「九条の会・わかやま」 457号 発行(2022年07月26日付)

 457号が7月26日付で発行されました。1面は、「和歌山市ひがし9条の会」が第15回総会開催 9条改憲を許さない運動をさらに発展させよう、ASEANのルール作りに日本がイニシアティブを取るべきだ(渡辺 治 氏 ④)、九条噺、2面は、総かがり行動「19日行動」に600人、みなべ「九条の会」129回目のピースアピール   です。
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[本文から]

「和歌山市ひがし9条の会」が第15回総会開催
9条改憲を許さない運動をさらに発展させよう




 7月17日、「和歌山市ひがし9条の会」は、第15回総会を開催しました。
 事務局長・石垣保氏は、参院選で改憲勢力が3分の2を超え、安倍元首相の銃撃事件によって安倍氏礼賛と「改憲発議の動きが強まっている」と指摘。9条改憲を許さない運動をさらに一層発展させようとよびかけました。
 総会では、小倉佳典氏が「『和歌山大空襲』の背景」と題して記念講演をされました。小倉氏は「紀伊半島は、鹿児島、高知、房総半島とともに全面太平洋に面し、米軍が内陸の大都市を攻撃するための重要な侵攻地域であった。それを防御するため、和歌山県では各地に基地を造った。由良、田辺、串本などには、回天や震洋などの海への特攻基地、加太や磯の浦などには壕や要塞、桃山には飛行場など。和歌山市には軍の司令部があり、大阪などへの物資輸送の拠点ともなっていたため、和歌山市への空襲は、空爆エリア内の罹災率が68%と広島に次いで全国2位のすさまじさだった。米軍は、航空写真によって地図には載せていない軍事施設の建設も把握していたため、こうした施設もピンポイントで攻撃した。
 ロシアのウクライナ侵略は、かつて日本が朝鮮、中国などに侵攻したことと重なる。戦争体験者が少なくなってきているが、戦争体験を語り継ぐ重要性はますます増してきている」と話されました。

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ASEANのルール作りに日本がイニシアティブを取るべきだ

  5月21日「We Love 憲法~5月の風に~」が開催され、一橋大学名誉教授・渡辺治氏が「岸田政権下の改憲問題の新局面と市民」と題して講演をされました。要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は4回目で最終回。

渡辺 治 氏 ④



アメリカが対中軍事対決路線に転換した時、深刻な脅威は中距離弾道ミサイルで圧倒的に中国が上だということだった。中距離ミサイルは米ソ間で作らないという条約があったが、中国は入っておらず、大量に作った。アメリカは慌てて中国に入れと言ったが入らなった。トランプ政権は条約から脱退し積極的に作り始めた。ロシアも大量に作り始め、中国はさらに増強した。アメリカは中国やロシアに対抗するためにミサイル防衛網を作った。防衛網で撃ち落せたら中国やロシアを攻撃することが出来る。そこで、中国やロシアはミサイル防衛網を撃ち破る極超音速ミサイルを作った。アメリカも極超音速ミサイルを開発すると、中国、ロシアは極々超音速ミサイルを作った。これを続けたらとんでもない軍拡競争になる。冷戦時代も米ソが何百回も地球を壊すような核兵器を持っていて、これではということで核兵器削減の協議を行った。それが今は優位なうちにそれを逃れるために急速に軍事力を拡大している。とてもGDP2%では収まらない。このような形で国際関係を分断していると暴力、戦争、虐殺、人権侵害など国連が抑えていることがご破算となる状況が起っている。パレスチナ、アフガン、ミャンマー、香港、ウクライナでは国連の仲介に米・中・ロが拒否権を使い仲介が出来ず、暴力、戦争、人権侵害が全く止められない状況になっている。台湾有事に米軍が出動し、日本が集団的自衛権を行使したら、間違いなく南西諸島は戦場になり、再び沖縄戦の悲劇が起ることになる。日米軍事同盟強化や改憲は日本の平和の危機、人権侵害や民主主義破壊、暴力を国際社会がくい止めることを出来なくさせる。
 ロシアの乱暴な国連憲章蹂躙、国際法侵犯に対して、9条で太刀打ち出来るのかと多くの市民が疑問に思っている。9条は、戦争にならない世界を作ることに大きな力を果たしてきたし、現に果している。戦前の日本は10年を置かずに戦争を続けてきた。今日本は強大な軍事力と日米同盟を持っているにも拘わらず、77年間一度も侵略されたことも、侵略したこともない。アジアが変わったのか。否。戦後も朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガンへのソ連侵略戦争など、世界の戦争のほとんどはアジアで行われている。日本だけが侵略されたことも、侵略したこともない戦争に巻き込まれない唯一の国として存在している。韓国はアメリカとの軍事同盟を持ち、有数の軍隊を持っている。北朝鮮は中国との軍事同盟を持っている。台湾、タイ、ミャンマー、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドは軍事同盟を持ち、軍隊を持って全て戦争をしている。戦後のアジアの戦争はアメリカに加担させられて行われてきた。日本は自衛隊、安保条約があるにも拘らず巻き込まれなかった。それは9条の下で集団的自衛権を行使したり、戦争に加担することが認められなかったからだ。日本国民の8割が戦争を知らない。さらに、尖閣、竹島、北方領土にも自衛隊は行っていない。侵略されたら撃退するが、そのような紛争には顔を出さない。韓国、ベトナムなどは中ロと領土をめぐる軍事紛争が絶えないのに、日本だけ領土問題で一度も戦争を経験していない。それは憲法9条が自民党政治を制約してきたからだ。今問題なのはこれを壊そうとしていることだ。中国やロシアが攻めて来ることはない。戦争はある日突然に起るものではなく、長い間の両国間の紛争の中で、ここで侵攻しても国際社会は動くことが出来ないと判断した時に踏み切るものだ。今まで日本は専守防衛で、紛争を軍事的に解決せざるをえない場面はなかった。日本にどこかの国が攻めてくる場面は、①台湾有事に日本が集団的自衛権を発動する、②尖閣が軍事紛争に発展する、の2つだ。両方とも100%防ぐことが出来る。それは集団的自衛権を絶対行使しない、安保法制の集団的自衛権の行使を廃棄することだ。尖閣問題は日中平和友好条約の中でも両国はあらゆる紛争を武力によらないで解決すると約束している。日本の平和は9条に基づく交渉を実行すれば確実に実現出来る。しかし、アジアの平和は日本だけでは実現出来ない。戦争をしない・武力を持たない国の実現は、中国とアメリカの軍事力競争が起っている中で、日本だけが軍備を撤廃するなどは国民が納得しない。我々は9条に基づく平和の構想を実行すると、日本の平和は実現出来るが、アジアの平和は実現出来ない。日本国憲法を75年間守ってきて一番大きな問題は、アジアの平和は日本だけでは実現出来ないことだ。9条の理念を実現するには軍事力競争のないアジアを作らねばならない。それが9条が求める義務だ。自公政権は全く逆のことをやっている。アジアで6カ国協議が行われた。世界でアメリカ、中国、ロシア、日本と南北朝鮮が入っている国際会議はこれしかない。これは北朝鮮の核を抑えるための協議だが、これを東アジアの紛争を武力で解決しないルールを作る会議にしていくとだ。ASEAN諸国は紛争の武力によらない解決のために集まってルールを作ろうとしている。こういう時に日本がイニシアティブを取りアジアにおける紛争を軍事によらない解決の先頭に立つのが9条を持つ日本の役割りだ。だが自公政権は全く逆の方向に動いている。9条に基づく日本を作っていくためには自公政権を替えなければならないが、今は改憲を止め、集団的自衛権行使を止め、敵基地攻撃能力の保有をさせない活動を我々市民が共闘の力でやらねばならない。そして、参議院選挙で何としても3分の2を覆すことで、戦争へ踏み出す岸田政権の歩みを止めることが出来る。市民の役割りが大きい時代がやってきた。9条は死んでいない。憲法を守り平和を作ってきた路線を延長・強化するのか、それとも根本的に変えて改憲と日米軍事同盟の力によって安全を守ろうとするのかの岐路にある。憲法を守るたたかいが今ほど重要な時はない。(おわり)

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【九条噺】

 我家の庭にオニユリ(鬼百合)が咲いている。可愛い花なのに何故「鬼」が付いているのだろう▼日本は野生ユリの宝庫と言われ、オニユリ以外にもヤマユリ、ササユリ、カノコユリ、オトメユリ、テッポウユリなど15種が自生している。その内8種は日本の固有種だそうだ▼中でもヤマユリはこれが本当に野生のユリかと思うほど豪華で美しく、芳香を放つ。また、ササユリは淡いピンクの筒状花で、清楚な姿が美しい。真っ白なカサブランカはヤマユリを原種としてオランダで作り出された園芸品種だ▼オニユリが「鬼」なのは、花の色が橙赤で外側に反った花びらが、赤鬼のようであることから付けられた名前だという。オニユリの鱗茎(ユリ根)は食用になり、昔は飢饉に見舞われた際の非常食とされ、人々を救う糧であったそうだ▼花はオニユリそっくりだが、やや小振りのコオニユリ(小鬼百合)がある。両者の違いは、オニユリが種でもなく実でもないムカゴ(零余子)と呼ばれる黒い肉芽を葉の付け根につける。それが散ばり発芽する。コオニユリはムカゴを作らず種を作る。ムカゴはオニユリだけでなく、ヤマイモ、自然薯、ニンニクなどにも出来る。昔から貴重な山の幸として食用に親しまれている▼ところで、オニユリの花言葉を調べてみると「愉快」「陽気」「華麗」といった明るいイメージの言葉だ。オニユリは9条を守る活動にも前向きに元気に頑張れと我々を励ましてくれているのではないかと思える。(南)

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総かがり行動「19日行動」に600人



 「改憲発議反対!軍拡やめろ!辺野古新基地建設中止!ロシアはウクライナから即時撤退せよ!くらしといのちを守れ!7・19国会議員会館前行動」が7月19日夜に開かれ、600人が参加。参院選の結果を受け、改憲発議阻止のため、市民と野党の共闘や草の根からの運動を大きく広げる決意を新たにしました。社民党の福島みずほ参議院議員、日本共産党の田村智子参議院議員、立憲民主党の吉田はるみ衆議院議員が挨拶。沖縄の風の伊波洋一参議院議員のメッセージが紹介されました。
 憲法9条壊すな実行委員会の菱山南帆子さんが主催者挨拶。「安倍元首相が殺害されたが、亡くなったからといって進めてきた悪政がなくなる訳でなく、脈々と引き継がれている。なかったことにすることや国葬を行うなどとんでもない」と厳しく批判。参院選は悔しい結果だったが、市民と野党の共闘が大きな役割を果たしていたことが分かった。本気の共闘で改憲できない世論をつくり出そう」と呼びかけました。(「憲法共同センターニュース」7・20より)

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みなべ「九条の会」129回目のピースアピール



 参院選挙で自民・公明・維新・国民の改憲勢力の議席が3分の2を超えました。岸田首相は、「与野党全体で一層活発な議論が行われることを強く期待する」と述べ、自民党として全国での対話集会を積極的に行い、改憲の世論づくりに力を入れることを表明しました。
 当会は7月17日のピースアピールで、「このような改憲の動きを早めようとする背景には、ウクライナ危機があります。しかし、ウライナ危機が教えているのは、戦争は絶対に起こしてはならないということであり、戦争を起こさないためには徹底した平和の外交的努力が必要だということではないでしょうか」と訴えました。

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(2022年7月26日入力)
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