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山陽新聞 2015年3月21日

安保法制合意 何が歯止めか分からない

 集団的自衛権行使や他国軍への後方支援などを盛り込む新たな安全保障法制の骨格について、自民、公明両党が正式合意した。政府が関連法案の作成に着手し、5月に国会に提出される見通しだ。
 合意内容をみると、自衛隊の海外での活動に大きく道が広がる。だが、全般的に活動の歯止めとなる規定はあいまいで拡大解釈の余地もある。何が歯止めか分かりにくく、このまま法制化されれば「専守防衛」の基本方針を踏み越えかねない懸念が拭えない。
 朝鮮半島有事を想定している周辺事態法から地理的概念を事実上なくし、現に戦闘が行われていない地域であれば、補給や輸送など他国軍への後方支援を可能にする方向だ。自衛隊派遣のための恒久法も制定する。
 集団的自衛権に関しては、有事対処の基本法である武力攻撃事態法に、国の存立を脅かすような事態を想定した「新事態」を加えて、行使を可能にする。
 国連平和維持活動(PKO)の武器使用基準も拡大する。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対処では、共同で警戒監視に当たっている米軍などを守れるようにする。  与党協議では派遣の根拠などが焦点となった。活動の制約を減らしたい自民党に対し、公明党は後方支援に際し、例外なしに国会の事前承認を求めたが、結局は「事前承認を基本とする」という表現で先送りされた。
 人道復興支援活動に関する国際法上の正当性は「国連決議または関連する国連決議等がある」となった。「等」が入ることで欧州連合(EU)など国連以外の決議にも応じる可能性が出てくる。
 それにしても分かりにくい議論である。自民党は当初、自衛隊海外派遣のたびに特別措置法を制定せずに済むよう、恒久法で海外活動全般を包括する考えだった。だが、公明党の反対で、新法と既存法の改正を組み合わせることになり、より複雑化した。
 たとえば、武力攻撃事態法には、切迫度の高い順に武力攻撃事態、武力攻撃予測事態、緊急対処事態がある。新たに加わる「新事態」は日本の存立を脅かす事態を想定している。改正周辺事態法には国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」を設ける。朝鮮半島有事などのどの局面にどう当てはまるのか、抽象的概念が先行し、極めて理解しづらい。
 中東ホルムズ海峡での機雷除去が集団的自衛権行使で可能かどうかも、地理的概念を外して対応したい自民党と、地理的制約を歯止めとして慎重な公明党の間で見解を詰め切れないままである。
 周辺事態法からも地理的概念を外せば、自衛隊の活動拡大に対する歯止めは見えづらくなる。政府はそうした懸念に答えると同時に、国民が理解し判断できるよう、もっと法整備の論点を整理し、分かりやすく説明すべきだ。