東奥日報 2015年3月22日

歯止め明確にする議論を/安保法制の与党合意

 自民、公明両党は新たな安全保障法制に関する与党協議会で、集団的自衛権の行使容認などを踏まえ自衛隊の任務と活動範囲を拡大する法制の骨格について正式合意した。政府は4月12日の統一地方選前半戦後に法案化の協議に入り、5月中旬にも閣議決定、通常国会へ提出する。
 だが、歯止めとなる国会承認の在り方など派遣要件は不透明なままだ。統一地方選後の法制化で歯止めを明確にしなければ、将来に禍根を残す。自衛隊の海外派遣に際限がなくなる法制化は避けなければならない。安保政策の大転換だけに、慎重を期した議論が不可欠だ。
 骨格は集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法・自衛隊法改正、国際紛争に対処する他国軍を後方支援する恒久法の制定、周辺事態法改正、国連平和維持活動(PKO)協力法改正、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処を明記した。
 まず肝心の集団的自衛権の行使を容認する新たな要件の解釈が割れたままだ。要件の柱は「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」ケース。首相は中東・ホルムズ海峡で自衛隊の機雷除去が可能と主張するが、公明党は日本有事の寸前に限定されるとの見解を変えていない。
 骨格には公明党の要請で、自衛隊海外派遣に際し▽国際法上の正当性▽国会の関与など民主的統制▽自衛隊員の安全確保−を盛り込んだが、法制化してもホルムズ海峡への派遣の可否を明確にしそうもない。これでは時の政権の判断にゆだねることになる。
 朝鮮半島有事を想定して自衛隊の米軍後方支援を定めた周辺事態法を改正し、米軍以外の他国軍への支援も可能にする。周辺事態の定義は「そのまま放置すれば(中略)わが国の平和および安全に重要な影響を与える事態」で、地理的な制約が事実上あった。法制化では「周辺」の文言を削除する見通しだが、具体的にどんな事態を想定しているのか判然としない。
 公明党は恒久法に基づく自衛隊派遣を例外なく国会の事前承認とするよう求めていたが、骨格は「国会の事前承認を基本とする」と例外の余地を残している。与党合意にかかわらず、安保法制に世論の理解が深まっているとは言い難い。法制化の過程では拙速を避けた論議が必要だ。