「九条の会・わかやま」 470号 発行(2023年1月12日付)

 470号が1月12日付で発行されました。1面は、敵基地攻撃は憲法9条・国際法違反の先制攻撃 安保関連3文書は 軍拡競争と増税に向かわせる9条実質改憲だ 「九条の会・わかやま」事務局長 柏原 卓、「対案」の検討の形跡すら見えない〈柳沢協二さんのウォッチ安全保障〉、九条噺、2面は、政治を変えるために力を合わせよう⓵ 小林節氏(慶応大学名誉教授)、12・26和歌山緊急行動実施 平和を壊す「安保関連3文書」閣議決定撤回!、みなべ「九条の会」133回目のピースアピール  です
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[本文から]

敵基地攻撃は憲法9条・国際法違反の先制攻撃
安保関連3文書は、軍拡競争と増税に向かわせる9条実質改憲だ
「九条の会・わかやま」事務局長・柏原 卓


 昨年暮れに重大な動きがあった。自公政権は、国会閉会後の12月16日に「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保関連3文書を閣議決定した。敵基地攻撃能力(反撃能力)を容認・増強し、従来の専守防衛原則を捨てる大転換だ。伴って軍事費をGDP比2%水準へ増大させる。これは、2015年の安全保障関連法(戦争法)で集団的自衛権行使を容認し米軍とともに海外で戦えるようにして以来の大転換になる。もちろん「専守防衛を捨てず、国民を守るためにやむを得ない必要最小限の反撃能力」と言い訳をしているが、「敵」の攻撃を察知して敵基地や司令部を叩く能力は先制攻撃能力になり、報復で日本が叩かれる覚悟がいる。しかも「敵」の攻撃力を殲滅する必要があるから、技術的にも量的にも軍事力拡大競争の泥沼にはまることになる。憲法9条で戦争放棄と戦力不保持を掲げる日本が、このような道に進んで良いのか。国会で審議を尽くし、国民の議論と納得を得なければならない大問題だ。閣議だけで勝手に決めて強行することは許されない。
 また、敵基地攻撃能力に必要な軍事費について、岸田首相は増税による国民の負担を求めた。財源として、法人税やたばこ税の増税、復興特別所得税の転用等を検討した。これには与党・閣内からも「国債発行、景気回復による税収増などの道を閉じる」等の批判が続出し、財界からも「法人税を増やされたら賃上げができない」と批判された。来年度は実施せず先送りとの観測も出ている。首相支持率は、物価上昇、旧統一協会問題、閣僚らの不祥事で下がり続けて来たが、岸田増税提起の時点で、ついに危険水域の20%台に落ち込んだ。しかし、与党も財界も増税反対だと喜ぶ場合ではない。増税の原因である「敵基地攻撃能力」強化を容認した上で、「増税提案の順番が良くない」と批判しているに過ぎない。
 今回の安保関連3文書は、日本を軍備拡張競争と増税の道に向かわせる、憲法違反の9条実質改憲だ。断固反対しよう。

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「対案」の検討の形跡すら見えない
〈柳沢協二さんのウォッチ安全保障〉




 閣議決定された安保関連3文書には、「反撃能力の保有」「中国の戦略的挑戦」といった勇ましい言葉が並んでいる。世論調査では、防衛力強化の方向性をやむを得ないと受け止める声も多い。ウクライナの戦争や、台湾、北朝鮮を巡る情勢が緊迫し、戦争への不安を感じているからだ。
 戦争の不安から「戦争に備えなければ」という発想が出てくる。一方、軍事衝突が起きれば国民の犠牲は避けられない。国民を守るには「戦争を回避しなければ」という発想が必要で、安全保障の目標を戦争の勝利に置くか、戦争の回避に置くかで政策は大きく違ってくる。だが、今回の3文書は防衛力強化の理由付けであり、「戦争が不安だから防衛力を増強する」という発想に終始している。
 例えば、敵基地攻撃は「やられたらやりかえす」という戦争の備えであり、それが抑止になるという論理だ。ただ、戦争に備えるには相手を上回る力と、国民を完全に防護する対策が必要になるのに、その見通し、つまりリスクが示されていない。政府も「国民が1人ぐらい死んでも良い」とは考えていないだろう。
 戦争を回避するには、政治的な相違があることを前提にしたお互いの自制と対話が必要だ。例えば「台湾有事」についても、米中台それぞれに自制を求める外交という「対案」があるはずだが、検討の形跡すら見えない。
 防衛費の財源が決まらないなど、積み残された論点はあまりにも多い。コストとリスクを説明し、「対案」を含めて議論することが求められる。(東京新聞12月17日付)

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【九条噺】

 昨年末に我家や隣近所の屋根が全て真っ白になるほど雪が積った。高知市でも14㎝の積雪だったという。それより遥かに酷いのは新潟県など北陸の日本海側で、長時間の車の立往生や落雪による死亡事故も発生した▼地球が温暖化しているのなら、雪は少なくなるのではないのかと思うが、そんな単純な話ではないようだ。実は地球が温暖化しているから日本海側の雪は多くなるという。どういうことか▼今年はラニーニャ現象の影響で赤道付近の太平洋西部の海水温が高くなっている。その影響もあり日本上空を通過する偏西風は平年のコースと異なり、大陸東部で北寄りに、日本付近で南寄りの蛇行状態となっている。そうなると強烈なシベリア寒気は日本に流れ込みやすくなるという▼地球温暖化に加え、太平洋西部の海水温上昇の影響で日本海は平年より2℃ほど高くなり、海水温が高い日本海から多量の水蒸気が発生し、そこに、シベリアの強い寒気がぶつかり、大量の雪を日本海側に降らせるということのようだ▼464号の「九条噺」で地球温暖化が台風の増加をもたらしていることを取り上げたが、冬には日本への豪雪をもたらすことも分かった。夏の線状降水帯と同じような雪の「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」も観測された▼地球温暖化は夏も冬も異常気象をもたらしている。地球温暖化は少し暑くなったという話ではない。我々の生活に非常に大きな影響を与えていることを理解しなければならないだろう。(南)

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政治を変えるために力を合わせよう⓵
小林節氏(慶応大学名誉教授)




全国革新懇の代表世話人になって

 憲法改悪を打ち破ることが大きな課題ですが、そのためには左派・リベラルと中間派が手を握ってたたかわなければなりません。もともと右にいた私が、いま左派・リベラルの人たちと付き合っていて感じるのは、頑固な人も多いが、人がいい。だから話もできる。しかし日本人は議論がヘタで、少し意見が違うと交わらない。その点、革新懇運動はいろんな人が参加しているから、私も参加できるし、議論できる。革新懇運動は議論のできない日本人が垣根を越えて議論ができるようになる、そのキッカケになるのではないか。左派・リベラルと中間派が連帯して改憲策動を打ち破る、革新懇がそのカナメの役割を果たせるように発展してもらいたいし、私もその一助になりたいと考えています。

ボロボロの岸田政権

 菅政権の末期に似てきましたね。自民党の世襲政治の末期症状があらわになってきたと総括しています。本来なら、この点からもいまこそ政権交代が求められているのですが…。世襲議員というのは、結局、何もできない人。細川政権、民主党政権の経験から自民党は、官僚の人事権も掌握し、絶対に権力を手放さないために政治家、官僚、財界の鉄の三角形を固めた。アベノミクスで、お友達など一部が甘い汁を吸ったが、日本経済は沈下し、庶民が落ちこぼれた。この責任は自公政権にあります。
 私は40年前から自民党と付き合い、改憲をすすめる立場から、彼らと議論してきた「経歴」があります。自民党にとって改憲の最大のカベは何か、といえば国民投票で過半数の賛成が必要ということです。それができるかという不安です。ここに深い悩みがあるのです。
 自公両党は、たしかに国会では改憲発議に必要な多数議席を持っています。しかし、それは小選挙区制度のマジックで多数を取っているにすぎません。自民党の改憲案に国民多数が賛成しているわけではありません。自民党の改憲案(12年)は、「大日本帝国憲法(明治憲法)現代語訳」と見紛うシロモノです。改憲4項目(18年)では、より飲み込ませやすくしていますが、そのねらいは同じです。

自民党改憲案のウソを具体的に暴け

 この自民改憲案のウソを徹底的に暴いていくことが決定的に大事です。自衛隊を明記するだけといいますが、これまでの「必要・最小限」から「最小限」を削り、「必要性」だけで出撃できる自衛隊になる。「戦争法」を前提にした違憲な「交戦権」を自衛隊が堂々と「海外で」事実上行使する、つまり「戦争」ができる、普通の軍事大国、9条の無い国になってしまうという仕掛けです。(全国革新懇ニュース1月10日号より抜粋)(つづく)

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12・26和歌山緊急行動実施
平和を壊す「安保関連3文書」閣議決定撤回!




 12月26日、「憲法九条を守るわかやま県民の会」「憲法9条を守る和歌山市共同センター」が呼びかけた「増税・軍拡NO!くらしと教育を12・26和歌山緊急行動」が、和歌山城ホール前で行われ、30名が参加しました。
「ヤメヨ大軍拡・大増税」「敵基地攻撃能力の保有は憲法違反」「9条いかし平和外交を」などと訴えるプラスターや横断幕を掲げて、寒さと降り出した小雨の中、通行車中や沿道の人に元気にアピールしました。



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みなべ「九条の会」133回目のピースアピール


 みなべ「九条の会」は1月8日、岸田内閣が専守防衛を投げ捨て「敵基地攻撃」の実施と防衛予算を大幅に増やし、国民に押し付ける方向へ大きく舵を切った中で、そのことを大いに訴えようと、133回目のピースアピールを実施しました。
 「ロシアのウクライナ侵略が続く中、世界中で防衛力を抜本的に強化する動きが広がっています。岸田首相は反撃能力を保有する必要があるとし、先制攻撃を行う危険性があります」と訴えました。

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(2023年1月12日入力)
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