア太平洋戦争中の日本や台頭期のナチスの言動にふれ、為政者・権力者による「分かりやすい、うっとりする言葉に警戒を」と話されている箇所がある▼最近の社会保障・社会福祉分野では、現政権から「全世代型社会保障改革」や「『我が事・丸ごと』地域共生社会」といった言葉での政策提起があり、ややもするとこれらの言葉(まさにうっとりする言葉)に引き込まれてしまう▼しかし、現政権のこれらの政策のベースになっている理念は、菅前首相の言葉を借りれば「自助、共助、公助」そして「絆」というものだ。そこでは何時の間にか、「権利としての社会保障・社会福祉」という考え方は後景に追いやられてしまう▼私の青年時代は、憲法に照らして人間らしい生活を問うた「朝日訴訟」を学び、「権利としての社会保障」という言葉にあこがれたものだが、いま「社会保障・社会福祉」に「権利として」という言葉を使うのがはばかられる社会になってしまうことを恐れる▼国民が、国や自治体に対して、社会保障・社会福祉の充実を求めるのは当たり前という社会こそ、憲法13条や25条が生きる社会だ。そういう社会をめざしたい(田)

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第92回「ランチタイムデモ」実施



 時おり強い風に見舞われた2月14日、第92回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が行われ、50人の市民が参加しました。
 この日のコーラー役は山﨑和友弁護士で、デモのコーラーは60年ぶりとのこと。コロナ禍の状況を踏まえ、コーラーはコールするが、参加者は唱和はしない「サイレントデモ」で行われ、参加者は和歌山市役所から京橋プロムナードまでを行進しました。

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書籍紹介 『哲さんの声が聞こえる』
- 中村哲医師が見たアフガンの光 -




 哲さんがアフガンの地から私たちに投げかけたのは、これからの未来を、光あるものにするのか、それともこのまま奈落の底に向かうのか、その岐路に立たされていることへの警告です。今、あなたが何歳であろうと、ここからの時間は未来のためにあります。哲さんは、もうこの世にはいないけれど、彼の声は今も私たちに問い続けています。
 その声を聞き、受け止め、それぞれの場所で少しでも光の方へ一歩を踏み出せるように、中村哲さんの思いを共に出来たら、と願ってこの一冊を綴りました。
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  著者:加藤 登紀子
  判型:A5判、208ページ  定価:1,700円+税
  発行年月日:2021年8月2日
  合同出版㈱ 〈TEL〉048-291-9412〈FAX〉048-291-9414

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(2022年2月16日入力)
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