民主主義 正確な議論必要 自衛権 政府見解に疑問も 長谷部・早大教授が講演(朝日新聞・和歌山版 2016.10.08)

 2016年9月30日に和歌山市で行われた長谷部恭男・早稲田大学教授(憲法学)の講演を報じた、朝日新聞・和歌山版(10月08日付)の記事です。


【写真】





【文字情報】


朝日新聞・和歌山版 2016年10月08日

民主主義 正確な議論必要
自衛権 政府見解に疑問も
長谷部・早大教授が講演

 昨年6月の衆院憲法審査会で自民党推薦の参考人として「安保法案は違憲」と指摘した憲法学著の長谷部恭男・早稲田大教授が9月30日、和歌山市で講演した。和歌山弁護士会の主催。「立憲主義と民主主義を回復するために」との題で、市民ら約150人が聴き入った。
 長谷部教授は立憲主義について、広義では「憲法で政治権力を制限する思想」で、狭義では宗教改革や宗教戦争を経た欧州が発祥の「世の中には根源的に対立する価値観があると認める」という近代立憲主義を指すと前置きした。
 「公」の問題を解決する民主的な政治決定の仕組みとして憲法にあるのが多数決。しかし、数学者らの理論を挙げた上で、2訳で単純に決められず、何が正しいか簡単に分からない問題には「最後は多数派工作をして決まる妥協の形。民主主義にはその程度しかできないという考え方がある。ならばせめて正確な議論をする必要がある」と話した。
 自衛権について政府は従来、「日本が直接に外国から武力攻撃を受けた場合は、国の存立が脅かされる」として、反撃する個別的自衛権だけを認めてきたが、安倍政権は2014年に集団的自衛権を認める閣議決定をし、今年3月に安全保障法制が施行された。長谷部教授は「なぜ他国が攻撃されたから自国の存立が脅かされ、他国を守るために武力行使したら日本の存立危機を脱するのか。全く分からない」などと話した。
 大阪府泉佐野市から来た加藤早苗さん(56)は「感情でなく、理性でもなく、論理で物事を考える必要性を学べた」と話していた。
(森本大貴)