「九条の会・わかやま」 452号 発行(2022年05月21日付)

 452号が5月21日付で発行されました。1面は、「2022憲法大集会東京」に1万5千人、北朝鮮・中国を巻き込んだ安全保障の仕組みを作ることが大事(清水雅彦氏 ③)、九条噺、2面は、第95回「ランチタイムデモ」実施、憲法記念日に街宣とチラシ折り込み みなべ「九条の会」  です。
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「2022憲法大集会東京」に1万5千人



 日本国憲法施行から75年を迎えた憲法記念日の3日、憲法大集会が東京都江東区の有明防災公園で開かれ、1万5000人(主催者発表)が参加した。過去2年はコロナ禍で中止され、「5・3」に結集するのは19年以来3年ぶり。改憲派がロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、戦争放棄をうたう9条の改正論を声高に叫ぶ中、「今こそ憲法を守れ」と声を合わせた。
 集会では、マスク姿の参加者たちが「憲法改悪に反対します」などと書かれたプラカードを掲げた。ロシアのプーチン大統領をこき下ろすプラカードも目立った。
 主催者を代表して平和団体代表の藤本泰成さんは「9条を『非現実的』という人に『敵基地攻撃能力や核保有で国民の命を守れるのか』と問いたい。国民生活を圧迫し、平和が壊れるだけだ」と批判した。
 「残念ながら9条は戦後最大の危機を迎えている」と訴えたのは、国会の憲法審査会の傍聴を続ける大江京子弁護士。「市民の尊い犠牲の末、戦争の惨禍を起こさせないと誓い、日本国憲法を定めた。この決意を捨てさって良いわけがない」と呼びかけた。
 上智大の中野晃一教授(政治学)は「戦争を防ぐには抑止力と、先に攻めるつもりがないというメッセージが重要。9条をなくせば抑止力に頼るしかなくなり、無限の軍拡につながる。9条を守ることが安全保障につながる」と強調した。  集会後、参加者はシュプレヒコールを上げながら周辺をデモ行進した。(「東京新聞HP」5月3日付より)

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北朝鮮・中国を巻き込んだ安全保障の仕組みを作ることが大事

 4月9日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第18回総会」が開催され、日本体育大学教授(憲法学)・清水雅彦氏が「岸田政権が狙う改憲をめぐる情勢と私たちの課題」と題して講演をされました。その要旨を4回に分けてご紹介します。今回は3回目。

清水雅彦氏 ③



 ロシアのウクライナ侵攻で考えなければならないのは、米ソ冷戦が終った後にワルシャワ条約機構は解体し、NATOも解体すべきだというのに、残っただけでなく、アメリカはロシアを敵視してNATOに旧東欧諸国をどんどん組み込んでいった。ロシアを含む安全保障の枠組みを作らなかった結果のひとつがウクライナ侵攻であり、もちろんロシアがやっていることは絶対許されないが、アメリカなどの責任も問われる。そうであれば、アジア地域で北朝鮮・中国を含む安全保障の枠組みを作らなければいけないということになる。北朝鮮のミサイル発射、中国の脅威論を言っているだけでは、何の解決にもならない。北朝鮮・中国を敵視するのではなく、北朝鮮・中国を巻き込んだ安全保障の枠組みを作るということをウクライナ侵攻から学ばなければいけないと思う。
 ロシアのウクライナ侵攻と国連憲章との関係では、憲章2条が原則を定めている。国際紛争の平和的手段による解決があるし、武力による威嚇、武力行使は慎まなければならないという原則もある。自衛権行使を認めているが、ウクライナもNATOもロシアを攻撃している訳ではないので、個別的自衛権で説明するのは無理だ。ロシア以外の国が国家として認めていないドンバスの両「人民共和国」を守るという理由で集団的自衛権行使をするのも国際法的には無理がある。また、オリンピック休戦協定がロシアも共同提案国になって採択したのに、この期間中に侵攻したのは大問題だ。核兵器禁止条約との関係では、唯一の戦争被爆国である日本が率先して批准し、ロシアのような核保有国を包囲していかねばならないと思う。注意すべきは、これを改憲に結び付けようという日本での議論があることだ。ロシアは2つの国にいるロシア系住民の保護のために軍隊を出したと正当化する。これにつながりかねない自民党の改憲案があり、05年の改憲案は自衛軍を設置するとなっているが、自衛軍は国と国民の安全を確保するとする。自衛隊法3条では自衛隊は国の安全を保つ組織だ。基本的に自衛隊の活動範囲は国内に限定されるが、国民の安全を保つための組織とすると海外にいる国民の安全を保つために自衛隊を海外に出す口実に出来る。そういう意味で要注意だ。
 12年の復古的な改憲案を出した時の自民党総裁・谷垣氏は、中央公論に国家秘密保護法案への反対論を載せた。リベラルな人物だったのだろうが、岸田首相が同じ宏池会と期待する人もいるようだが、宏池会も含めて自民党は右傾化したと見るべきで、期待すべきではない。
 集団的自衛権はウクライナ侵攻でも活用し得るが、国連憲章のもとになった44年のダンバートン・オークス提案は集団的自衛権を明記していなかった。中南米諸国が明確に保障されないと不安だと主張し始め、アメリカ主導で国連憲章に入れた。しかし、米ソ冷戦が始まると集団的自衛権の規定を使ってNATOやワルシャワ条約機構を作っていく。当初の集団的自衛権は小国が攻められた場合に同盟国に守ってもらうというイメージだったが、米ソ冷戦が始まると大国主導で軍事同盟を作っていく。さらに、その行使の実態はベトナム戦争、湾岸戦争、ソ連東欧侵攻や今回のウクライナ侵攻もそうだが、主に大国が小国に攻め込む場合に集団的自衛権を使って正当化してきた。安倍元首相などは国連憲章で集団的自衛権は認められているから日本も行使すべきだと言うが、加盟国は国連憲章全部を履行する必要はなく、例えば永世中立国のスイスや軍隊のないコスタリカなどは集団的自衛権を行使する訳はない。各国の憲法や政治的判断でどうするか決めればいいだけの話だ。国連憲章に書かれているから行使すべきだということにはならない。私は米ソ冷戦からは、国連憲章から集団的自衛権を削除し、軍事同盟をなくすべきだと考える。
 憲法9条は無力か。非武装だと他国から攻められるという議論があるが、世界には26の軍隊がない国がある。これらの国はどこかから攻められているのだろうか。軍事行動を行うにはそれなりの理由があるのであり、日本は国内でロシア系住民に対して迫害をしたのか、自衛隊がロシア領土を占拠しているのか、そういうことはないのだから、ロシアがいきなり攻めてくるということはあり得ない。北朝鮮のミサイル発射もアメリカを交渉の窓口にするためであって、日本に本気で打ち込むためにやっている訳ではない。外交関係さえきちんとやっておれば、北朝鮮、中国、ロシアが突然日本に攻めてくる訳はない。非武装であれば攻められるという抽象的な議論、妄想は間違っている。
 この間、攻められたら戦わなければいけないという議論が行われているが、ウクライナでは大統領の指示で男性は国外に出て行けないとなっている。本来はウクライナ国民それぞれが、戦うのか逃げるのかを判断するべきで、一律に命令を出すのはどうかと思う。自分の身を守るために逃げても非難する人はいない。国家間のことになると、攻められたら国民は戦わねばならないという議論になるのはおかしいと思う。仮に日本が他国から攻められた場合、日本を守るために戦うのか逃げるのか領土を差し出すのかは、それぞれの人間が判断すべきで、必ず戦わねばならないという議論をするのはおかしいと思う。やはり、相手に屈服するのは問題があるとはいえ、犠牲者を最小限にするという点ではひとつの選択肢だし、時間がかかっても国際世論を背景にした抵抗活動を含めた戦い方は選択肢のひとつとしてあり得ると思う。
 核共有論が出て来ているが、日本も核を持ってしまえば人類の死滅につながる。核を使わない、戦争をしないという予防措置こそが大事なのであり、北朝鮮・中国を巻き込んだ安全保障の枠組みを作ることが大事で、日本も防衛費を増やすとか、核共有するとかいうことではないと思う。(つづく)

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【九条噺】

 プーチン大統領はロシア、ウクライナ、ベラルーシを「三位一体の民族」とし、ウクライナの独立を否定する大国主義、覇権主義の主張を展開している。かつての帝政ロシア復活の野望だ▼これは戦前、日本が台湾、朝鮮半島を植民地とし、満州に傀儡国家を作って支配したのと同じではないのか。当時の日本国民の多くは軍部の情報を信じ込まされ、正しいと思っていた▼今のロシア国内も同じような状況にあるのだろう。ウクライナで暮らすロシア人は「ロシアの親族からウクライナは間違った方向に進んでいるというメッセージが届いた。もう付き合い切れない」「ロシアは蛮行に手を染めておいて、『ウクライナがやった』とどんな神経で言えるのか。ロシアを捨て去りたい」と話している▼ロシアから約388万人が国外に出たという。国内で反戦を訴える勇気ある人もいるが、当局の報復や拘束の恐れがあり、15年の禁固刑の可能性があるという▼戦前の日本も、国民の全てが騙されていた訳ではない。日本の侵略に反対し、平和を訴えた人たちは治安維持法で徹底的に弾圧され、拷問で命を落した人も多い。治安維持法犠牲者の命をかけたたたかいによって、憲法9条が出来たと言っても過言ではない▼この人たちに報いるためにも、プーチン大統領のウクライナ侵略を止めるために、日本は憲法9条を中心に非軍事の外交を推進し、国連憲章に基づく結束した国際世論の力でロシアを包囲し、強く迫ることに尽すべきだ。(南)

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第95回「ランチタイムデモ」実施



 朝から曇り空が続きやや肌寒い5月16日、95回目の「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が、50人の市民が参加して実施されました。
 今回のコーラー役は戸村祥子弁護士でした。デモはサイレントで実施されました。戸村弁護士自身はコーラーとしてのコールを行うということで、「戦争する国づくりに反対」「平和を守ろう」「憲法9条は世界の宝」などのコールを行いながら、参加者は和歌山市役所から京橋プロムナードまでを行進しました。



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憲法記念日に街宣とチラシ折り込み
みなべ「九条の会」




 5月3日、みなべ「九条の会」は地方紙へのチラシ折り込みと街宣活動を、手を振ってくれる親子に励まされながら町内全域で行いました。「今日は75回目の憲法記念日です。2月にロシアのウクライナ侵略が始まり2カ月以上がたちました。ロシア軍は直ちにウクライナから撤退すべきです。『9条で日本を守れるか』の声がありますが、軍事力の強化は軍事的対決を激化させるだけです。9条の精神を世界に広めることが世界平和実現に大切です」と訴えました。(平野憲一郎さんより)

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(2022年5月21日入力)
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