「九条の会・わかやま」 471号 発行(2023年1月22日付)

 471号が1月22日付で発行されました。1面は、第103回「ランチタイムデモ」実施、敵基地攻撃は憲法9条・国際法違反の先制攻撃 戦争準備でなく 9条を生かした平和の活動を 「九条の会・わかやま」事務局・田畑 安敏、九条噺、2面は、政治を変えるために力を合わせよう ② 小林節氏(慶応大学名誉教授)、「くしもと9条の会」が成人式でよびかけ、言葉「長射程ミサイル」  です
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

第103回「ランチタイムデモ」実施



 1月18日、2023年最初の第103回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が行われ、冬の好天の下、60人の市民が参加しました。
 本日のコーラー役は、前半が金原徹雄弁護士、後半は牧野ひとみさん(守ろう9条 紀の川 市民の会運営委員)が担当されました。参加者は和歌山市役所から京橋プロムナードまで「憲法こわす政府はいらない」「平和な未来を子どもに残そう」などと市民に訴え行進しました。
 ゴールの京橋プロムナードでは「岸田内閣は、『安全保障3文書』を閣議決定しました。憲法の平和主義を根底から掘り崩すこの動きに絶え間なく『NO』を突き付けていきましょう」と呼びかけがありました。



    ----------------------------------------------------------------

敵基地攻撃は憲法9条・国際法違反の先制攻撃
戦争準備でなく、9条を生かした平和の活動を
「九条の会・わかやま」事務局・田畑 安敏


 ロシアによるウクライナ侵略と北朝鮮や中国の動向報道のなかで、軍備増強があおられ、日本政府は「安全保障3文書」を閣議決定、GDP比2%以上へ大軍拡の道を進もうとしています。私は、日本国憲法の下での戦後の歩みをふまえれば、多くの国民がこの方向に懸念を示して当然ではないかと思っていましたが、世論調査では、過半数が賛意を示していると報道されており(質問の仕方にもよるが)、日本の針路が心配です。
 12月のNHK・Eテレの「100分de名著」は、精神科医・中井久夫の著書を取り上げていました。そのなかで、「人間が端的に求めるものは『平和』よりも『安全保障感security feeling』である。『安全保障感』希求は平和維持の方を選ぶと思われるであろうか。そうとは限らない。まさに『安全の脅威』こそ戦争準備を強力に訴えるスローガンである」との中井の言葉を紹介しています。この「『安全の脅威』こそ戦争準備を強力に訴えるスローガン」の言葉どおりの事態が今の日本社会で引き起こされていると思いますし、多数の国民や政党が戦争に賛同していった戦前の日本社会に思いをはせると、このことをどう克服していけるか、といったことを真剣に考えさせられます。
 岸田首相は、国民の命と暮しを守るために軍備増強と言いますが、憲法9条を無視して突っ走る軍事大国化路線こそ、戦後培ってきた平和を希求する日本の国是に対する世界の信用を失うとともに、国民生活を塗炭の苦しみに追い落とす道でしょう。懸念や不安が増幅する中で私が元気を得たのは、浜矩子・同志社大学教授の次の言葉です。「だけど本当は周辺事情が危うくなればなるほど、『断じて日本は平和主義を貫く』と言うべき。それが日本の役割」「周辺国との緊張を高める大軍拡こそが問題なのだということを声高に言い続けましょう」。大軍拡の道に抗して、戦争準備ではなく、日本国憲法9条を生かして平和のために活動することこそ、私たち日本人の役割であることに確信をもって訴えていきたいと思います。

    ----------------------------------------------------------------

【九条噺】

 冬来りなば春遠からじで、冬至も過ぎ、少しずつ夜明けが早く日没が遅く、日長になり、七草粥、成人の日、十日戎等の行事に季節の足取りを感じる▼こうして暖かさを感じる一方で、プーチンのウクライナ侵略戦争が間もなく1年を越え、国内は岸田政権が進める軍事国家化が暗い影を落すという、明暗の同時進行で気が晴れない日々でもある▼私事で恐縮だが、昨年冬に焼き芋を始めてケーキとパンにも手を染めたのにちなみ、サツマイモについて記したい▼「サツマイモ(薩摩芋・甘藷)」は、中米原産で、南米ペルーに伝わり古代から栽培された。15世紀末にコロンブスがスペイン女王に献上してヨーロッパに広まった。日本へは17世紀初めに中国から琉球を経て薩摩に伝わった。大飢饉の折に薩摩で餓死者を出さなかったことから救荒作物として注目され、1735年に八代将軍徳川吉宗の命で蘭学者の青木昆陽が、種芋を取り寄せて小石川御薬園で試作してから、東日本でも栽培が広まった。ちなみに私が好む、ねっとり型で甘い銘柄は茨城県の特定地域の特産だ▼20世紀の第二次世界大戦中は、軍事統制下の食糧難からサツマイモ栽培が奨励された。民俗学者柳田国男の『木綿以前の事』に曰く「藷(いも)が来た以上は作って食い、食えば一旦は満腹して是でも住めると思い、貧の辛抱がしやすくなって、結局子孫の艱難を長引かせたとも見られるが…」▼芋が飢饉や戦争による「貧の辛抱」でなく平和に楽しめることを願う。(柏)

    ----------------------------------------------------------------

政治を変えるために力を合わせよう ②
小林節氏(慶応大学名誉教授)




自民党改憲案のウソを具体的に暴け
 緊急事態条項では、首相が緊急事態を宣言したら、内閣は行政権に加えて、国会から立法権と財政権を奪い、地方自治体から自治権を奪い、国民は公の命令に従う義務を負うことにしている。だから、抽象的に「憲法を守れ」と繰り返すだけでなく、自民改憲案の危険、愚かさ、ウソを具体的に徹底的に暴き、論破することがカギです。そうすることによって国民多数が反対し、発議できないように追い込んでいくことにつながるのです。
 振り返ると、改憲派にとって岸元首相の「直系」、安倍元首相の存在というものが大きかった。自民党は改憲を党是とする政党ですが、歴代首相は「自分の内閣では改憲発議はしない」と明言してきたし、そうしないと政権を維持できなかった。
 それを打ち破ったのが安倍元首相で、歴史のターニングポイントでした。その安倍一強体制の下、明治憲法的な改憲派と安倍氏に取り入るための改憲派が合流して推進した。しかし安倍元首相が亡くなり、エンジンをなくした。後者は元々カネや票が大事な人たちですから、外交や防衛は票にならないと思っており、本当の意味では改憲に執着がない人が多いという面も知っておいてください。しかも自民党内にも復古的な憲法観を苦々しく思っている人もいますし、自民と公明間の改憲条文案の合意もそう簡単ではありません。こうした点で私は楽観論者です。

敵基地攻撃論の本質は先制攻撃
 いま政府が打ち出している敵基地攻撃論は、議論することそのものが愚かなものです。現在のミサイルは発射台も移動式で、極超音速や変則軌道など「発展」し、大量にある。50年代の法理的な議論は通用しない。いま本当に、軍事合理的に考えるなら、敵の司令中枢部を壊滅的に攻撃しなければならない。それを確実にするには先制攻撃しかない。しかしそれは憲法違反以前に国際法違反の侵略行為になる。さらにいえば国連憲章53条の敵国条項(制裁規定)があることも忘れてはいけない。だからこの議論は愚かなものだというのです。
 専守防衛から大転換し、米軍の二軍として自衛隊が海外で戦争する道をひらいたのは安保法制=戦争法です。ここを忘れてはならない。私のような「自衛隊は合憲、専守防衛の精鋭な自衛隊は必要」という者と自衛隊は違憲と思っている人も、一致して9条改悪の企てを許さないことがいよいよ大事になっているときです。「君は君、我は我、されど仲良し」で行きましょう。

共闘こそ進むべき道
 いまこそ政権交代が必要です。野党共闘が絶対に必要だし、頑強な自公政治を打ち破るためには、共産党の力、その勇気と知恵が絶対に不可欠です。共闘から共産党をはずそうなんていう考えが理解できません。「市民と野党の共闘」を守り、発展させていくためには、革新懇が大切ということは私の経験からもハッキリしている。楽しく、がんばりましょう。(全国革新懇ニュース1月10日号より抜粋)(おわり)

    ----------------------------------------------------------------

「くしもと9条の会」が成人式でよびかけ
4種の資料を配布




 「くしもと9条の会」は、1月3日に行われた串本町の「2023年・二十歳の集い(12時~)と「21年の成人式(15時~)」で「呼びかけ文」「和歌山県地評発行の権利手帳」「世界の核兵器数と非核兵器地帯及び核兵器禁止条約の署名・批准国」「敵基地攻撃、際限のない撃ちあいに 国民に被害及ぶ恐れ伝える必要(『九条の会・わかやま』467号より)」の4種の資料を封筒に入れて、合計115部を配布しました。「成人おめでとうございます」と言って差し出すと、多くの人は「ありがとうございます」と言って受け取ってくれました。中には受け取らない人もいましたが、後で貰いに来てくれる成人もいました。(会の事務局長・上柳博さんより)

    ----------------------------------------------------------------

言葉 「長射程ミサイル」


12式地対艦誘導弾能力向上型

 敵基地攻撃を行うために必要な国産の長射程ミサイルの開発・改造状況です。

「12式誘導弾能力向上型」
 12式誘導弾は国産の地対艦ミサイルです。GPS誘導が装着され、発射後に目標が大きく移動しても、GPSによる補正で対応できます。このミサイルを能力向上型に改造中です。射程は1千㎞超。地上発射は26年、艦艇発射は28年、航空機発射は30年からの配備を予定しています。
(この配備が26年以降になるため、「トマホーク」を調達しようとしています)

「高速滑空弾」
 高速滑空弾は音速を超える速度でグライダーのように滑空して目標に向かうミサイルで、従来よりも迎撃が難しいとされ、18年度から開発を進めています。「早期装備型」と「能力向上型」が同時開発されています。後者の射程は2~3千㎞が目標。配備は26年度の予定。

「極超音速誘導弾」
 スクラムジェットエンジンを持ち、燃料を燃焼した噴射速度が極超音速になり巡航します。通常はマッハ6~8で運用され、対艦と対地の両方が検討されています。射程は2~3千㎞程度。

    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2023年1月21日入力)
[トップページ]