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澤地久枝さんが紙上で訴え

 年頭に思いかえそう
   戦争体験世代が命をかけてつかみとった「真理」を。

  「憲法を泣かせるな」を合言葉に!

 「九条の会」呼びかけ人で作家の澤地久枝さんが、憲法60年を迎える年頭にあたって、戦争中に大岡昇平氏と五味川純平氏がつかんだ「真理」の言葉を紹介し、現下の情勢を分析したのち、「『憲法を泣かせるな』を…今年の合言葉にしよう」と、4日付「朝日新聞」の「私の視点」で訴えました。以下に引用します。

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【私の視点】
  ◆憲法60年 明るい年にしていくために

 フィリピン戦線でたたかった大岡昇平氏は、30代なかば、妻子ある身を戦闘に投じられ、死は目前だった。「いま日本が手をあげたら、いちばん困るのはルーズベルト大統領だな」と思う。ソ満国境の戦闘で命をひろった五味川純平氏は「戦争は経済行為だ」と見ぬいていた。
 二人のすぐれた文学者の指摘を、この年頭にしっかり思い返したい。戦争体験世代が命をかけてつかみとった「真理」の意味を。
 06年の秋以降、生活が苦しくなったという人たちが増えた。保険料があがり、医療費の自己負担は増え、年金の手どりは減って、この国が「富国強兵」ラインを行く結果が、生活をむしばみはじめている。
 昭和前期の、戦争前夜の世相と似ていますか、という質問は多い。人々が口をつぐみ、世のなりゆきをうかがって腰を引く、その点では、まったくよく似た世の中がまたしても姿をあらわした。
 この国には今も「お上(かみ)」に対する脅(おび)えが生きているのか。ことなかれでゆくことこそ、安全コースという守りの姿勢はなぜなのか。
 このままでは、歴史はくりかえされる。教育基本法をゆがめ、自衛隊法を変えて公然たる軍隊にし、戦争できる方向が選択された。そこに主権者である国民の意志はどれだけ反映されているのか?主権在民をマンガにする政治がまかり通ったのだ。
戦死者ゼロ、福祉国家を目ざした現憲法下の実績の否認がはじまろうとしている。さらにこの反動的選択は、同盟国アメリカの要望への答えであること。つまりは主人持ちの政治であること。命をさしだすだけでなく、アメリカの膨大な軍事費への助っ人の一面をもつことをかくさない。
 大国の誇りにこだわりながら、この国の政治家たちは、従属の現実を無視する。そのアメリカは、イラク侵略の泥沼にあえぎ、まさにもてあましている。小泉前首相はイラク出兵を速断しながら、責任をとらずに退陣、安倍内閣はその政治路線の具体化に忙しい。  国内の民情悪化とその疲弊は避けがたくなった。選挙で議席を失えば、政治家はタダの人。確実に政治は変わる。政治のあまりの悪さ、露骨さに、危機感をもつ市民が全国に生まれた。もうこれ以上の逆コースは認めない。悪法は押し返し、憲法本来の国にもどろうという市民の意志。悪政はおとなしい市民たちを揺さぶり、無視できない運動を拡大しつつある。希望のタネ、希望の灯は、市民運動によって守られる。
 市民は自衛する。武器なきたたかいだ。考えて思慮を深め、おのれ一人の思いからはじめて、おなじ思いの人とつながる発信。負けることのできない、あやうい政治の動きになお、希望をもちつづける熱源は、一人ひとりの心、決意にこそかかっている。「憲法を泣 かせるな」を、施行60年目にあたる今年の合言葉にしよう。
 歴史の犠牲となった死者たちを生かす道は、私たちの掌中にある。いかに状況が錯綜(さくそう)し、本質をかくしても、二人の文学者の言葉は、本質を見抜く鍵、真理として私たちを支えている。
(「朝日新聞」2007年1月4日 オピニオン面)

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(2007年1月6日入力)
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