「九条の会・わかやま」 456号 発行(2022年07月15日付)

 456号が7月15日付で発行されました。1面は、改憲派が3分の2超を占める参院選挙結果 市民と野党の共闘で改憲阻止のたたかいを、日米軍事同盟強化がなければ日本の安全 アジアの平和は実現できないのか(渡辺 治 氏 ③)、九条噺、2面は、第97回「ランチタイムデモ」実施、東京で初めての九条の碑完成 平和への願いを込め輝く球状  です。
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[本文から]

改憲派が3分の2超を占める参院選挙結果
市民と野党の共闘で改憲阻止のたたかいを


 参議院選挙の結果、引き続き参院でも改憲派が3分の2以上の議席を占める結果となりました。衆院では「改憲勢力」の自民党と日本維新の会、公明党、国民民主党の4党が、3分の2以上の議席を占めていました。参院も6月22日の公示前勢力でぎりぎり3分の2を超えていました。今回の選挙結果、3年間国政選挙のない、改憲勢力が好機と受け止める「黄金の3年間」に入り、改憲派が改憲を政治日程に乗せる動きを具体化させる危険な状態となりました。
 選挙期間中、自民党は、公約で改憲4項目を提示し「衆参両院の憲法審査会で改正原案の国会提案、発議を行い、国民が意思表示する国民投票を実施する」と掲げました。維新の会も「憲法改正に正面から挑み」「9条に自衛隊を明記する」「緊急事態条項を創設する」。国民民主党は「緊急事態条項の創設」、9条は「議論を進める」としました。公明党は「憲法9条1項、2項は今後とも堅持する」としつつ、「別の条項で自衛隊の存在を憲法上明記すべしとの意見がある」とし、これまでの「慎重に議論」から「検討を進める」へと表現を進め、一歩改憲に踏み込みました。
 一方、立憲野党は反対の論陣を張りました。立憲民主は、現憲法の基本理念と立憲主義に基づき「論憲」を進めるが、自民党の自衛隊明記案は「反対」。共産党は「9条改憲に反対。憲法の前文を含む全条項を守る。特に平和的民主的諸条項の完全実施を目指す」としました。また、社民党の福島瑞穂党首は参院選で護憲を訴え続け、れいわの山本太郎代表は25条などが「守られていない」と主張し、「変える前に、まず今の憲法を守ったらどうか」と訴えました。
 自民党の茂木幹事長は「出来るだけ早いタイミングで改憲原案を国会で可決したい」と述べ、主要政党間で改憲への日程共有を進める考えを示し、維新の藤田幹事長も、早期改憲の意欲を強調しました。
 市民と野党の共闘を一層強化し、何としても改憲阻止に奮闘しなければなりません。(「憲法しんぶん速報版」より)

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日米軍事同盟強化がなければ日本の安全、アジアの平和は実現できないのか

  5月21日「We Love 憲法~5月の風に~」が開催され、一橋大学名誉教授・渡辺治氏が「岸田政権下の改憲問題の新局面と市民」と題して講演をされました。要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は3回目。

渡辺 治 氏 ③



 菅は安倍と異なり国民に危機を煽り、敵基地攻撃能力を通すことは嫌いなのだ。コロナで支持率も上がらない。そんな中で敵基地攻撃能力という憲法に穴をあけることをやったら、もたないので菅はそっとスタンド・オフ能力という言葉で閣議決定し、21年度予算に入れたが、菅もコロナで倒れてしまった。岸田政権は、安倍の宿題の9条改憲と敵基地攻撃能力保有や軍備の拡大を求められて登場した。しかし、岸田政権は登場する時に大きな難関を抱えていた。それは安保法制に反対する市民と野党の共闘が作られ、安倍改憲反対市民アクションが作られ、先の総選挙の時に自公政権に代わる野党連合政権の合意をするところまで行った。岸田政権はこの勢力とたたかい、政権を維持しなければバイデンに言われた日米軍事同盟強化と改憲の実行はおぼつかない、日米軍事同盟そのものが危うくなるという状況の下で選挙戦に臨んだ。総選挙後、岸田政権は一気に改憲策動を活発化させた。自民は議席を減らしたが、維新が41議席を取ったので改憲勢力は334議席となり、3分の2を確保することが出来た。総選挙後にわかに維新は9条改憲も含め改憲問題に積極的に取り組むようになった。また市民と野党の共闘の一翼として憲法審査会で立憲・共産と一緒になって安倍改憲に抵抗してきた国民民主が選挙後に共闘から離脱を表明、審査会の毎週開催を主張し、与党協議会に維新とともに参加するようになった。それまでは立憲野党が審査会で頑張ったために安倍政権は7年8カ月の間、衆院で3分の2を取っていたのに、衆院の審査会はほとんど開くことが出来なかった。しかし、今の通常国会では13回も開いている。これが岸田政権を後押しする第一の要因になっている。
 第二の要因はアメリカの圧力が一層強くなった。バイデン政権が本格的に中国との軍事対決を強め、圧力が加わってきた。1月7日の日米2+2の共同発表で、敵基地攻撃能力保有を約束すると言わざるをえなくなった。ミサイルの脅威を打ち破る弾道ミサイルを日本が持つということだ。先制攻撃で敵の司令部を攻撃しなければ敵のミサイル攻撃は防げない。敵の司令部とは北京だ。そんなところに対抗するとなれば攻撃能力を飛躍的に高めなければならない。それを付け足すことを約束させられた。岸田政権はウクライナの遥か前からこの問題で憲法破壊と敵基地攻撃能力保有に乗り出していた。そこにウクライナ問題が起きた。2月27日に国務長官と外務大臣が侵略は欧州にとどまらず、アジアにも関係があるので、日米共同の抑止力と対処力を持たなければならないという約束をした。自民党大会では岸田がウクライナ侵略を我が事として捉え、防衛体制の見直し・強化、憲法改正を実現しようと言った。これは、ウクライナと中国を重ね合わせ、中国に対抗する改憲と防衛力強化の意見に合わせる4月26日の自民党の提言につながっていった。日本がアメリカに加担するということになれば、防衛費を増やし、敵基地攻撃能力保有を実現することになる。敵基地攻撃能力を反撃能力という言葉に変えて、対象範囲は相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能を含むものとすると書いている。これを実現することになれば明文改憲をやらざるを得ない。岸田は、明文改憲をずっと我々が阻んだことを見ていて、ああいうやり方はしないと決めた。改憲と言えば言うほど国民は警戒し市民と野党の共闘が頑張る。岸田は、国会で3分の2を握っているが、地域での運動はほとんど出来ていない。地域草の根を変えていくことが必要だとし、憲法改正実現本部を全都道府県に作り、参院選までに憲法集会を最低2回は開催するとしている。今ひとつは憲法審査会を変えなければいけないと、国民民主党と維新の会を引っ張り込み、公明党に圧力を掛けている。岸田はこの2つを両輪として明文改憲にも乗り出し、参院選で今度こそ3分の2を取り戻し、衆院とともに明文改憲に乗り出すとしている。
 ウクライナ問題が起こる中で、中国は怖いので軍事力を強化しなければならない、憲法改正もしなければならない、敵基地攻撃能力も考えなければならない、という声が高まっているのは否定出来ない。「9条にどんな力があるの?」という声もある。本当に憲法を見直し、日米軍事同盟を強化しなければ日本の安全、アジアの平和は実現できないのかを考えたい。
 ウクライナの教訓は日米軍事同盟を強化して対中国の力を大きくしない限り、攻撃されるというのは本当にそうか。ウクライナ侵略もNATOにウクライナが入らなかった、入る前にやられたという意見があるし、NATOに加盟していないからウクライナを攻撃してもNATOの集団的自衛権は行使出来ない。だからロシアはウクライナを攻撃したと言うが、それは誤りだ。こういう軍事同盟間の対立は明らかに中国やロシアの軍事力強化を正当化するものだ。軍拡競争では武力による解決は止めようという合意は絶対に出来ない。軍拡競争が起こると自分の方が確実に優位だと判断した時に攻撃に踏み切る。自分の優位を確信出来なければ攻撃出来ない。プーチンがやったのは軍事力が自分の方が上だと判断したからだ。(つづく)

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【九条噺】  JAXAの「はやぶさ1」は10年6月13日に地球帰還。本体は大気圏に突入し燃え尽きたが、試料は地上に届けた。その場面は和歌山大学の尾久土正己教授らのチームがオーストラリアの砂漠で生中継に成功。「和大、感動をありがとう」の声が溢れたことを思い出す▼2代目「はやぶさ2」は19年7月11日、小惑星「リュウグウ」に再着陸し、地下の物質採取に成功した。20年12月6日に試料カプセルを地球に届け、本体は燃え尽きることなく、「1998KY26」という小惑星へ再出発した▼「はやぶさ2」は目標の54倍の5.4gの試料を採取した。本年6月15日にその試料から水とアミノ酸を発見したと発表された。生命に欠かせない物質、水とアミノ酸が豊富に含まれており、アミノ酸は23種類も検出されたという▼今回検出された中には、ヒトが体内で作れない「必須アミノ酸」と呼ばれるバリンやロイシン、イソロイシン、「神経伝達物質」としても働くアスパラギン酸やグルタミン酸などもあったという▼地球は46億年前に出来たが、初期の地球は非常に高温のマグマのような状態だったためアミノ酸があったとしてもなくなってしまうと考えられている。40億年ぐらい前に生命が誕生したが、ある程度冷えた状態で小惑星などがたくさん降り注いで運び込んだのではないかという説が近年有力になっている▼小惑星からもたらされた水とアミノ酸が地球の生命の起源か。わくわくする情報だ。解明が大いに進むのを期待する。(南)

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第97回「ランチタイムデモ」実施



 梅雨が明けたにも拘わらず、正午前から激しい雨が降り始めた7月12日、雨にも負けず97回目の「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が、40人の市民が参加して実施されました。
 今回のコーラー役は伊藤あすみ弁護士でした。元気良く、「9条活かして平和を守ろう」などのコールでみんなを先導し、京橋プロムナードまでを行進しました。40人という参加者数はこの日の天候を思えばやむを得ないでしょう。
 10日の参院選挙の結果、改憲問題をめぐる情勢は一刻の猶予もない情勢に突入しました。当日の天候は参加者を叱咤激励するものであったかもしれません。



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東京で初めての九条の碑完成
平和への願いを込め輝く球状




 6月19日、東京・足立区で九条の碑の除幕式が開かれました。「九条の碑を建立する会」が活動を始めて約1年半。区内外の800を超える個人・団体から500万円以上の募金が寄せられ、直径1mのステンレス製の銀色に輝く九条(球状)の碑が完成しました。九条の碑は東京では初めてで、国内では24番目です。200人近い参加者の熱い視線のなか、白い幕が外され球状の碑が姿を現すと、大きな拍手が沸き起こりました。碑の頂部に数字の「9」、球面の周囲には憲法9条1・2項がピンク色の字体で刻まれています。

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(2022年7月15日入力)
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