「九条の会・わかやま」 447発行(2022年03月10日付)

 447号が3月10日付で発行されました。1面は、第93回「ランチタイムデモ」実施、みなべ「九条の会」126回目のピースアピール、立憲野党は総選挙で何を目指したのか ②(渡辺 治 氏 ②)、九条噺、2面は、憲法審査会での改憲政党の主張と問題点 飯島滋明氏(名古屋学院大学教授)の論考より、【予告】講演 清水雅彦氏(日体大教授・九条の会世話人)  です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

第93回「ランチタイムデモ」実施



 弥生3月と言いながら肌寒い7日、第93回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が行われ、50人の市民が参加しました。
 この日のコーラー役は浅野喜彦弁護士で、「ロシアによる武力の行使は容認できない」「ウクライナの人たちのことを思いながら歩きましょう」などの挨拶を受けて、参加者は和歌山市役所から京橋プロムナードまでを行進しました。

    ------------------------------------------------------------------------

みなべ「九条の会」126回目のピースアピール



 みなべ「九条の会」は3月5日、第126回目のピースアピールを実施しました。「ロシアのプーチン大統領がウクライナに軍事侵攻を始めました。主権国家に対する軍事侵攻は重大な犯罪です。国連総会ではロシアへの非難が集中し、様々な国から抗議が発せられています。ロシア国内でもウクライナ侵攻に対する反対デモが行われています。ロシア軍は、すぐに軍事作戦を中止し撤退をするべきです」と訴えました。

    ------------------------------------------------------------------------

立憲野党は総選挙で何を目指したのか ②
 12月19日、一橋大学名誉教授・渡辺治氏が「総選挙後の改憲をめぐる情勢と改憲阻止のたたかい」と題して講演をされました。その中から「立憲野党は総選挙で何を目指したのか」を『憲法運動』507号から要旨を2回に分けご紹介します。今回は2回目で、この項終り。次号は別項目。

渡辺 治 氏 ②



 確認しておかねばならないのは、この立憲民主党の立党の原点も、安保法制反対、憲法改正反対であった点です。市民と野党の共闘は課題を広げ、とりわけ安倍政権の、森友や加計学園、桜を見る会の問題などで、共同で運動を繰り広げるようになり、検察庁法改悪を断念させる成果を挙げます。
 新型コロナの蔓延で安倍政権が続けてきた新自由主義政治の矛盾が顕在化すると、立憲野党は国会での共闘を進化させ、予算の組み替え動議を出すまでに至り、政治を変える共闘へと発展をしたと言えます。今や、共闘は常態化し、共闘ができる15年以前では到底考えられない光景が生まれたのです。
 しかし、野党共闘は、政権を目指す合意には至りませんでした。総選挙が迫っている中でも、安保や自衛隊で大きく意見の違う政党同士が政権を作ることはできないというのがその理由でした。こうした事態は、菅首相が辞任を表明し、自民党総裁選が始まる9月、急速に動きます。総選挙に向け『政権を目指す共闘を』という声は、小選挙区単位に作られてきた市民連合からも起こりました。
 21年9月8日、市民連合の「衆議院総選挙における野党共通政策の提言」に立憲野党4党が合意したのです。提言冒頭には、20項目の共通政策を「実行する政権の実現をめざすことを求める」という文言が書かれ、野党4党はそれを受け入れ、「上記政策を共有し、その実現に全力を尽くします」と約束しました。こうして、これら共通政策を実行する政権をめざす合意が成立したのです。
 提言の第1の柱「憲法に基づく政治の回復」では、市民と野党の共闘の原点が改めて確認されました。「安保法制」の違憲部分の廃止、「コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する」という点です。そして提言には、軍事同盟強化、軍事的威圧によらない平和の構想が明記されていました。提言の第2は「平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う」と述べています。「総合的安全保障」というのは、武力だけによらないという意味です。大事なのは、「平和憲法の精神に基づく」平和という視点です。ここには、日米共同声明とは真っ向から異なる安全保障のあり方が示されています。
 さらに、9月30日になって、立憲民主党と共産党の間で、政権をめざす合意が成立しました。両党は、自公政権を倒し新しい政治を実現する、という点で合意し、先の市民連合の共通政策を実行するために政権でも協力をする、そのため、今度の選挙で候補者を一本化して闘うという合意です。
 こうして、総選挙ギリギリになって289の小選挙区の7割を超える207の小選挙区で候補者を一本化して闘う体制が出来上がり、『自公政権か野党共闘による政権か』という選択が求められる選挙となったのです。
 立憲野党は善戦健闘しましたが、自公政権を倒すという目標の実現はできませんでした。最大の要因は、自公政治を代えて野党連合政権の政治をといううねりを作れなかったことにあったと思われます。その原因は、『自公政治に代わってこんな政治をやる』という構想を国民の前に示すことが十分ではなかったことにあります。野党共闘の共通政策の合意は選挙前ギリギリで、共闘各党が一致して自公の政治にかわりこんな政治をやるという姿を訴える点でも弱さがあり、『野党共闘は野合だ』というマスコミの報道ばかりが先行する事態が生まれました。  政治の転換を求めるうねりは作れなかったものの、個々の小選挙区では、共闘勢力は奮闘し、いくつかのところでは比例の力関係を逆転して議席を獲得し、接戦に持ち込むなど、共闘は大きな力を発揮しました。
 野党共闘の成立により、289の小選挙区の実に7割——207の選挙区で候補者が一本化し、50の選挙区で共闘候補が勝利を収め、また多くの接戦区を作ったのです。(この項おわり)(憲法会議『憲法運動』507号より)

    ------------------------------------------------------------------------

【九条噺】

 「ニュークリア・シェアリング」という言葉が出てきた。何かと調べると「核兵器を共有する」ことだという▼2月27日、テレビで安倍晋三元首相が、ロシア・プーチン大統領のウクライナへの軍事侵攻・侵略に関連し、NATO加盟国のドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア、トルコが米国の核兵器を自国領土内に配備しており、「日本も現実の議論をタブー視してはならない。米国の核兵器を国内に配備し、日米共同で運用する『核共有』政策の導入について議論すべきだ」と主張した▼日本にも米国の核兵器を置いて、外国に核兵器で対抗せよということだ。ウクライナ危機に乗じて、核まで持てというのは、最悪の『力』対『力』のやり方であり、これを否定した国連憲章や憲法9条のもとで許されない議論だ▼NATO加盟国への核配備は核不拡散条約(NPT)締結前で、今はNPTで核配備を禁じている。それにもまして、日本には国是ともいうべき非核三原則がある。「核共有」はまさに「持ち込ませず」を踏みにじるものだ▼日本は戦争被爆国として核廃絶をリードする立場にある。核戦争の危機が高まっている今、日本は核を少しでも減らす軍縮のテーブル作りをすべき時だ▼多少の救いは、岸田首相が国会答弁で非核三原則堅持という我が国の立場から「核共有」政策の導入を明確に否定したことだ。安倍元首相には「引っ込んでおれ」と言いたいが、こんな話が二度と出ないように運動を強めなければならない。(南)

    ------------------------------------------------------------------------

憲法審査会での改憲政党の主張と問題点
飯島滋明氏(名古屋学院大学教授)の論考より


 衆議院憲法審査会(21年12月16日)で改憲勢力はどのような改憲項目を主張したのか、その問題点は何かをご紹介します。

(1)自民党

 新藤義孝議員は、「自衛隊の明記、緊急事態条項、合区解消・地方公共団体、教育充実の4テーマを、既にこの憲法審査会において議論のたたき台として提示をさせていただいております」と発言しました。

(2)日本維新の会

 馬場伸幸議員は、「日本維新の会は、……2016年3月、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の3項目から成る憲法改正原案を取りまとめました」と発言しました。足立康史議員は、「9条についてはいろいろな意見が出ておりますが、我が党はまだ具体的な案を出しておりません」としながらも「大変奥行きの深いテーマ」と発言しました。

(3)公明党

 北側一雄議員は「憲法審査会で今後論議すべきテーマについて、次の3点を提案をしたいと思います。まず第一に、緊急事態において国会の機能をどう維持するかというテーマ」、「第二に、デジタル社会における人権の保障と民主主義というテーマ」、「第三に、地球環境保全の責務というテーマ」と発言しました。憲法審査会については「国会会期中の週一回の定例日には憲法審査会を開催すべき」と発言しました。

(4)国民民主党

 玉木雄一郎議員は、「統治分野での憲法改正の必要のある項目として議論しなければならないのは、……緊急事態条項の議論をすべき」、「あえて申し上げれば、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下で憲法上の権利が制限され得る状態こそが危ないと考えます」と発言しました。そして「次に、人権分野に関しては、やはりデジタル時代のデータ基本権の議論を深めるべき」と発言しました。

◎「不要・危険・無駄」な自・ 維・公・国の改憲項目

 以上が自民党・日本維新の会・公明党・国民民主党が主張する改憲項目ですが、改憲4政党が主張する改憲項目は、①法律で対応が可能(環境権、データ基本権、教育無償化、参議院の合区解消)、②危険・無謀(自衛隊明記の憲法改正、緊急事態条項、憲法裁判所の設置、統治機構改革)、③税金の無駄遣い(国会議員の任期延長、オンライン出席等)と言えます。
(「戦争をさせない1000人委員会」HPより)

    ------------------------------------------------------------------------

【予告】
講演 清水雅彦氏(日体大教授・九条の会世話人)
岸田政権が狙う改憲をめぐる情勢と私たちの課題

「守ろう9条 紀の川 市民の会」第18回総会
4月9日(土)13時30分~16時20分 河北コミュニティセンター



会場へのアクセス→
http://www.city.wakayama.wakayama.jp/shisetsu/community/1000960.html

    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2022年3月9日入力)
[トップページ]