琉球新報社説(2012.6.17)

きょう市民大会 欠陥機配備あり得ない/命と人権守る決意を

 米軍普天間飛行場の返還合意から16年が過ぎたが、日米両政府は返還どころか、「世界一危険な基地」と言われるこの飛行場に、何度も墜落事故を起こしている「欠陥機」を配備しようとしている。
 宜野湾市ではきょう17日、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に反対する市民大会が開かれる。大会では普天間飛行場へのオスプレイの配備中止や、同飛行場を固定化せず早期閉鎖・返還などを求める決議を行う予定だ。安全保障の負担を沖縄だけに押し付け、犠牲を強いる差別的政策は断じて容認できない。政府に対し、市民、県民の決意をはっきり示したい。

「捨て石」今もなお

 米海兵隊のMV22は今年4月、アフリカ北部モロッコで合同演習中に墜落事故を起こし、乗員2人が死亡した。米側は2カ月足らずで事故原因を「人為的ミス」とする調査概要をまとめ、それを踏まえて日本政府は早々と予定通りの配備を受け入れた。
 防衛省は今月13日、米海兵隊がまとめたオスプレイに関する環境審査書を県などに提出した。しかしその直後に、今度は米国フロリダ州で墜落事故が起きた。  墜落事故の最終報告がまとまらないうちに、再び次の事故が起きる。それでも日本の閣僚はオスプレイの安全性に問題はない、沖縄配備の見直しはあり得ない、と冷淡な発言を繰り返す。これを沖縄差別と言わずして何と言おうか。
 日本政府には「安全」を証明する根拠などない。単に米国の主張を追認しているだけだ。このような、ずさんな安保政策がまかり通ってはならない。
 やがて「慰霊の日」が巡って来る。67年前の沖縄戦では、20万人余が犠牲になった。このうち住民の死者は約9万4千人に上る。
 戦後は日本の独立と引き換えに米施政権下に置かれ、復帰40年たった今日も基地の重圧に苦しむ。沖縄は今も「捨て石」扱いだ。県民の命や人権はなぜこうも粗末にされ続けるのか。
 オスプレイの配備は、沖縄全県の「普天間化」を意味する。伊江島での訓練回数が2・3倍に増え、県内50カ所の着陸帯で運用される。
 沖縄だけではない。本州北部や四国、九州での訓練も想定されている。現在、主に岩国基地所属のFA18などが低空飛行しているルートを、オスプレイも同様に飛ぶ。米海兵隊の環境審査書では、この訓練で現状より運用が21%増える見込みだ。オートローテーションが利かないのでは、低空飛行は常に危険と隣り合わせだ。

まるで米国の代理人

 本州、四国、九州へのオスプレイ訓練計画の判明で、本土でもこの問題への関心が高まっている。県内、県外を問わず、住民の命を脅かすオスプレイの配備は許されない。配備や訓練の対象とされる自治体とその住民が連帯し、日本の空に「欠陥機」を飛ばさないよう国への働き掛けを強めたい。
 オスプレイ配備に関する政府の従来の姿勢は疑問だらけだ。1996年に日米で配備を協議しながら、それを隠し続けてきた。オートローテーションの機能欠如を説明することもなく、露払い的に県外の基地に一時駐機を打診し、反対されるとすぐに引っ込めた。繰り返すが、日本側は事故率について米側の説明を検証せず、米国の代理人のように「問題ない」としている。そんな政府を誰が信用できようか。
 県民にとって、普天間問題をめぐる日米両政府の不誠実な対応を世界に広く知らしめると同時に、理不尽な安保政策について国民全体で認識を共有し、両政府に根本的見直しを求める機会にもなる。
 県民の命と人権を脅かすオスプレイ配備は、断じて容認できない。強行されれば、日米関係への信頼は失墜し、米軍は県民、国民の敵意に包まれるに違いない。事の重大性を認識し、日米両政府は即刻、オスプレイの配備中止を検討すべきだ。

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(2012年6月19日入力)
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