憲法60年 朝日新聞世論調査で
  「憲法9条が平和に貢献」78%
  安倍政権での改憲に 「賛成」40% 「反対」42%

 5月3日の日本国憲法施行60年を前に、朝日新聞が行なった全国世論調査の結果、「改憲必要」が58%あるものの新権利などの理由が多く、9条が「平和に貢献」してきたことを評価する回答が78%の多数にのぼりました。安倍政権のもとでの改憲には「賛成」40%「反対」42%で反対がやや上回りました。
 この結果は、安倍政権が性急に「戦争する国」をめざすことに批判的な民意の反映であり、全国の九条の会の運動が前進していることをも示しています。朝日新聞の報道を以下に引用します。  [サイト管理者]

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憲法60年 本社世論調査
   9条「平和に貢献」78%
  改憲必要58% 新権利望む

 3日で施行60年を迎える日本国憲法。朝日新聞社の全国世論調査(電話)で、憲法第9条が日本の平和に「役立ってきた」と評価する人が78%を占めた。憲法改正が「必要」と思う人は58%にのぼるが、改正が必要な理由を聞くと「新しい権利や制度を盛り込む」が8割に達する。自衛隊を「自衛軍に変えるべきだ」は18%にとどまり、自民党がめざしている改憲の方向と民意との開きが目につく。安倍政権のもとでの憲法改正に「賛成」は40%、「反対」は42%で二分された。

「自衛軍」支持は18%

 調査は4月14、15の両日、内閣支持率などと同時に実施した。

 憲法改正を巡っては、自民党が05年に、9条を改正して「自衛軍」を持つことなどを盛り込んだ「新憲法草案」を発表。安倍首相は「自分の政権での改憲」をめざし、7月の参院選で憲法問題を争点とする構えだ。

 調査では、憲法改正が「必要」58%に対し、「必要ない」は27%。一方、9条を「変える方がよい」は33%で、「変えない方がよい」の49%を下回る。自衛隊の存在を憲法の中に書く必要が「ある」は56%。しかし、「自衛隊を自衛軍に変える」ことへの支持は18%で、「自衛隊のままでよい」が70%にのぼった。9条を「変える方がよい」人でも、「自衛隊のままでよい」が52%と過半数だった。

 調査方法が異なるが、憲法改正について「必要」と思う人は昨年4月調査(面接)で55%、05年4月調査(同)で56%。9条が日本の平和に果たした役割も、昨年4月調査で74%の人が評価している。改憲志向と9条への評価が共存する民意の状況が続いている。

 憲法改正が「必要」と答えた人に、その理由を三つの選択肢から選んでもらうと、84%の人が「新しい権利や制度を盛り込む」を挙げた。「自分たちの手で新しい憲法を作りたい」は7%、「9条に問題がある」は6%で、改正の理由としては少ない。占領下で作られたという制定過程を問題にしたり、9条改正を強調したりする自民党の改憲論と、国民の意識の違いが目立つ。

 憲法改正が「必要ない」理由では、「9条が変えられる恐れがある」が39%で最も多く、次いで「国民に定着」33%、「自由と権利を保障」25%。改憲が必要と思う人とは対照的に、9条を強く意識する人が多い。

 安倍政権のもとでの改憲について、「賛成」はすべての年代で3割台から4割台だった。憲法改正が「必要」という人では59%が安倍政権の改憲に「賛成」だが、「反対」も29%あった。
 (朝日新聞 2007年5月2日 1面)

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[関連記事:同新聞同日 5面]

「安倍改憲」民意と距離感
  「現政権で改憲」 賛成40% 反対42%

 憲法が施行60年を迎えるのを機に、朝日新聞社は世論調査(電話)を実施し、憲法に対する国民の意識をさぐった。憲法改正は「必要」が半数を超える一方、9条が平和に役立ってきたという評価は高く、守るべきだとの意見は強い。自衛隊の明記を求める人は過半数だが、自民党が掲げる「自衛軍」に賛同する声は少ない。9条改正を柱に「戦後レジーム(体制)からの脱却」をめざす安倍政権の改憲姿勢と民意との距離感が浮かび上がる。

【憲法60年 本社世論調査】
◇この調査は川本俊三、吉田貴文、右京幸宗、菊地敏雄、
進藤健一、平田美鶴、浜本清一が担当しました。

「押し付けられた」 21%

 「私の内閣で憲法改正を目指していきたい」という安倍首相。その意気込みを国民はどう受け止めているのか。安倍政権のもとで憲法改正を実現することへの賛否を聞いたところ、「賛成」が40%、「反対」が42%と評価が二分した。
 憲法改正については、「必要がある」という人が58%にのぼり、「必要はない」の27%を大きく上回るのに、安倍政権下での改憲に対しては慎重な見方が強まる結果となった。憲法改正が必要という人でみても、「安倍政権の改憲」に「賛成」は59%で、「反対」が29%だった。
 安倍政権の改憲への賛否を分けるのは何か。「賛成」の人と「反対」の人の意識を比べると、▽自衛隊の存在を憲法に書く必要があるか▽自衛隊を自衛軍に変えるべきか▽自衛隊の海外活動をどこまで認めるか▽9条を変える方がよいか、という質問に対する答えで差異が目を引く。
 とりわけ9条を巡っては、安倍政権の改憲に「賛成」の人では「変える方がよい」が53%だったのに対し、「反対」の人では20%で、「変えない方がよい」が73%と大きく上回った。「自衛隊を自衛軍に変えるべきだ」も、「賛成」の人で30%、「反対」の人で11%と落差がある。自衛隊の海外活動について「必要なら、武力行使も認める」が、「賛成」の人で 31%と「反対」の人の15%の2倍になっているのも特徴的だ。
 現在の自衛隊は認めるが、自衛軍にしたり、海外での武力行使に踏み切ったりする必要はないし、9条改正にも消極的。安倍政権の改憲に「反対」の人からはそうした志向が透けてみえる。
 憲法改正が「必要」と答えた「改憲必要派」を分析しても、安倍政権の改憲への賛否によって同様の傾向がみられる。9条を「変える方がよい」は「改憲必要派」全体では50%だが、安倍政権の改憲「賛成」の人で59%、「反対」の人で37%。「自衛隊を自衛軍に変えるべきだ」は「改憲必要派」全体では27%だが、安倍政権の改憲「賛成」の人で33%、「反対」の人で17%だった。
 いまの憲法はアメリカに押しつけられたものという意見がある。安倍首相は「憲法は日本が占領されている時代に占領軍の深い関与のもとで制定された」と述べ、日本人自らの手で新しい憲法を書こう、と主張する。
 今回、憲法は押しつけられたものと思うかと尋ねると、「押しつけられたものだ」が21%、「押しつけられたものではない」は14%で、「どちらともいえない」が63%と最も多かった。いわゆる「押しつけ憲法論」は、国民の共感を集めているとはいえないようだ。

 自衛隊の「変化」は警戒

 いまの自衛隊は受け入れるが、大きな変化は望まない―。自衛隊を巡る国民の意識をさぐる と、そんな姿が浮かび上がる。
 その存在が憲法に明記されていない自衛隊だが、憲法に違反していると思うかどうかを聞く と、「違反していない」が60%と、「違反している」の23%を上回った。「違反していない」は若い人ほど多く、20代では73%にのぼる。
 また、自衛隊を憲法に書く「必要がある」は56%で、「必要はない」の31%を上回った。自衛隊を認め、憲法にきちんと位置づけるべきだという意見は根強い。
 ただ、自衛隊が大きく変わることには警戒感があるようだ。
 自民党の新憲法草案で「自衛軍」に改めるとされた自衛隊の名称問題。憲法の条文に書くかどうかは別にして、どうすべきかを聞くと「自衛軍に変えるべきだ」はわずか18%で、「自衛隊のまま」が70%を占めた。
 「自衛軍に」は自民支持層で24%、憲法改正の「必要がある」人でも27%と少数で、ともに6割以上は「自衛隊のまま」と答えた。男女別では「自衛軍に」は男性27%、女性11%と差が出た。
 自衛隊の海外活動が今後、どこまで認められるかでも現状志向が明確だ。「武力行使をしなければ海外での活動を認める」が64%と圧倒的に多く、「必要なら武力行使も認める」は22%にとどまる。国連平和維持活動(PKO)や復興支援など武力行使を伴わない海外活動を積み重ねてきた自衛隊の実績を評価する半面、そこから一歩を踏み出すことには抵抗があるとみられる。
 自衛隊の憲法への明記を求める意見が過半数にのぼる一方、9条を「変えない方がよい」も多数だ。自衛隊も、9条も大切にしたいという国民の現実的な考えがにじむ。

 9条改正反対49%

 憲法改正の焦点の9条について、「変える方がよい」は33%で、「変えない方がよい」が49%と半数近かった。調査方法が異なるため単純に比較はできないが、05年の面接調査では「変える方がよい」36%、「変えない方がよい」51%でほとんど変わっていない。
 憲法改正の「必要」(58%)が半数を超えるのに、9条改正では「変えない方がよい」が上回る。その背景には9条が果たしてきた役割への高い評価があるようだ。
 日本がこの60年間、戦争をせずに平和であり続けたことに9条が「役立ってきた」と考える人は78%。「そうは思わない」は15%と少数だ。
 「役立ってきた」と答えた人は、年代や支持政党別にみてもあまり差はなく、憲法がアメリカに押しつけられたと考える人でも75%にのぼる。
 9条が東アジア地域の平和と安定に「役立ってきた」という人も58%と過半数で、「そうは思わない」は27%だった。
 これら二つの質問で「役立ってきた」と答えた人では、9条を「変えない方がよい」がともに57%で、9条維持の気持ちが強い。
 憲法改正が「必要」と答えた人のうち、9条を「変える方がよい」は50%と半数。質問の角度を変えて、憲法改正が「必要」という人に改正が必要な理由を聞くと、「9条に問題があるから」はわずか6%で、優先度としては高くない。
 憲法施行からほぼ30年後の78年と50年後の97年に、「戦争を放棄し、軍隊は持たない」と決めたことはよかったか、9条の評価を聞いた。両調査とも8割が「よかった」と回答。9条への高い評価は一貫しているようだ。

 「改憲必要」20代で78%

 憲法改正について、「必要がある」は全体で58%、「必要はない」は27%。すべての年代で「必要」が多いが、若年層ほど改憲志向が強い傾向がくっきりと表れた。
 「必要」は20代では78%に達し、「必要ない」の13%を圧倒。「必要」は年代が上がるにつれて減り、逆に「必要ない」が増える。70歳以上では「必要」40%、「必要ない」36%と拮抗する。
 「必要」「必要ない」の理由を選んでもらうと若年層は高齢層ほどには「9条」を考慮していない様子も浮かび上がる。
 「必要」の理由は、20〜40代では「新しい権利や制度を盛り込むべきだ」が9割前後に達し、「9条に問題がある」は高齢層より少ない。「必要ない」の理由でも、「9条が変えられる恐れがある」が40代以上では最多だが、20、30代では「国民に定着し、改正するほどの問題点はない」の方が多かった。
 「安倍政権の改憲」では、「賛成」が「反対」を上回るのは20、30代だけで、40代以上では「反対」が多数。ただ、年代による差は「憲法改正」に比べてぐっと縮まる。
 「賛成」は最多の20代でも48%で、すべての年代で3〜4割台。「反対」も各年代3〜4割台だった。改憲「必要」が多かった若年層ほど、「安倍政権の改憲」との落差が目立つ結果となった。
 9条の改正については20代で「変える」「変えない」がほぼ並んだが30代以上では「変えない」が4〜5割台で、「変える」を上回った。

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「自民」「公明」で意識のずれ

 憲法改正について、「必要がある」は自民支持層で68%と最も高く、民主支持層64%、公明支持層55%の順だった。
 調査方法が異なるため単純に比較はできないが、昨年の調査(面接)でも自民支持層58%、民主支持層56%、公明支持層58%と高めだった。今回も与野党の枠を超え、この3党の支持層では改憲志向が目立つ。
 共産支持層では「必要がある」は28%、社民支持層では11%だった。
 一方、安倍政権のもとでの憲法改正について、自民支持層では賛成が56%と過半数だが、同じ与党でも公明支持層では賛成44%、反対39%と割れ、「安倍改憲」への意識のずれがみられる。
 民主支持層では賛成32%、反対57%で、憲法改正が「必要」という態度が逆転。安倍首相がめざす改憲への対決姿勢が浮き彫りになった。
 9条の改正については自民支持層で「変える方がよい」が43%で、「変えない方がよい」の41%をわずかに上回った。他の政党支持層ではいずれも「変えない」が57%で「変える」28%の2倍だった。「変えない」は民主支持層で55%、共産と社民の各支持層で8割前後にのぼった。

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(2007年5月3日入力)
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