この時期に憲法審査会規程の制定は道理ない ☆
[北海道新聞社説] 憲法審査会 規程の制定に道理ない(5月19日) 参院はきのうの本会議で改憲案を審議する憲法審査会の規程を制定した。 民主、自民、公明各党などが賛成し、共産、社民両党は反対した。 憲法審査会は2007年に成立した国民投票法に基づいて衆参両院に設置された。その運営手続きを定めた規程は衆院では09年に制定されている。衆参両院で審査会規程が設けられたことにより、形の上では国会での改憲審議の土俵が整った。 しかし改憲を政治日程に乗せる環境はなく、今回の制定にはなんらの道理もない。衆院ではいまだに委員が選任されておらず、参院でも審査会を動かすめどは立っていない。 ではなぜ、この時期に規程を設ける必要があったのか。 首をかしげるのは民主党の路線である。民主党は2年前の衆院での規程制定の時には野党として反対し、当時政権にあった自公両党の強引な採決を批判した。 ところが今回は一転して自公と足並みをそろえた。わかりにくい方針転換の背景には、規程制定を求める自民党などに配慮することで、野党が多数を握る参院での法案審議に協力を得たいとの思惑もあるようだ。 あまりに便宜的な対応である。憲法論議は数の論理によらずできる限り各党の合意を得て進めるべきだ。急ぐ必要のない規程制定について民主党から説得力のある説明はない。 民主党は規程制定に符節を合わせたように、党の憲法調査会を復活させ、前原誠司前外相を会長に充てる人事を決めた。憲法をめぐる党内論議を活性化させるためだという。 前原氏はこれまで集団的自衛権の行使に積極的な立場をとり、最近も改憲のハードルを下げる必要があるとし、厳格な改正手続きを定めた96条を改めるよう主張している。 もとより議員としての憲法論議は自由だが、こうした姿勢で党内の意見集約を図るつもりなら問題だ。 いま政治に必要なのは大震災の救援・復興に向けて、憲法25条が保障する「生存権」を確保するために全力を挙げることだ。 被災地ではなお11万人以上が避難生活を余儀なくされ、原発事故は収束の見通しが立たない。そうした状況下での改憲論議は的外れであるばかりか国民の支持も得られまい。 与野党は、欠陥だらけと評される国民投票法を放置してきた。同法は「任期中の改憲」を掲げた安倍晋三首相の下で強行されたが、参院特別委が付帯決議で求めた最低投票率など民主主義のルールにかかわる検討事項は全く論議されていない。 とりわけ民主、自民二大政党の責任は重い。成立の経緯と内容に問題が多い同法は廃止するのが筋だ。 |
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(2011年5月21日入力)
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