沖縄タイムス社説(2012.6.17)
[きょう市民大会]住民の声に耳を傾けよ
米軍普天間飛行場に対して使われる「世界一危険な飛行場」という形容は、決して誇張とはいえない。危険性は日米両政府とも認めている。
市街地のど真ん中にある普天間飛行場の周りには、9万人を超える人たちがひしめき合うように暮らしている。住宅地の上を、ひっきりなしに、ヘリが飛び交う。
学校の授業が中断されることもしばしばだ。
2004年8月に沖縄国際大学で起きた米軍ヘリの墜落事故は、「過去の事故」としてではなく、「未来の事故の予兆」と言うべきである。
だが事態は、危険性の除去とは逆の方向に進みつつある。「世界一危険な飛行場」に、墜落事故の絶えない「危険な垂直離着陸輸送機」が配備され、本島全域で日常的に飛行訓練する予定だというのだ。
普天間に配備予定のMV22オスプレイは、4月にモロッコで、乗員2人が死亡する墜落事故を起こした。空軍のCV22オスプレイも13日(現地時間)、米フロリダ州で、訓練中に墜落した。
住民の不安は募るばかりだ。県内8政党はオスプレイ配備にこぞって反対している。市町村も来週までにすべての議会で計画撤回を求める意見書を可決する予定だ。
宜野湾市など6団体でつくる実行委員会は17日午後2時から、宜野湾海浜公園屋外劇場で市民大会を開く。
今こそ政府は、オール沖縄の声を正面から受け止めなければならない。それができない政府に負担軽減を語る資格はない。
国防総省は配備計画に「変更はない」と言い、政府も配備中止を申し入れる考えのないことを明らかにしている。
だが、オスプレイ配備を「単なる機種の交代」と考えるのは大きな間違いだ。
なぜか。第一に、オスプレイ配備に対しては、安全性への不安が極めて大きい。
モロッコの事故もフロリダ州で起きた事故も、詳細な事故原因はまだ明らかになっていない。この段階で中途半端なデータをもとに安全を強調するのは、逆に不安をあおるようなものだ。
垂直離着陸攻撃機AV8ハリアーはかつて、沖縄など各地で何度も墜落事故を起こした。オスプレイも試作段階で墜落事故を起こし、最近になってまた、事故が相次いでいる。ハリアーもオスプレイも、固定翼機と回転翼機の機能を合わせ持つ。垂直離着陸機の操縦が難しいことは以前から指摘されていたことだ。
第二に、安全面で不安がつきまとうオスプレイが普天間に配備され、キャンプ・ハンセンやキャンプ・シュワブ、北部訓練場、伊江島補助飛行場などで縦横に訓練する予定であることだ。
普天間問題の解決に向けた展望も示さないまま、オスプレイを配備し、将来的に普天間飛行場の滑走路まで改修して、飛行訓練を続けるのは、許されない。
普天間を取り巻く現実は深刻だ。危険性を認識しているにもかかわらず、有効な手だてを講ずることができない、そのことが深刻なのである。