「投票率が一定水準上回る必要ある」が圧倒的世論
  ― 朝日新聞社説 ―

 国民投票法案は議論不足、強引に成立を急ぐなという立場から「朝日新聞」4月19日社説は、無視できない世論として「投票率が一定水準を上回る必要がある」が79%に達するのに、与党案にも否決された民主党案にも最低投票率の規定がなく、突っ込んだ議論がされなかったことに強く疑義を呈しています。以下に引用します。

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【社説】
(朝日新聞 2007年04月19日(木曜日)付)

国民投票法案―最低投票率を論議せよ

憲法改正の手続きを定める国民投票法案について、無視できない世論が明らかになった。

 「投票率が一定の水準を上回る必要がある」と考える人が79%にも達し、「必要がない」の11%を大きく引き離した。朝日新聞社の世論調査である。

 国民投票法案の審議は参院に舞台を移したが、衆院を通過した与党案にも、否決された民主党案にも、投票が成立するための投票率に関する規定はない。

 共産、社民両党は一定の投票率に達しなければ投票自体を無効にするという最低投票率制の必要性を指摘してきた。しかし、これまでの審議では突っ込んだ議論にならなかった。

 たとえば韓国では、有権者の過半数が投票しなければ無効になる。英国では、有権者の40%が賛成しないと国民投票は成立しないという最低得票率のハードルを設けている。

 国のおおもとを定める憲法の改正では、主権者である国民の意思をどれだけ正確に測れるかが重要な論点のはずだ。憲法96条は国民投票で過半数の賛成による承認が必要としているが、あまりにも少数の意見で改正される恐れを排除するには最低投票率制は有効だ、と私たちも考える。

 仮に投票率が4割にとどまった場合には、最低投票率の定めがなければ、有権者のわずか2割の賛成で憲法改正が承認されることになる。それで国民が承認したとは、とうてい言えまい。

 与党や民主党には、否決を狙ったボイコット戦術を誘発するとか、国民の関心が低いテーマでは改正が難しくなりかねない、といった反対論が根強い。だが、主権者の意思を確かめることが、いちばん大切なのではないか。

 どうしても憲法改正を急がねばならないテーマが目の前にあるわけではない。与野党の合意が得られない今回の法案は参院で廃案にし、参院選のあとの静かな環境のなかで改めて議論し直すべきだ、と私たちは主張してきた。

 今回の調査では、この法案をいまの国会で成立させることについて、「賛成」が40%、「反対」が37%と二分された。

 1カ月前の調査では、今国会で成立させるという安倍首相の考えに「賛成」の人が48%、「反対」が32%だった。ふたつの調査を単純には比較できないものの、時間をかけてでも与野党の合意を求める世論の広がりがうかがえる。

 国民の8割が一定以上の投票率が必要と考えている。なのに、国会でほとんど議論がなされていない現状は、これまでの審議から重要な論点が抜け落ちていたことを与野党に突きつけている。

 この問題のほかにも、メディア規制の問題、公務員の政治的行為の制限など、論議が不足している点は数多い。

 参院選で安倍カラーを打ち出すためにといった与党の思惑で、強引に成立を急ぐようなことがあってはならない。

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(2007年4月19日入力)
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