信濃毎日新聞 社説(2013年11月23日)

今できること 声を上げ行動に移そう

 このところ知人と交わす会話やメールで、特定秘密保護法案がしばしば話題にのぼる。
 「衆参とも与党が多数を占めているから成立してしまうだろう」「選挙で勝たせた有権者にも責任がある」―。法案が週明けにも衆院を通過する見通しの中で「自分たちに何ができるのか」という、ため息に似た声が多い。
 昨年の総選挙と今夏の参院選で自民党は圧勝した。けれど、有権者はすべての政策について良しとしたわけではない。
 政治が自らの思いとかけ離れて動こうとしている時、「それは違う」と伝えることが、有権者としての責任ではないだろうか。
 法案に反対する市民の声は高まってきている。弁護士、メディア関係者、憲法・刑事法・歴史学者、さまざまな分野の市民団体、文化団体が相次いで反対や懸念を表明している。一昨日は東京都日比谷におよそ1万人が集まり、法案の白紙撤回を訴えた。
 こうした行動の広がりはインターネットを見ていると分かる。全国各地で市民が手を結び、街頭やネット上で署名を呼びかけたり、集会や講演会を開いたりしている。長野県内でも長野、上田、佐久、茅野などで街頭活動や集会が続けられている。きょうも松本市の松本駅周辺で、集会とデモ行進が予定されている。
 自分たちにできること―。衆院採決までを考えるのなら、県選出の衆院議員に直接、意見を伝えてはどうか。どの議員もブログやツイッター、フェイスブックを利用していて、サイトを通じて送ることができる。
 県議や市町村議に働きかけてみよう。埴科郡坂城町議会は9月定例会で「特定秘密保護法の制定に反対する意見書」を可決、閣僚や衆参両院の議長に送っている。  12月定例議会の時期と重なる。国会の審議日程にかかわらず、廃案や法の廃止といった意思表示を求める方法もある。
 仮に法案が衆院を通ったとしても、参院で審議は続く。署名はまだ間に合う。集会や勉強会に参加し、法案の危うさを自ら発信するのも手だろう。
 政治の手綱を握るのはあくまで有権者だ。知る権利が脅かされるばかりか、私たちの暮らしに支障を来す恐れのある法案など必要ない。そうした思いを一人一人が声に出し、行動に表すことで、流れを変えたい。