「毎日」社説 自衛隊海外派兵恒久法の浮上も説明せず去る(7月1日)
小泉首相は任期最後の訪米で、ブッシュ大統領との間で日本の平和にとって見過ごせない危険な内容の共同文書に合意発表しました。
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社説:日米首脳会談 「盟友」依存超えた関係構築を 訪米した小泉純一郎首相とブッシュ米大統領がホワイトハウスで会談し、日米協力の成果を確認するとともに、「新世紀の日米同盟」と題した共同文書を発表した。 小泉・ブッシュ会談は昨年11月の京都以来13回目、日本の首相の米国公式訪問としては小渕恵三首相以来7年ぶりだ。9月に退陣する小泉首相にとって最後の公式訪米であり、双方には今回の首脳会談で過去5年間の日米関係を総括し、良好な関係をポスト「小泉・ブッシュ時代」につなげようという狙いがあった。 両首脳が会談の成果をまとめた文書を発表したのは01年6月の初会談で「揺るぎない同盟のパートナー」をアピールした共同声明以来。今回の共同文書に盛られた「世界の中の日米同盟」は03年5月にテキサス州のブッシュ大統領の私邸で行われた会談で使われた言葉だが、文書化されたのは初めてだ。 日米関係を表す言葉が「揺るぎない同盟」から「世界の中の同盟」に変わる過程では、国際情勢に大きな変化があった。01年9月の米同時多発テロとそれを受けた米国による対テロ戦争開始、北朝鮮の核問題の深刻化、中国の軍事力増強などだ。 不安定要因の増加で、アジア太平洋地域の平和と安定にとって日米安保体制を軸とした強固な日米関係の必要性は高まっている。小泉・ブッシュの5年間にはこうした時代背景があり、その中で大統領との個人的な親密さを武器に安定した関係を築いた小泉首相の功績は評価していい。 しかし、小泉首相が良好な日米関係を現実の国際政治に生かし切れなかったのは残念だ。典型的な例は国連安保理常任理事国入りの失敗である。中国の反対も大きかったが、米国の冷淡さは決定的だった。首脳の個人的関係に依存し総合戦略を欠いた小泉外交の限界を露呈したものだ。 東アジア外交の立ち往生は、首相の対米関係での功績を相殺した。北朝鮮の長距離ミサイル「テポドン2号」の発射準備や拉致問題のこう着化など猶予が許されない事態が生じているのに、中国や韓国のトップと話すら出来ないのはもどかしい。近隣国との不正常な関係はアジアでの日本の立場を不利にし、米国の利益にも反する。 共同文書は日米関係を「歴史上最も成熟した2国間関係の一つ」とし、自由、人権、民主主義などの普遍的価値観とテロとの闘い、市場経済推進などの共通の利益に基づく「世界の中の日米同盟」をうたっている。 自然災害や鳥インフルエンザ、エネルギー開発など幅広い分野への協力拡大は当然だが、問題は同盟強化を軍事面で裏打ちする再編後の在日米軍と自衛隊の連携のあり方である。その延長線上で、自衛隊の海外派遣を常時可能にする恒久法制定の問題もいずれ浮上してくるだろう。しかし、小泉首相はこうした重要課題について説明しないまま去ろうとしている。 ポスト小泉政権が引き継ぐ課題は重い。 毎日新聞 2006年7月1日 東京朝刊 社説 | |
(2006年7月4日入力)
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