「九条の会・わかやま」 450発行(2022年04月29日付)

 450号が4月29日付で発行されました。1面は、コロナ対策に国家緊急権は不要(清水雅彦氏 ①)、「ロシアはウクライナから即時撤退せよ」 総がかり集会に1800人、九条噺、2面は、みなべ「九条の会」127回目のピースアピール、【予告】We Love 憲法~五月の風に~ 岸田政権下の改憲問題の新局面と市民 世界平和の危機の中 9条の役割を改めて考える 5月21日(土)13:30~  です。
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コロナ対策に国家緊急権は不要

 4月9日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第18回総会」が開催され、日本体育大学教授(憲法学)・清水雅彦氏が「岸田政権が狙う改憲をめぐる情勢と私たちの課題」と題して講演をされました。その要旨を4回に分けてご紹介します。今回は1回目。

清水雅彦氏 ①



 参院選後、衆院解散がなければ2025年まで国政選挙はない。参院選の結果次第では、改憲が現実のものになり、7月の参院選は大事な選挙になる。衆院選後、憲法審査会が活発に議論を始め、特に自民党は18年の4項目改憲案を中心に議論を本格的に進め改憲したいと考えている。「緊急事態条項」論はコロナの後に活発になってきた。
 05年の改憲案にはなかった緊急事態条項が12年改憲案に入ってきた。11年の東日本大震災で必要だとなり、改憲案に入れてきたものだ。12年改憲案では外部からの武力攻撃、社会秩序の混乱、大規模な自然災害、その他の事態に内閣が緊急事態の宣言を出し、内閣は法律と同じ効力を有する政令の制定が出来る。政令とは国会に関係なく内閣の判断だけで出せるものだ。国民は内閣の指示に従わねばならない。問題点は、その他の事態に何でも入ってくるので非常に危険だ。国会を無視して法律と同じ効力を持つ政令を出せるということは、ナチスがやったことが日本でも可能になる改憲案になる。
 その後18年の4項目の改憲案の一つが緊急事態条項だ。今回は大地震その他の異常かつ大規模な災害時に緊急事態宣言が出せるとする。条文を見ると緊急事態の想定がかなり限定されたようなイメージがあるが、64条2に選挙が出来なくなると、議員の任期の特例を決めて任期の延長が出来るという提案になっている。日本は任期の異なる二院制を取っており、参議院は半数改選なので、衆参両院の全議員の任期が切れるということはあり得ない。18年の改憲案でも政令でいろんなことが出来るとしており、政令政治になってしまうという問題点があるし、また、一部マスコミは自然災害に限定した改憲案だとしているが、これは有事法制の国民保護法の武力攻撃災害にも適用可能だ。これは自然災害に限定した改憲案ではなく、12年改憲案と変わらない問題点がある。
 緊急事態条項を憲法に入れることを国家緊急権というが、諸外国では、イギリスは条文としての憲法がない。アメリカには緊急事態条項がない。ドイツはワイマール憲法のもとで緊急事態条項をナチスが悪用した反省から、防衛事態認定は連邦議会が行い、憲法裁判所の統制もある。フランスでは発動されたのはアルジェリア危機の時一回だけだ。これらの国ではコロナ対応は法律でやっており、憲法の国家緊急権を使っている訳ではない。
 戦前の大日本帝国憲法には国家緊急権はあるが、特に緊急勅令が問題で、帝国議会で治安維持法改正が成立しなかった時に緊急勅令を使って法改正するなど、緊急勅令を乱発した。戦前の憲法に国家緊急権があったのに、日本国憲法に明示されていないのは戦前の反省から敢えて「沈黙」したと考えるべきだ。日本国憲法は54条2項で参議院の緊急集会の規定がある。新しい憲法の制定の議論をしている時に、担当大臣が戦前のことを持ち出して入れない方がいいと答弁し入らなかった。それぞれの事態に対応した法律が制定されている。改憲派はこれらの法律が不十分だと立証しなければならない。それをしないでイメージ的に国家緊急権が必要と言っている。
 コロナ対応は諸外国では法律で対応しており、国家緊急権を発動している訳ではない。憲法25条生存権で国は社会保障や公衆衛生をしなければならない。コロナ対応がうまく出来なかったのは憲法に書かれていることを政府がやってこなかった結果だ。全国の保健所の数がこの間約半分ぐらいに減らされている。故に昨年の自宅療養の医療放棄で人が亡くなる事態となってしまった。諸外国と比べ人口比では日本は医師の数やICUの数が少なく、25条に書かれたことをやっておれば、きちんとしたコロナ対応が出来た。改憲派は分かっていないのか、分かっていてウソをついているのか、そういうでたらめの議論は許してはいけない。
 「敵基地攻撃」論は、20年6月のイージス・アショア配備計画の停止後に安倍首相がこの議論を始めた。安倍退陣で菅政権に引き継がせようとしたが、20年12月の閣議決定で「引き続き政府で検討を行う」と先送りした。ただ、スタンドオフ・ミサイルとか12式地対艦誘導弾などの敵基地攻撃が可能な装備を今後備えていくとも言っている。
 「敵基地攻撃」論は、56年の国会答弁で船田防衛庁長官は、日本が攻撃された場合に「座して自滅を待つ」のは憲法の趣旨ではない。誘導弾の基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であると答弁している。59年の伊能防衛庁長官は、これらの事態は現実の問題として起こり難いので、平生から他国に脅威を与える兵器を持つことは憲法の趣旨ではないと答弁した。59年の答弁がその後維持され、「敵基地攻撃」は法理上可能だが、憲法の観点から政策的に採用しないことが維持された。2000年代に入り違う議論が出てくる。02年の福田官房長官の答弁では、ミサイルが日本に着弾する前に攻撃が発生したと認められるという見解を出した。03年の石破防衛庁長官はミサイル屹立段階で防衛出動が出来ると答弁をしている。50年代の答弁は相手が日本にミサイルを発射した後にミサイル基地を攻撃するというものだったが、2000年代の議論は相手がミサイルを発射しなくても、燃料注入やミサイル屹立の段階で基地を攻撃出来ると変わってきた。「敵基地攻撃」論をどう考えるかだが、政府の立場は防衛白書から引用すると、憲法と自衛権については自衛のための必要最小限の実力を保持することは憲法上認められるというものだ。保持出来る自衛力は自衛のための必要最小限度のものでなければならず、ICBMや長距離戦略爆撃機、攻撃型空母は持てない。専守防衛の定義は相手から武力攻撃を受けた時初めて防衛力を行使する受動的な防衛戦略だ。(つづく)

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「ロシアはウクライナから即時撤退せよ」 総がかり集会に1800人



 総がかり行動実行委員会は4月8日、「ロシアは侵略をやめろ、ウクライナから撤退を!日比谷集会」を行い、1800人が参加しました。社会民主党・新垣邦男衆議院議員、立憲民主党・鈴木庸介衆議院議員、日本共産党・小池晃参議院議員が挨拶し、沖縄の風・伊波洋一参議院議員のメッセージが紹介されました。  主催者挨拶を総がかり行動実行委員会・小田川義和共同代表が行い、「ロシアの蛮行を見て、私たちが立ち上がらない訳はない。国際法違反であり、許されない。敵基地攻撃能力保有、アメリカの核の共有、非核三原則の見直しなど政治が不当に煽っている。改憲、核保有、軍拡を認めさせないため、力を合わせよう。参議院選挙では、改憲派を3分の2割れに追い込もう」と呼びかけました。
 核兵器廃絶日本NGO連絡会、NO NUKES TOKYO共同代表の中村涼香さんは、「長崎出身で、核はいけないものと捉えてきた。核が使用されてしまえば、誰も助けに入れない。国家は、核兵器を使用しないように模索すべきであり、それを放棄するなど許せない」と訴えました。
 改憲問題対策法律家6団体連絡会の大住広太弁護士は、「憲法前文は、全世界の国民の平和的生存権を保障しているが、ウクライナでは守られていない。ウクライナ侵攻で、核共有の話が出ているが許すことはできない。憲法審査会が開催されているが、憲法を守らない政権に議論する資格はない」と批判しました。
 ベリス・メルセス宣教修道女会の弘田しずえシスターは、プーチンとロシア正教の関係や人権は普遍的であることなどについて述べ、ロシアと暗黒主義について批判しました。ピースボート災害支援センターの上島安裕さんは、ウクライナからの難民支援のためにルーマニアに入ったことについて話しました。
 総がかり行動実行委員会共同代表の藤本泰成さんが行動提起を行い、集会後、銀座をアピール行進しました。(憲法共同センターNEWS414号より)

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【九条噺】

 「ガジュマル」という木を見たことがない人も、その名を知っている人は多いだろう。種子島以南の東南アジアに分布するが、沖縄のイメージで、「ガジュマル」の語源は「絡まる」とか言われるが詳細は不明。沖縄では20mもの大木になり、老木には妖怪キジムナーが棲むという。妖怪と言っても沖縄の人に愛される妖怪だそうだ▼筆者宅には「ガジュマル」の鉢植えがある。買った時は30㎝もなかったのに、今や2mにもなっている。気温5度以下では越冬できないので、冬は室内に取り込む。これ以上大きくできないので毎年剪定して2mに抑えている▼常緑樹で殆ど葉を落とすこともない。気根もかなり伸びて、「ガジュマル」らしくなっている▼「ガジュマル」と言えば井上ひさしさん原案の「木の上の軍隊」が思い浮かぶ。日本兵2人が「ガジュマル」に登り米軍包囲の中で身を潜めていた。島出身で島の平和を願う新兵を「沖縄」の、本土出身で戦争教育を受け国家を背負う上官を「日本」の象徴とした沖縄と本土の関係を投影した作品だ▼山田洋次監督は「父と暮らせば」「母と暮らせば」とともに戦後「命」の三部作と語る。「父と暮らせば」では、死者の亡霊を原爆の地獄の中で焼き殺された父と生きている娘のドラマに作り上げた▼重い主題なのに、ユーモアを交えながら軽く楽しく見ることができる。こんな作品を書けるのは井上さんが天才だからだと山田監督は語る。井上さんを思い出しながら「ガジュマル」を見る。(南)

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みなべ「九条の会」127回目のピースアピール



 みなべ「九条の会」は4月9日、第127回目のピースアピールを実施しました。今回は署名行動もしようと通行する人たちに署名を呼びかけました。
 ロシアによるウクライナへの侵略から1カ月以上が経ちました。戦争の映像を見ると心が痛みます。ロシア軍は、すぐに撤退すべきです。日本では、この侵略を口実に、「9条で国は守れるのか」「力を信奉する相手には力でしか対抗できない」と、9条の破壊と改憲を一層推し進めようとする言動が勢いを増しています。軍事力と軍事同盟の強化は軍事対決・挑発を激化させ国際社会を分断させるだけで、平和に寄与することは出来ません。9条を持つ日本政府の責務は、ロシアの侵略に反対し、紛争を武力によらず解決する枠組みを作るために各国に働きかけることですと訴えました。

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【予告】We Love 憲法 ~五月の風に~
岸田政権下の改憲問題の新局面と市民
世界平和の危機の中、9条の役割を改めて考える
5月21日(土)13:30~ プラザホープ




詳しくは→ http://home.384.jp/kashi/9jowaka/tirasi/22welove.htm

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(2022年4月29日入力)
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