「九条の会・わかやま」 459号 発行(2022年08月21日付)

 459号が8月21日付で発行されました。1面は、ウクライナ侵略戦争と9条を考える 白浜9条の会・上富田9条の会講演会(西谷文和さん)、霊感商法との親和性 田中優子さん(法政大学前総長)、九条噺、2面は、日高町で平和の道を考える戦争資料展 「日高町平和を願う9条の会」が開催、時事通信 世論調査8月 です
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ウクライナ侵略戦争と9条を考える
白浜9条の会・上富田9条の会 講演会


 7月24日、白浜9条の会・上富田9条の会共催講演会でフリージャーナリスト・西谷文和さんが「ウクライナ侵略戦争と9条を考える―なぜ侵略戦争は始まったのか―」と題して講演をされました。その要旨をご紹介します。

西谷 文和 さん



嘘の並べ立てから戦争は始まる

 2014年、ウクライナで親ロ派ヤヌコーヴィチ政権とデモ隊とが首都キーウで衝突し、ヤヌコーヴィチ大統領がロシアに亡命したマイダン革命を私は取材した。ウクライナは深刻な原発事故を起したチェルノブイリがある国だ。
 原発も戦争も、権力は事実隠しと情報統制を図る。そして戦争は国民に向かって嘘を並べ立てることから始まる。プーチンがウクライナをなめて仕掛けた今回の戦争。ロシアは国内の貧困層の青年を訓練だと偽りウクライナに送り込んだ。ロシアは首都キーウ攻略に失敗し、戦線を東部に移した。アメリカはドローンを駆使してウクライナに情報を提供している。この戦争は、ロシア対ウクライナとともに、ロシアとアメリカとの戦争でもある。
 報道は事実を必ずしも伝えようとはしない。ロシアの国営TVで反戦をアピールした女性アナウンサーが大きく報じられたが、彼女がTV局に入りカメラの前に立つまでには多くの局員などのサポートがあったはずだ。

ウクライナと憲法9条をめぐる情勢

 安倍内閣の安保法制以来、専守防衛の枠を越えた日本。今、ウクライナ情勢に便乗・利用した軍拡が始まっている。2隻の護衛艦を空母に装備変えし艦載機の発着訓練が行われているが、その中心は沖縄である。沖縄の反基地世論の高まり、しかし、本土の報道機関は、そうした沖縄の状況を積極的に伝えようとはしない。私はカンテレ(関西テレビ)の報道番組に出演しているが、それはカンテレであって、東京のキー局フジテレビで流されることはない。報道機関の権力に対する忖度がそうさせている。こうして日本は憲法9条を逸脱し、世界3位の軍事大国になってしまった。

憲法9条の下、平和の創出を図る

 アフガニスタンで憲法9条を活かし、平和の創出を図った中村哲さん。中村さんが拓いた用水路は、今どうなっているのか、アフガンに取材に出かけた。
 用水路沿いに広がる森と耕地。空爆で孤児となった子どもたちを救済するために建てられている学校。「米と麦で平和を創る」中村さん。一方、アメリカはアフガンで90万人を殺害した。アメリカ軍の撤退でタリバンは復活し、外国から支援は途絶え、経済は崩壊、深刻な食糧不足に陥っている。そんな中、タリバン政権は女性を教育から排除する一方、旧政権の汚職を排し、施設に対し人道的食糧支援を強化している。また、タリバン穏健派を取材した時、彼らは日本国憲法第9条をよく知っていて、それに対する賛意を語った。
 状況や事態をみる場合、「Aか、Bか」の二者択一ではなく、「Cもありうる」。ものごとをみる目は複眼でなければならない。

求められる富の再配分

 戦争や新型コロナで大儲けしている企業があり、その富は配当金により投資家たちに集まっている。その上位10%の富の再配分により、世界の貧困や矛盾を改善・解決することが出来る。ここでも「Aか、Bか」ではなく、「Cもありうる」との複眼が必要だ。

安倍国葬問題を考える

  安倍銃撃事件の背景に旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)があることは、参院選挙投票後まで伏せられた。それは統一教会と自民党との古くて長い癒着の歴史があるからだ。勝共連合は統一教会の文鮮明と岸信介が立ち上げた組織だ。この反社会団体と自民党との癒着の関係は、今日まで続き、夫婦別姓反対・子ども庁を子ども家庭庁に改組など右翼的な改編や政策変更に関わる勢力を構成してきた。9月27日に予定されている安倍国葬は、事件に関わる統一教会と自民党の癒着実態を覆い隠す側面も持つ。
 一方、維新の吉村大阪府知事は武富士の顧問弁護士を務めていた。その維新は、今、大阪万博とセットでカジノ誘致に動き、周辺では利権屋たちがうごめいている。ここでも「Aか、Bか」ではなく、Cを探る複眼が求められている。
 (「田辺9条の会」田所顕平さんより)



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霊感商法との親和性
田中優子さん(法政大学前総長)




 2021年9月17日、全国霊感商法対策弁護士連絡会が、衆議院議員・安倍晋三氏宛に送った文書を見ることができた。そこではこの連絡会が1987年に約300名の弁護士により結成されたことが書かれている。活動を始めて35年の歴史をもつ。
 この連絡会は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による霊感商法被害の救済と根絶のために作られた。国会議員や地方議員がこの団体の集会や式典に出席し、祝辞を述べることによって、「お墨付き」を与え、霊感商法がさらに広がることを懸念し、注意を呼びかけてきたのだ。
 ところでこの文書が安倍氏宛に送られたのは、2021年9月12日に、安倍氏が旧統一教会のフロント組織である天宙平和連合主催「神統一韓国のためのTHINK TANK2022希望前進大会」と称するWeb集会で基調演説をおこない、教祖である韓鶴子総裁(故・文鮮明教祖の妻)を始めとする幹部・関係者に対し「敬意を表します」と述べたからであった。
 連絡会は19年にも国会議員に対して、会への参加や賛同メッセージを送るようなことをしないよう求めている。「金銭的搾取」と「家庭の破壊」をもたらす「反社会的団体」である、と表現し、政治家によるお墨付きは反社会的な活動をさらに容易にするものだ、という懸念が示されたのである。そのような警告があったにもかかわらず安倍氏が講演と賛辞を送ったのであるから、並々ならぬ関係があったのだろう。教団から高額の講演料や票の取りまとめを示されたのかもしれないが、そのような利益供与の関係だけではないような気がしている。森友学園が設立を目指した「安倍晋三記念小学校」の事件でもそうだったが、安倍氏に超現実的なものとの親和性を感じるのだ。
 憲法は個人の信教の自由を保障するとともに、宗教団体側からも国の機関の側からも、政教癒着を禁じている。それは、人知と合理性を超えた力が自分に何らかの利害をもたらすとなった途端、思考を停止して熱狂する人々が現れるからである。権力を求める者は常にその熱狂の中にあり、他の熱狂を自分の方に向けたい。論理的な筋道は断たれ思考が停止し、超現実的な団結と排除が始まる。そういう社会でいいのか?
 思考は人間にとって厄介で面倒なものなのかもしれない。しかしそれを続ける努力の中にしか、希望はない。(週刊金曜日オンライン7月29日付)

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【九条噺】

 岸田政権は安倍元首相の国葬を閣議決定で行おうとしている。安倍元首相の殺害は犯罪であり、決して認めることは出来ないとしても、国葬には大きな問題がある▼国葬をするのなら国権の最高機関の国会が制定する法律に従って行うべきだが、日本に国葬に関する法律はない。だから行政府である内閣に国葬を決める権限はない▼また、国葬は税金を使う。財政民主主義から国会の議決が必要だ。かつて安倍元首相は自分を「立法府の長」と言ったことがあるが、岸田首相もまさか「立法府の長」と思っている訳ではないだろう▼岸田首相は「内閣府設置法」が根拠だと言うが、「国の儀式」をするのは他の法令がない限り「内閣府」と定めただけで、この規定から「国の儀式」を行っても良いとはならない。これが出来るのなら「法律による行政の原則」は空文化し、内閣は好き勝手に行動出来てしまう▼岸田首相などは安倍元首相には卓越した業績があると主張する。ウソだ。筆者は日本を悪くした最悪の人物が安倍元首相だと思っている。「モリ、カケ、サクラ」などと揶揄される疑惑まみれの人物だ。「サクラ」では国会で118回も虚偽答弁をしたことを本人も認めている▼外交で成果をあげたとも言うが、拉致問題、北方領土問題、安全保障などでも具体的な成果は何もない。トランプやプーチンにいいように扱われ、お金を巻き上げられただけではないのか。こんな人物の国葬などとんでもないと言わざるを得ない。(南)

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日高町で平和の道を考える戦争資料展
「日高町平和を願う9条の会」が開催




 和歌山県日高町の中央公民館で、日高町平和を願う9条の会の「語り継ぐ戦争と平和資料展2022~考えよう平和への道~」が、8月13日から14日まで開かれた。
 今年はロシアのウクライナ侵攻が続く中、戦争ではなく平和への道は何なのかを大きなテーマに開催。「太平洋戦争への道」「今も残る日高地方の戦争の傷あと」「大切に保存されていた戦争遺品」「ウクライナ戦争が私たちに投げかけたものは・・・」「かけがえのない未来を子供たちに」の5つのコーナーを設けている。
 太平洋戦争突入に昭和天皇が発した「開戦詔書」や太平洋戦争終結の「詔書玉音」、ポツダム宣言のコピー、田辺市龍神村や御坊市、美浜町、由良町の各地域に残る戦跡地の写真、戦跡の由来も展示。平和について考えてもらおうと、「『お国のため』ってなんだろう」「戦死は『おめでとう』なんでだろう」とクエスチョンを掲示しており、同会代表世話人の田中薫さんは「ロシアのウクライナ侵攻で関心が高まる中、特に子どもたちに戦争のみじめさ、悲惨さを知ってもらえれば」と話している。
(「日高新報」オンライン8月13日付)

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時事通信 世論調査 8月

安倍元首相の葬儀を全額国費で負担する「国葬」として実施することは
 反対:47.3%
 賛成:30.5%
   どちらともいえない・分からない:22.2%
統一教会と政治家の関わりについて実態の解明は必要か
 必要だ:77.3%
 必要ない:11.0%
 どちらともいえない・分からない:11.7%

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(2022年8月20日入力)
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