「九条の会・わかやま」 458号 発行(2022年08月12日付)

 458号が8月12日付で発行されました。1面は、「和歌山障害者・患者九条の会」が16周年の集い開催 記念講演は「障害者と戦争」、第98回「ランチタイムデモ」実施、九条噺、2面は、「安倍国葬」は明らかに違憲!憲法をないがしろにする自民党の政治手法 小林節・慶応大学名誉教授、言葉「防衛白書」(2)  です。
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「和歌山障害者・患者九条の会」が16周年の集い開催
記念講演は「障害者と戦争」




 7月24日、和歌山市ふれ愛センターで25名が参加して、16周年の総会と記念講演会を行いました。
 総会の後は、新婦人の会のスコップ三味線小組の皆さんによる演奏です。スコップ三味線は栓抜きでスコップを叩くもので、「河内おとこ節」など3曲が披露されました。曲のリズムと皆さんの息づかいが見事にシンクロし、荘厳な音色にしばし耳を傾けました。
 「障害者と戦争」と題する記念講演は、企画のたびにコロナ感染の拡大で再々延期を余儀なくされ、実に三度目の正直でようやく京都から岸博実(きし・ひろみ)先生をお招きすることが出来ました。先生は長年京都盲学校に勤務される一方、盲教育史の研究に力を注がれています。第二次大戦中、障害者はどのように戦争に組み込まれていったのかを、4つの視点から判りやすくお話いただきました。
 「支那にいる兵隊さんへ。支那人をたくさん殺して良い人になってください」。これは昭和 12年、京都盲学校の小学1年生の児童が書いた文だそうです。翼賛体制下の教育は、学校に通い始めたばかりの1年生の子供にまでそのような思想を植え付けていたことに強い衝撃を受けざるを得ません。そして障害者は「ごくつぶし・役立たず」と差別されました。学童疎開にでも、将来戦力にならない障害児の疎開は後回しにされたり、疎開と言っても障害者は街中からすぐ近所へ疎開させられて、とても危ない疎開だったそうです。一方、盲人防空監視哨員や海軍技療手と言って、近づく敵の爆撃機を音でその機種を聞き分け報告する任務に就き戦争に動員された視覚障害者がいました。まだその方が存命の頃、先生が面談され聞き取りをされています。また少数ではあったものの、障害者やその関係者の中には反戦平和の声を上げた人もいたそうです。
 現在政府は、5年を目途に防衛費を倍増する方向を打ち出しています。戦争への道をとった歴史は繰り返してはなりません。福祉予算が削られ、「障害者は金がかかる」などという風潮が世の中に広がることのないように、私たちの活動を継続し、みんなの命が輝く世の中をつくっていかなければなりません。そんなことを強く感じた一日となりました。(会の事務局・野尻誠さんより)

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第98回「ランチタイムデモ」実施



 長崎原爆の日の8月9日、まさに夏本番の炎天の下、第98回目の「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が開かれ、35人の市民が参加しました。
 いつもより参加者が少なかったのは、JR和歌山駅前での恒例の「9の日宣伝」と時間的に重なり、またその後、「平和の波」行動も行うとかで、普段ならデモに参加する人の多くが和歌山駅前に行ってしまったためです。
 今回のコール役は重藤雅之弁護士でした。参加者はいつものように和歌山市役所から京橋プロムナードまでを、重藤弁護士のコールに合わせて「9条を守ろう」「9条を守る平和な日本を子ども達に残そう」などと訴えながら行進しました。
 第99回は9月14日(水)、記念の第100回は10月17日(月)です。



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【九条噺】

 猛暑が続き日中の外出は避けている。新型コロナ第7波の感染急拡大で高齢者は不要不急の外出を控えるよう、県のアナウンスも連日なされている。感染の早期終息を願う▼この季節は広島・長崎の原爆投下を想起し、無謀な戦争と核兵器の根絶を世界に訴えるべき季節でもある▼しかしロシアのウクライナ侵略によって兵士だけでなく市民や子供の死亡、多数の負傷者、家屋・マーケット・病院・交通網の破壊が進んだ。ロシアは核兵器使用の脅しさえかけた▼憲法9条を持つ日本は、戦争をするなと主張し核脅迫を許さない立場に立つべきなのに、残念ながら先の国政選挙で衆参両院の改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2の議席を占めたことを背景に、またウクライナ事態を絶好の口実に、岸田自公政権は逆行を強めた。自衛隊合憲化・緊急事態条項を核心とする改憲を進め、敵基地攻撃能力の増強を明言している。維新は改憲・核共有などを右側から煽っている▼世論調査では、自国防衛のために防衛力増強を認める意見が増えているとも伝えられる。しかしウクライナの戦況が膠着し長期化するとともに、「力には力」の限界も見えてきた。急迫不正の侵略から自国を守る専守防衛に武力を使用することは認められるとしても、互いに敵に勝とうとすると軍拡競争になり同盟国も巻き込む対立、「安全保障のジレンマ」に陥る▼戦争は収め方も鍵だが、紛争当事国を含む対話の仕組みで戦争を始めない努力が大切だ。 (柏)

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「安倍国葬」は明らかに違憲! 憲法をないがしろにする自民党の政治手法
小林節・慶応大学名誉教授




 「安倍国葬」が違憲であることは否定しようがない。国葬とは国の意思と名と負担で行われる最も格が高い追悼式で、歴史的にもめったにあることではない。だから、国権の最高機関・国会が制定した法律上の根拠があって行われるべきものである。現在一つだけ法律で決められている国葬は天皇の大喪で皇室典範25条に明記されている。そして、それを内閣が執行する手続法が内閣府設置法4条である。しかし、元首相の国葬には根拠法がない。安倍晋三氏の家族葬は済んでおり、公的な追悼式は急ぐ必要はない。だから、国会で堂々と審議して法律を制定してから挙行することが、憲法が命ずる「安倍国葬」の手順である。にもかかわらず、岸田政権は、憲法尊重擁護義務を負う内閣(99条)が、最高法である憲法(98条)の上に立つという矛盾を犯した。
 思えば、これは安倍内閣が確立した政治手法である。あの平和安全法制(戦争法)を制定したやり方である。憲法9条2項は、国際法上の「戦争」の手段である「軍隊」と「交戦権」を明文で否定している。だから、わが国は「海外派兵」が不可欠な「戦争」はできないとされてきた。これが憲法の「原意」で一貫した政府見解である。にもかかわらず、安倍政権は閣議決定で政府見解を変更して戦争法の制定を主導した。
 憲法25条はわが国に対して「福祉国家」であることを命じている。にもかかわらず、自民党政権は、「新自由主義」と称する弱肉強食資本主義政策を推進して、福祉国家を破壊してしまった。
 自民党政権は、官僚人事に直接介入して「忖度」官僚を重用して、法令を曲げて国費を使い、権力者の友人を優遇させた。しかも、官僚たちが公的な情報を隠蔽したために、これらの権力者による犯罪は立件されていない。
 以上、自民党政権は法治主義(法律に従った権力の行使)、法の支配(憲法の優位性)を露骨に踏みにじり、恬(てん)として恥じていない。
 こんな自民党に「改憲」を語る資格がないことは明らかである。
(日刊ゲンダイDIGITAL8・9より)

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言葉 「防衛白書」(2)



 防衛白書とは防衛省が毎年刊行している報告書で、日本の防衛政策の基本方針や周辺国の軍事情勢について、国民の理解を求めることを目的としているとしています。  2022年の「防衛白書」が発表されました。白書のダイジェストを載せた別冊には、「平和を生む『抑止力』」と大見出しを付け、日本の軍事体制と日米同盟の強化を打ち出しています。
 白書は、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」について初めて明記しました。「反撃能力」について、1956年の鳩山一郎首相の国会答弁を挙げ、「誘導弾による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能と解してきている」と述べています。しかし、政府は一方で「平生から他国を攻撃し、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない」(59年、伊能繁次郎防衛庁長官)と答弁していますが、白書は、この見解には触れていません。
 中国については、「核・ミサイル戦力や海上・航空戦力を中心に、軍事力の質・量を急速に強化しており、強い懸念となっている」と述べ、ロシアのウクライナ侵略については、「このような力による一方的な現状変更の影響が、インド太平洋地域にも及ぶことが懸念される」と指摘しています。わが国の防衛とともに、平和を創り出すために重要なのが『抑止力』だとし、「わが国自身の防衛体制の強化」と「日米同盟の強化」を進めていると強調しています。
 白書は、岸田首相が今年1月、新たな「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を策定すると発表したのを受け、「防衛力強化加速会議」を立ち上げ、「あらゆる選択肢」を議論していることを紹介しています。また、岸田首相が5月の日米首脳会談後の共同記者会見で「私からは、いわゆる『反撃能力』を含めて、あらゆる選択肢を排除しない旨も述べた」と発言したことを引用しています。
 白書は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が軍事費を対GDP(国内総生産)比2%以上にすることで合意し、8カ国が達成しているなどと書いています。日本もNATOの目標を念頭に軍事費を大幅に増額すべきだとする自民党の主張に呼応するものです。
 日本が「敵基地攻撃能力」の保有や軍事費増など軍拡を推進すれば相手もさらなる軍拡で応える「安全保障のジレンマ」に陥ることは明白です。「力対力」では平和はつくれないという教訓こそ、東アジアで生かすことが必要です。

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(2022年8月12日入力)
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