「九条の会・わかやま」 453号 発行(2022年05月31日付)

 453号が5月31日付で発行されました。1面は、「We Love 憲法 ~5月の風に~」開催、憲法への自衛隊明記は「壊憲」と言うべきだ(清水雅彦氏 ④)、九条噺、2面は、「大軍拡とめろ!官邸前月曜連続行動」2回目実施、軍隊のない26の国家とは  です。
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[本文から]

「We Love 憲法 ~5月の風に~」開催



 5月21日「We Love 憲法 ~5月の風に~」が和歌山市で開催されました。
 坂本文博氏が「ロシアのウクライナ侵略に乗じて、敵基地攻撃能力強化や核兵器共有が必要、憲法9条を捨てろなどの大合唱が起っている。軍事対軍事では平和は生まれない。日本は、東アジアの平和の枠組み構築の先頭に立つべきだ」と挨拶をされました。
 渡辺治氏は「岸田政権下の改憲問題の新局面と市民」と題して講演をされました。
 憲法9条は自衛隊の活動に集団的自衛権行使禁止、海外派兵禁止という大きな制約を課していた。それを安倍は14年の政府解釈改変と15年の安保法制制定強行で9条破壊の新段階へ持ち込み、17年5月自衛隊明記など改憲4項目で明文改憲へ踏み込んだが、市民と野党の共闘が野望を挫折させた。菅はバイデン政権の対中軍事対決に合わせた9条実質破壊を加速させた。岸田は政権獲得のために、改憲の政治継承のタガをはめられてしまった。岸田政権が改憲策動を活発化させた要因は、①総選挙で維新の伸長により改憲勢力は3分の2の議席を維持した。②1月7日の日米「2+2」共同発表の実現のために、中国の脅威への共同の「抑止」、日本の防衛力の「抜本的強化」、「専守防衛」見直しを行う必要が大きくなった。それで「敵基地攻撃能力」保有へ進んでいる。戦争や侵略は突然起こるものではない。日本が戦争に巻き込まれる危険は台湾有事への集団的自衛権行使、尖閣武力衝突だけだ。国連改革が必要だ。日本は9条を持ち、戦後外国に武力で侵攻したことはない。イニシアティブをとれる国は日本だけだ。と話されました。
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渡辺治氏の講演要旨は次号以降に掲載予定

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憲法への自衛隊明記は「壊憲」と言うべきだ

 4月9日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第18回総会」が開催され、日本体育大学教授(憲法学)・清水雅彦氏が「岸田政権が狙う改憲をめぐる情勢と私たちの課題」と題して講演をされました。その要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は4回目で最終回。

清水雅彦氏 ④



 9条改憲は、1・2項を変える議論も、2項のみを変える議論もある。圧倒的多数は最低限2項を変えるものだ。2項を変えないと軍隊を持てないので、2項を変えたいと考えてきた。17年5月3日安倍首相が突然1・2項をそのままにして自衛隊を書き込む提案をした。これは世論の力によって改憲派の議論が後退したので、そういう提案をせざるを得なかった訳だ。
 18年に自民党は9条加憲案をまとめた。これは非常に巧妙に出来ている。必要最小限度という文言を削除し、自衛隊の活動に歯止めがなくなるものだ。9条の2の1項では必要な自衛の措置をとるとなっている。必要な自衛の措置とは自衛権のことだ。自民党が自衛権と言う場合は集団的自衛権が含まれる。15年の戦争法は限定的な集団的自衛権の行使だったが、18年の改憲案は全面的な集団的自衛権という内容になっている。
 改憲案では首長たる内閣総理大臣は自衛隊の指揮監督権を有するとするが、現行法では内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有するとする。「代表して」とは閣議決定を前提にしている。「首長たる」とは閣議決定を前提としないことだ。安倍首相は自衛隊を書き込むだけで何も変わらないと言うがこれはウソだ。18年改憲案が実現したら内閣総理大臣の判断で海外にいる国民を守るために自衛隊を海外に出せるし、戦争法と違い全面的な集団的自衛権行使が可能になる。憲法に自衛隊を書くと自衛隊を違憲と言えなくなる。多くの国民は自衛隊を合憲と考えるが、憲法研究者は自衛隊違憲が多数だ。専門家が自衛隊を違憲と言うのでマスコミや野党が専門家は違憲だと言っていると追及する。政府は常に自衛隊は9条に反しない、戦力ではない、専守防衛に徹する、集団的自衛権行使はしない、海外には出さないと説明が必要となる。違憲論がなくなれば、こういう歯止めがなくなる。
 法学の後法優先の原理からしても9条2項は残っても空文化することになる。この案は「壊憲」というべきだ。こういう改憲によって戦争法が正当化され、自衛隊は国会や内閣と並ぶ憲法上の存在として正当化される。
 安倍首相は、憲法の平和主義は受動的・消極的平和主義だから、これを能動的・積極的平和主義に変えるべきだと言う。その中身は非核三原則・武器輸出禁止三原則の見直し、秘密保護法制の整備、集団的自衛権行使容認などで、安倍政権はこの提言通り着々と進めてきた。中身を見れば積極的軍事主義と言える。「消極的平和」は何かをしないことで得られる平和であり、まさに9条の戦争をしない、軍隊を持たないがこれに当たる。「積極的平和」は貧困、飢餓、抑圧、疎外、差別などの構造的暴力をなくそうという考え方だ。これは憲法前文の専制、隷従、圧迫、偏狭、恐怖、欠乏の構造的暴力に該当する概念で、これをなくそうという立場に立っている。平和的生存権は、権利主体を日本国民にせず、全世界の国民にしている。日本国民さえ戦争と貧困がない状態で暮らせばいいという一国平和主義ではない。だが12年改憲案はここに引用した前文は全部削除だ。削除は許してはいけないし、日本は平和政策を展開すべきだ。憲法の平和主義は9条だけでなく、前文についても注目すべきだ。
 4項目改憲案の合区解消は、合区は評判が悪いから、選挙区で1人を選べるようにしようというものだ。都市部の定数を増やす、比例一本にするという解決方法もある。定数不均衡も合区の問題もなくなるので、憲法を変える必要もない。教育充実は国際人権規約で中等・高等教育の漸進的無償化規定があるのに自民党は留保している。民主党政権の高校無償化すらバラマキと言った自民党が高等教育無償化などやる気はなく、維新のために言葉を入れただけで、高等教育無償化という表現すらやめてしまった。26条3項で教育を国の未来を切り開く上で極めて重要という文言を入れており、国家の教育への介入を正当化する問題点がある。無償化だけなら憲法を変えなくても出来るので、こんな改憲は全く不要だ。  改憲反対の運動は、私は「労組と市民と野党の共闘」という言い方を使っている。14年「総がかり行動実行委員会」は3団体により結成された。平和フォーラムが中心の1000人委員会、憲法壊すな実行委員会、憲法共同センターの3団体によって作られたのが「総がかり行動実行委員会」だ。連合と全労連に分裂していたのが、また一緒に出来るようになった。平和フォーラムが安倍政権に対抗するには自分たちだけでは難しいと認識を変え、「総がかり行動実行委員会」結成につながった。中央は統一集会が実現し、民主党国会議員も参加するようになった。16年の補欠選挙や19年参院選の1人区で野党共闘が実現した。組織されていない人は3つバラバラだと参加し難いが一緒になったから参加しやすくなった。15年8月の国会周辺の行動には12万人が集まることになった。中央は共闘が出来たが、労組の対立が残っている地域では、共闘体制は出来ていない。法律家や市民団体が労組間の接着剤の役割を果たして、共闘体制を作っていかないと自民党には対抗出来ない。共闘体制が出来た16・19年の参院選では結果が出ている。複数区は調整しないので、関西中心に野党が共倒れをした。今年の参院選では複数区も野党は一定の調整をすべきだ。一本化しなければ野党はもっと議席を減らす。課題は、自民党は権力を握るために大同団結が出来るのに、左翼リベラルは対立、分裂を繰り返して多数派を形成出来ないことだ。自分たちがマイノリティーだという自覚が足りないことだ。批判勢力としての存在意義はあるが、法律を作ろうと思えば多数派でなければならない。大同団結していくべきだ。参院選挙では自分たちの議席を増やすだけで満足するのではなく、協力してまとまるように働きかけてほしい。(おわり)

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【九条噺】
 日本維新の会は、表面的には自公政権批判のそぶりを見せるので、自公政権と立憲野党の間に位置する改憲勢力かと思っていたが、とんでもない間違いで、自公政権より右側に位置する悪政推進の突撃隊だと分かった▼改憲に関する維新の言行を見ると、「憲法審査会をボイコットする立憲、共産を待っていても議論は進まない。参院選までに改正案を固め、参院選と同時に国民投票を実施すべきだ」(松井一郎代表)▼「憲法審査会で、どんどん色々な項目について議論を深め、議論が整えば採決し、発議するかどうか決めていく」(馬場信幸共同代表)▼「幾ら開催することに意義があると言っても、同じような内容ばかりいつまでも意見表明していても、国民の皆様からお叱りを受けるように思います」(三木圭恵衆院議員)▼「専守防衛という考え方で本当に日本は守れるのか。9条に全て行き着くので、9条の改正が重要だ」(吉村洋文大阪府知事)▼維新の発言は他に山ほどある。憲法審査会には与野党を超え合意に基づき運営する慣例(中山方式)があるのに、与野党合意に基づき真面目にしっかりと議論するのではなく、「憲法改正は当り前だ。とにかく早く改憲せよ」の一点張りだ。さらに最近は、防衛費GDP比2%、憲法9条改正、緊急事態条項制定、「非核3原則見直しと核共有」まで主張している。これは9条をなくして、核武装せよということだ。こんな危険な勢力は参院選で叩き落さなければならない。(南)

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「大軍拡とめろ!官邸前月曜連続行動」2回目実施



 「総がかり行動実行委員会」は5月23日夜に16日に続き、「大軍拡とめろ!官邸前月曜連続行動」の2回目を行い、200人が参加しました。アメリカのバイデン大統領が来日し岸田首相との会談が行われ、岸田首相は、日本の防衛力を抜本的に強化することを強調しました。アメリカと一緒に戦争する国づくりと改憲策動を止めるため、全国各地で宣伝を強めることが重要になっています。行動では、立憲民主党・石垣のりこ参議院議員、日本共産党・井上哲士参議院議員があいさつし、社民党・福島みずほ参議院議員からのメッセージが紹介されました。
 「総がかり行動実行委員会」共同代表の藤本泰成さんが主催者あいさつを行い、「政府はロシアのウクライナ侵略を口実に、平和国家であるのに憲法9条の理念を放棄し、軍備を拡大して市民を危機に追い込もうとしているが許されない」と強調。「官民での共同訓練が提起されており国家総動員法を思い起こす。子どもたちの自由が奪われ、学びの場から戦争協力の場に駆り出された。改憲派は9条を変えようとしており、大政翼賛会のような組織がつくられつつある。いつか来た道に戻らないよう声をあげつづけよう」と訴えました。
 医療制度研究会副理事長の本田宏医師は、「コロナ禍であるにもかかわらず、3月25日に都立病院廃止条例が可決された。日本公的病院は20になっているが、厚労省は公的病院の廃止・統廃合の計画を撤回していない。日本の1人あたりの社会保障支出額は世界最低レベル。軍事費を増額してばかりいると国民が生きていけなくなる。そうしてはならない」と訴えました。
 宗教者や「総がかり行動実行委員会青年PT」の代表も発言し、「憲法9条を壊すな実行委員会」の菱山南帆子さんが行動提起を行いました。(「憲法共同センターニュース」5月24日号より)

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軍隊のない26の国家とは

アイスランド、アンドラ、キリバス、クック諸島、グレナダ、コスタリカ、サモア、サンマリノ、セントクリストファー・ネービス、セントビンセント・グレナディーン、セントルシア、ソロモン諸島、ツバル、ドミニカ、ナウル、ニウエ、パナマ、パラオ、バチカン、バヌアツ、マーシャル諸島、ミクロネシア、モーリシャス、モナコ、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク

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