琉球新報 2015年4月27日

日米防衛指針改定 戦争加担は国是の変更だ

 国民的な議論、国会の監視、法手続きを置き去りにしたまま、世界中で行う米国の戦争を自衛隊が支援する。その枠組みが確定する。
 日米両政府は27日、防衛協力の指針(ガイドライン)を改定する。それは平和憲法の下で固持してきた「専守防衛」を完全に踏み越えることを意味する。国是の変更に等しい改定を許してはならない。
 米国への支援の名目で、日本が主体的に戦争を支える国となるのだ。改定された防衛協力指針でその具体像がくっきり立ち現れる。戦後の安全保障政策の重大な転換点となる。
 日米安保条約は日本と、極東の平和と安全を維持するために、米軍の日本駐留を認めるものだ。ガイドラインは安保条約に付随するが、日米の協力関係の根幹を改めて適用対象を地球規模に広げるのは、安保条約からの逸脱だ。
 本来なら条約を改正して対応すべきだが、日米政府の「目標」に位置付けられる指針は国会での批准が必要ない。条約改正に等しい日米軍事協力の強化が、国会での手続きもなく進められた。
 他国軍への後方支援は「後方地域」や「非戦闘地域」に限られていたが、安倍政権は昨年、「現に戦闘行為を行っている現場」以外では可能と判断を変えた。
 現行の指針は平時、周辺事態、日本が武力攻撃を受ける事態(日本有事)に3分類されている。それを(1)グレーゾーン事態を含む平時(2)重要影響事態(3)存立危機事態(4)武力攻撃事態−に衣替えし、平時から有事まで「切れ目のない」協力体制構築を図るとしている。
 重要影響事態では地理的制約を撤廃し、弾薬提供や戦闘機への給油を可能にするなど、戦地で活動する米軍の後方支援が大幅に拡充する。集団的自衛権行使を伴う存立危機事態では、米国に向かうミサイルを日本が撃ち落とす弾道ミサイル防衛も想定されている。
 米国が武力行使する際は日本側と事前調整し、協議機関の常設化も打ち出す。その仕組みも米国の戦争に巻き込まれる歯止めとなる機能はない。
 自衛隊の活動範囲が広がれば、戦闘に巻き込まれる危険性が増すのは間違いない。米国と戦火を交える国の側から日本は危険な敵国と見なされるのは避けられない。
 米軍基地を多く抱える沖縄は攻撃対象になる可能性が格段に高まる。防衛協力指針改定の悪影響も過重に押し寄せることになる。