60年余り前、日本では「天皇陛下ばんざい」と若者を戦争に送り出した。イラク戦争開戦5周年を迎えたアメリカでは、今なお「アメリカばんざい」の声とともに若者を世界の戦場へ送り出している。送り出された若者たちの、その後を追う。ベトナムに送られた若者たち。コソボに送られた若者たち。アフガニスタンに送られた若者たち。イラクに送られた若者たち。アメリカに還ってきた若者たち。還れなかった若者たち、イラクだけでも4,000人。どんな経験をしたのか。どんな今を生きているのか。マスコミが伝えない「ばんざい」の裏側が見えてくる(2008年製作)

藤本幸久監督
1954年三重県生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、土本典昭監督の助監督をつとめる。監督作品に、「闇を撮る」(2001)「Marines Go Home-辺野古・梅香里・矢臼別」(2005)ほか。

〔沖縄からアメリカへ〕
2005年「Marines Go Home〜辺野古・梅香里・矢臼別」を完成させたドキュメンタリー作家藤本幸久は、沖縄で出会った米兵から感じた「彼らはどこから来たのか?なぜ兵士になったのか?そしてどこに行くのか?」という疑問を追い求め、2006年10月から2008年4月にかけ、計7回のべ200日間のアメリカ取材・撮影を重ね、この作品を完成した。



アメリカばんざい

戦争を続ける国、アメリカを取材したドキュメント映画

まるで兵器を生産するように、人を殺すことのできる兵士を作り出す軍隊。軍に志願するしか貧困から逃げ出す方法が無い格差社会。
ある者は食べてゆくため、ある者は学資を得て貧しい地域から逃げ出すため、また、ある者は家族を軍の医療保険で守るため、それぞれの思いを胸に兵役を志願する。
しかし、地獄の戦場を生き延びて帰ってきた彼らを待っていたのは、自らを傷つけ滅ぼそうとする精神の崩壊だった。アメリカの途方もない格差社会の底辺から、若者たちが戦場へと押し出されてゆく。戦争を続ける国アメリカの本質を描いた話題作。
「アメリカばんざい crazy as usual」

◇雨宮処凛/作家
 「戦争」とは、「大学に行きたい」という夢を持った10代の若者に、人を殺させることなのだ。そしてその「貧困による徴兵」は、この国の近い未来の風景と重なるのは私だけだろうか。

◇池田香代子/翻訳家
 心の傷とは、静かな声で、かろうじて語られるものだ。カメラがそれを受け止めるクッションになる奇跡の瞬間、地獄の淵をのぞきこむ番が、わたしたちに回ってくる。

◇中川 敬/ミュージシャン(ソウル・フラワー・ユニオン)
 戦争は人為。そして戦場には人がいる。各々に人生を背負った雑多な生。米軍隊の深奥に迫る本作は、ワシントン政権から連綿と続く侵略国家USAの度し難い本質を晒す。全日本人必見!

◇西谷文和/フリージャーナリスト・イラクの子どもを救う会
 イラクに行くたびに、若い米兵とすれ違う。といっても彼らは戦車や装甲車に乗り、通行人に銃を向けながら進んでいくので、遠くからカメラを向けるだけだ。そこに「勝者」はなく、あるのは「疑心暗鬼」だけ。恐怖と緊張の中で、「彼らも犠牲者だな」と感じる。

◇山内和彦/映画『選挙』主演
 多くの映画でヒーローとして描かれる米兵。しかし、悲惨な戦争を経験した者、息子を失った家族の声からは、きれい事ばかりではない現実が見えてくる。病める軍事大国アメリカの真実を知るために、必見の映画です。

◇高遠菜穂子/イラク支援ボランティア
 この映画は、戦争が、守るべき自国民にもたらすあらゆる負の側面をリアルにえぐり出している。戦死、PTSD、貧困、失業、ホームレス、家族の崩壊、社会からの孤立、弱者への暴力。それまで個別に語られてきたそのすべてが、ここにドッキングしている。監督は2年をかけてアメリカを取材しているが、特殊な人々を追っているわけではない。ごく普通の家族たちがこのドキュメンタリーの主人公だ。それはつまり、どれだけ多くの人が戦争と共に生きているかということだ。そして、戦争と共に生きるということはどういうことかを、イラク戦争に加担していることにさえ実感を持てない平和の国ニッポンに教えてくれる。
 学生たちが軍に入隊したのは大学入学のためだったろうか?家計を助けるためだったろうか?対テロ戦争を進める平和の国ニッポンの国民が、このことを対岸の火事だと言いきれるのはいつまでだろうか?“ブートキャンプ”はダイエット法ではない。