「九条の会・わかやま」 469号 発行(2023年1月1日付)

 469号が1月1日付で発行されました。1面は、敵基地攻撃能力で国は守れるか「九条の会・わかやま」呼びかけ人・江川治邦さん、戦争は自衛の名の下に始まる「九条の会・わかやま」呼びかけ人・副島昭一さん、年賀状、九条噺、2面は、安保関連3文書改定 憲法学者らが対案公表 戦争ではなく平和の準備を、敵基地攻撃能力保有は専守防衛を完全に逸脱する 自民・古賀誠元幹事長が嘆いた  です
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[本文から]

敵基地攻撃能力で国は守れるか
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・江川治邦さん




 政府は、敵基地攻撃を「やむを得ない必要最小限度の自衛処置」として有効だと言う。反撃には瞬時の判断が求められ、人間の判断力が揺さぶられる。前もってプログラムされた自動操作になるのか? 判断が誤れば原爆を搭載した国家間のミサイルやドローンでの撃ち合いとなろう。日本各地にある原子力発電所も攻撃の的となり、「戦いに勝って国滅ぶ」ことにもなりかねない。そんな無鉄砲で無駄なことに何故多額の税金を投入するのか? もっと人間らしい方法がないのか?
 憲法9条は国家間の対立を武力で解決しない国のあり方を規定している。また憲法前文は「平和を維持し…国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」と誓っている。これは先の敗戦体験から得た日本人の普遍的な知恵であり、日本国憲法は人類共通の世界遺産にも成り得る。ユネスコ憲章前文は、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と記されている。このためユネスコは国連の専門機関として「無知と不信と偏見」を取り除く教育として、戦争の再発を防ぐための国際理解教育を推進し、女性の権利、他国・多民族・多文化の理解、人権の原則を推進してきた。ユネスコ世界遺産も多文化共生をめざした世界平和構築を推進するツールである。名所旧跡をノミネートして観光業を盛り上げることが目的ではない。
 世界平和構築には多様な市民間交流による相互理解と国際協力が重要となる。政府間外交(国際)と各国の民間交流(民際)の相関も重要であり、各国政府はそのための教育と人材育成に予算を割くべきである。私は学生時代から世界共通語エスペラントで、アメリカ・中国・韓国・フランス・チェコ・ポーランドの人たちと文通し、定年退職後に彼等を訪問し、同じ人情をもった人間同士であり、無駄な戦争は人類の福祉に寄与しないことを確認し合った。恒久平和は武力では達成できない。「武器よさらば」である。

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戦争は自衛の名の下に始まる
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・副島昭一さん




 数年前まではまだまだと思っていた自分の人生が終末期に入っていることを折にふれつくづく感じるようになってきました。コロナ蔓延の中、政府の進めるワクチン推奨に私も従い、4回目までは通知が届けばすぐに打っていました。しかし最近ワクチンに対する重大な疑念をSMSで知り、接種を控えています。自然免疫を破壊するという警告が医学者や医師によってなされています。それにしてもこの重大な問題をNHKはもちろん他のマス・メディアでもほとんど取りあげず、なんらかの圧力による自主規制があるのではないかと疑っています。メディアの自主規制・忖度・権力との癒着はこれにとどまりません。
 戦後最悪の内閣であった安倍政権それを引きついだ菅政権でしたが、岸田政権になって、もしかしたらある程度の軌道修正もあるかと期待しました。しかし期待は全く外れむしろ前政権の敷いた路線を猛スピードを上げて暴走しています。多くの人の指摘のように集団的自衛権と敵基地攻撃能力・反撃能力により日本が戦争に巻き込まれる危険性は格段に増大し、日本国土全体相手側の攻撃対象となって「国民の命と生活を守るため」という首相の言明とは全く裏腹に国民の命と生活が危機にさらされるでしょう。
 「トマホーク」などの「防衛装備品」つまり人殺しの道具と機器の爆買いは米国の旧式兵器の在庫整理であり、米国軍事産業の新兵器開発のために使われるでしょう。この問題でもマス・メディアの大部分は政府の説明を垂れ流し、多くの政党が基本線で賛同する翼賛化も進んでいます。かつて十五年戦争で日本が歩んだ道です。「戦争は自衛の名の下に始まる」という歴史の教訓を銘記する必要があります。本当に国民の生活と命を守るには、30数パーセントに過ぎない食糧自給率を大幅に引き上げ、攻撃目標になる原発を稼働停止しなければならないでしょう。  地球温暖化も以前は私の生きている間の問題ではないだろうと思っていましたが、早急に手を打たなければ取り返しのつかない段階に至っています。にもかかわらず日本は「化石賞」という不名誉な賞を受けています。軍事力増強ではなくこの課題に貢献すべきです。
 ウクライナ問題でも日本の外交は専ら米国に追随しNATOの準加盟国並み扱いをめざしています。しかし憲法9条を持つ日本は本来停戦のために積極的役割を果たすべきです。同時に外交努力によって東アジアに平和な環境を作り出す、この役割は何千万という犠牲を払って得た世界が日本に与えた使命だと思います(2022年12月18日)

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【九条噺】

 「あなたは護憲派か改憲派か」と尋ねられたら、何と答えるか。「『九条の会・わかやま』だから護憲派」と言われそうだが、「護憲、改憲」をきちんと定義しないと返答し難い▼「九条の会・わかやま」は05年9月16日の発足時に「和歌山のみなさんに憲法九条を守るという一点で、『九条の会』アピールにご賛同いただくようよびかけます」と呼びかけている。あくまで「憲法九条を守る」が会の目的である▼では「その他の条項は?」という話になる。日本国憲法は現存する憲法の中で、1回も改正されていない「未改正憲法」として世界で最も長い歴史を持つという。その理由は人権規定の多さで、現在でも十分に世界に通用する水準という。人権規定が充実しておれば、主権者国民は変える気にならないのは当然だ。ほとんどの条項は改正する必要がないということだ▼筆者は唯一改正した方が良いと思うのが、第1章「天皇」だ。単なる象徴とはいえ、世襲でその地位を続けるのは国民主権に反する制度と思う。「元首」が必要なら、呼称はともかく、「国政に関する権能を持たない元首」を国民の選挙で選出すればいいだけの話だ▼「護憲」とは「現行憲法の前文と全条項を一文字たりとも変更しない」ということなら、筆者は「改憲派」ということになってしまう▼ただ、今は第1章改正を議論する時期ではない。今は何が何でも「九条改憲」を阻止しなければならない。そのためには「改憲派」は脇に置いておかなければならない。(南)

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安保関連3文書改定、憲法学者らが対案公表
戦争ではなく平和の準備を




 政府が12月16日に閣議決定する方針である外交・防衛の指針「国家安全保障戦略」など安全保障関連3文書に関し、憲法学者らによる「平和構想提言会議」15日、3文書に現行憲法では認められないような内容が盛り込まれているとして、対案と位置付ける提言「戦争ではなく平和の準備を—〝抑止力〟で戦争は防げない—」を公表した。政府が進める敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の大幅増を批判し、憲法9条に基づく専守防衛の堅持や、外交交渉で緊張緩和を実現する重要性を訴えている。
◆政府・与党の考え方「極めて短絡的で危険」
 提言では、3文書改定は日本の安保政策の大転換となり、「日本が自ら戦争をする国家に変わる」と指摘。改憲が必要になるほどの重大な政策転換であるにもかかわらず、「国会の徹底的審議もないままに憲法の実質が勝手に上書きされようとしている」と懸念を示した。 その上で、政府・与党の議論の中心にある「軍事力の増強が抑止力を強め、平和を担保する」という考え方を「極めて短絡的で危険」と問題視。防衛力強化がかえって周辺国との軍拡競争を招いて戦争のリスクを高めると警鐘を鳴らし、今こそ憲法9条が定める平和主義の原則に立ち返るべきだと強調する。
◆「国民的議論もなく勝手に決めていいわけがない」
 今後、取り組むべき具体策として、朝鮮半島の非核化に向けた外交交渉の再開や中国を「脅威」と認定しないことなど、アジア諸国との対話の強化を提唱。専守防衛の堅持も明記し、米国巡航ミサイル「トマホーク」など敵基地攻撃能力の保有につながる兵器の購入や開発の中止を求めた。憲法や国際政治、軍縮の専門家、市民団体代表ら有志15人でつくる同会議は15日、国会内で記者会見した。共同座長の学習院大の青井未帆教授(憲法学)はオンラインで参加、「憲法9条があるのになぜ先制的な反撃が可能になるのか。議論が圧倒的に足りない」と幅広い議論を呼びかけた。
 上智大の中野晃一教授(政治学)は敵基地攻撃能力の保有に関して「国民的な議論もなく勝手に決めていいわけがない。認めないとはっきり言っていく必要がある」と訴えた。
(東京新聞12月16日付)



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敵基地攻撃能力保有は専守防衛を完全に逸脱する
自民・古賀誠元幹事長が嘆いた




◆戦争がいかに愚かか、体験しているからこそ、平和言い続ける  古賀氏は幼少時、太平洋戦争でフィリピンに出征した父を失った経験から「戦争につながること」に一貫して異を唱える。敵基地攻撃能力の保有に懸念を示すとともに、「あの戦争がいかに愚かだったかを語り伝えていきたい」と話す。古賀氏との一問一答は以下の通り。
 ―日本が敵基地攻撃能力を保有することになる。
 「これは(戦後の安全保障政策の)大きな転換だ。安全保障を取り巻く環境が大きく変わり、何とかしなければならないと考える国会議員の気持ちは理解できる。しかし3文書の改定が抑止力になるかどうかは別問題。敵基地攻撃能力を持てば、完全に専守防衛を逸脱してしまうのではないか。抑止力よりも不安のほうが大きくなるのではないかと懸念している」
 ―財源問題が注目されているが、それまでの議論は十分だったか。
 「平和憲法がある以上、敵基地攻撃能力のある兵器を保有するなら、専守防衛のあり方、例えば攻撃対象をどうするのかといった説明責任を政治家が国民にしっかり果たさなければならない。財源問題は大事なことだが、その前の防衛力強化の議論が拙速過ぎではないか」
 ―岸田政権をどうみる。
 「安倍政権のツケと言うのは変だが、大変な時にかじ取りをさせられていると思う。懸念を払拭するよう、どういう手順、議論で今に至ったのか真実を語ってもらいたい」
 ―国会議員に戦争を知る世代がほぼいなくなり、安保政策のかじ取りを不安視する声もある。
 「戦争がいかに愚かで、いかに多くの人たちが苦しみ、血と涙を流したかということを僕は体で知っている。体験しているからこそ、自分の考える平和を言い続けていきたいし、国政に携わるすべての人に語り伝えていきたい。これからが本番だ」
(東京新聞12月16日付)

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(2022年12月30日入力)
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