安倍首相の従軍慰安婦強制の否定発言(続報)
「『狭義の強制性』の証拠はなかった」
3月1日の記者会見で安倍首相が、従軍慰安婦問題で軍の関与や強制性を否定する持論を明言し、「河野官房長官談話」の見直しに含みを持たせたことが波紋を呼んでいます。記者団とのやりとりなど、マスコミの続報を引用します。(朝日新聞3月4日付)
[07年3月4日 柏原]
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首相・慰安婦発言、海外に波紋
「強制性」解釈にズレ
従軍慰安婦に対する日本政府の姿勢に改めて関心が集まっている。1日の安倍首相の発言が海外
で波紋を広げているほか、米下院では慰安婦問題で首相の公式謝罪を求める決議案採択の動きもある。首相は軍当局の関与と「強制性」を認めた河野官房長官談話を引き継ぐ立場を変えていないが、談話が示す「強制性」の定義をめぐる解釈のズレも、様々なあつれきを生む背景にあるようだ。
首相が河野談話継承を表明したのは、中韓両国訪問を控えた昨年10月上旬の衆院予算委員会だ。
この時、首相は「家に乗り込んで連れて行った」ことを「狭義の強制性」とし、「行きたくないが、そういう環境の中にあった」ことを「広義の強制性」と説明。そのうえで「今に至っても、この狭義の強制性については事実を裏付けるものは出てきていなかったのではないか」と指摘し、「広義の強制性」を認めた河野談話を引き継ぐという考え方を強調した。
河野氏は97年の朝日新聞のインタビューで「『政府が法律的な手続きを踏み、暴力的に女性を駆り出した』と書かれた文書があったかと言えば、そういうことを示す文書はなかった。けれども、本人の意思に反して集められたことを強制性と定義すれば、強制性のケースが数多くあったことは明らかだった」と語っている。
首相が1日、記者団とのやりとりで「当初、定義されていた強制性」について「裏付けるものは
なかった」と語ったのも同じ趣旨だ。
ただ、国内には河野談話そのものを見直す動きもある。自民党の有志議員でつくる「日本の前途
と歴史教育を考える議員の会」小委員会は「史実を踏まえて、より実証的な表現に修正すべきだ」との提言をまとめる方向で検討を進め、近く首相に申し入れる予定だ。
一方、首相発言をきっかけに、1月末に米下院に提出された従軍慰安婦問題をめぐる決議案にも
注目が集まり始めた。同様の決議案はこれまでもあったが、日本政府が共和党の下院議長らに働き
かけて本会議採択を回避してきた。ところが、昨秋の中間選挙で多数派となった民主党のペロシ氏
が下院議長に就任。下院外交委員長も人権派として知られる同党議員になり、今回は採択の可能性
があると見られている。(藤田直央、ワシントン=小村田義之)
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【首相やりとり】
安倍首相と記者団が1日に行ったやりとりの概要は次の通り。
――自民党議連で談話見直しの提言を取りまとめる動きがあります。
「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった。その証拠はなかったのは事実ではないかと思う」
――強制連行の証拠がないにもかかわらず(強制性を)認めたという指摘もあります。談話見直
しの必要性は。
「(強制性の)定義が(「狭義」から「広義」へ)変わったということを前提に考えなければな
らないと思う」
――(議連の動きは)中韓との関係に水を差す懸念はありませんか。
「歴史について、いろいろな事実関係について研究することは、それはそれで当然、日本は自由
な国だから、私は悪いことではないと思う」
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【キーワード】 河野官房長官談話
韓国人の元従軍慰安婦らが91年末に日本政府に補償を求めて提訴したのを受け、宮沢内閣が事実関係確認のために調査を開始。その結果を踏まえ、93年8月に河野洋平官房長官(現衆院議長)が談話を発表した。談話では慰安所の設置や管理、慰安婦の移送に対する軍の関与を認定し、従軍慰安婦への「おわびと反省の気持ち」を表明した。慰安婦に対する「強制性」については、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」と表現している。
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韓国政府が遺憾を表明
【ソウル=高槻忠尚】 韓国外交通商省は3日、安倍首相の慰安婦をめぐる発言について「歴史的な真実をごまかそうとするもので、韓国政府は強い遺憾を表明する」とする同省当局者の論評を発表した。
(朝日新聞3月4日)
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(2007年3月4日入力)
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