南日本新聞 2015年3月17日
[安保法制協議] 拙速な結論許されない
新たな安全保障法制をめぐる与党協議が大詰めを迎えている。20日にも法制の骨格原案に合意し、5月半ばに関連法案を国会提出する見通しだ。
自衛隊の海外派遣を随時可能とする恒久法制定や、「周辺」概念を撤廃し米軍以外の他国軍も支援する周辺事態法改正など、政府・自民党主導の流れを反映する内容となりそうだ。
公明党は歯止めの厳格化を求めているが、自衛隊の活動拡大の方向は変わらない。
戦後日本が守ってきた専守防衛の枠を踏み外す重大な政策転換であり、一つ一つ時間をかけて議論すべきテーマである。与党協議は先月始まったばかりだ。拙速に結論を出すことは許されない。
議論すべき重要テーマが多岐にわたり、両党の考えの隔たりは明らかだ。中でも恒久法の制定は、自民党の長年の悲願で、時限立法の継続を求めていた公明党を押し切るかたちで議論が進められた。
公明党は恒久法容認と引き換えに、自衛隊の海外派遣に国際法上の正当性、国民の理解と民主的統制、自衛隊員の安全確保の三つが必要だと主張した。
自衛隊の海外派遣が頻繁になれば、国際紛争に巻き込まれる懸念も高まる。派遣要件を厳格化して歯止めをかけるのは当然だ。与党合意にも盛り込まれそうだ。
ただ、正当性の確保について政府は、国連決議以外にも「国際機関からの要請」があれば派遣できるとする要件を提示した。中国やロシアの拒否権発動を懸念する自民党の意向が背景にある。あいまいな規定を入れて、拡大解釈されないか気掛かりだ。
国会承認についても公明党が「例外なき事前承認」を主張したのに対し、自民党は「原則として事前承認」と例外を認める政府方針を維持する方向で溝がある。
さらに武力攻撃に至らない「グレーゾーン」事態で、自衛隊が武器を使用して防護する艦船などの対象国を米国以外に広げる政府方針についても、公明党は自衛隊任務の無制限な拡大に懸念を示している。
議論は生煮えのままと言わざるを得ない。これで結論を出そうというのは理解に苦しむ。
見解の違いをあいまいにしたまま自衛隊を随時派遣できるようにしては、活動範囲がなし崩しに拡大する恐れがある。歯止め策の丁寧な議論が求められる。
安全保障は国の根幹に関わる重大事である。与党の合意だけで、拙速に方向転換すべきではない。国会で開かれた論議を尽くすことが重要だ。
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