【新聞記事】



【文字情報】

朝日新聞 2014年8月1日 和歌山

9条を守る 平和な未来を子どもに 母親たち取り組み
和歌山に続き、田辺でもママネット活動

子どもを二度と戦地に送らないようにと、母親たちの
間で憲法9条を守る取り組みが広まっている。田辺市で
はこの春、新たな9条ネットが結成され、和歌山市でも
同様に活動が続く。集団的自衛権の行使を可能にする
政府の閣議決定が7月にあったばかり。子どもたちが
安心して暮らせる平和な未来をつくろうと、ママたちの
思いは熱い。

 田辺市中万呂の万呂公民館で7月13日昼、「9条
ママnet(ネット)キュッと」の結成記念おはなし会が
開かれた。同市内で助産所を営む坂本フジエさん(90)
が、「平和でこその命」と題して講演。自身の戦争体験
をもとに「300万人の犠牲のうえに、やっと手に入れ
た平和を守るために声を上げ続けてほしい」と語った。
集まった約50人のママが聴き入った。
 この「9条ママnetキュッと」は、2歳になる女の子を
持つ田辺市の小池佳世さん(41)が中心となって今年
3月末に設立。友人の子どものアイデアで、母親が子ども
をきゅっと抱く様子と、憲法9条の「9」をかけて名付け
たという。
 いまの会員は、子育て真っ最中の20~40代の母親
8人だ。「お母さんだって憲法について話したいことは
いっぱいある」と小池さん。でも、その場がなかなか見
つからなかった。色んな講演会に出かけたが、出席者は
いつも同じ顔ぶれ。同じ境遇のお母さんに出会うことは
なかった。
 それなら、と思い立ったのが、この会を結成する
きっかけだった。仲良しのお母さんにも声をかけた。
仲間の1人、真砂麻里さん(34)は会で「閣議決定が
あってもすぐに状況は変わらないと思うが、10年後、
20年後はどうなるか分からない。その時になって戦争に
行くのはいまの子どもたち。ひとごとではいられない」
と訴えた。
 イベントには、和歌山市に2007年6月にできた
「楠見子連れ9条の会」のメンバーの姿もあった。
馬場潔子さん(45)は、あちこちから子どもの歓声や
泣き声が響くにぎやかな会に「小さな子を持つお母さんが
頑張っている。多くのお母さんが参加している様子に
元気をもらいました」。
 9条の会は「ピースカフェ」と名付けた喫茶店での
勉強会を月1回程度続けているという。母親たちの会らしく、
子育てやパートに忙しいので連絡は全てメールで済ませる。
会費はなしで、活動資金はバザーなどの収益金で賄う。
今年5月には安倍首相に、集団的自衛権行使容認への
「反対」を表明するアピールも送った。
 田辺市の小池さんも「紀南地方にもやっとママたちの
集まりが出来た。これからは和歌山のお母さんとも協力して、
9条を守る活動を続けていきたい」と話す。
  (宋潤敏)