アメリカ自身、日米安保があるから日本が成り立っているなどとは考えていない。アメリカは01年の同時テロ以降、地球規模の米軍基地見直しを行っている。アメリカの一番の関心は米本土防衛で、冷戦型の部隊配置を見直し、少ない数で機敏に行動する再編を行っている。日本を含む5地域に部隊を集約し、その基地から地球規模の展開をしようとしている。海兵隊が日本を守ると考えている人はアメリカにはいない。沖縄の海兵隊がグアムに移るのは、沖縄が住宅などで使い難いということだ。問題は沖縄の海兵隊8千名、家族9千名をグアムに移し、そのために日本政府は7千億円を出すという協定を09年に国会で批准したことだ。協定には海兵隊をグアムに移すことが抑止力の強化になる、そのために日本政府は金を出すと書かれている。しかし、日本政府はそんな説明はしないし、マスコミも言わない。何故なら、日本政府は海兵隊を沖縄に置き続けたい、海兵隊がいることで日米安保の価値があると思っているからだ。米軍は他国とも多国籍軍的な共同訓練をやりたいが、日本国内ではそれができない。それで海兵隊をグアムに移し、グアムの海兵隊が日本の安全を支え続けると言っている。これが本当の構造だ。だから、辺野古の基地は普天間の代替ではなく、米軍再編の新しい戦略のための新しい出撃基地だ。
日米同盟の深化と言われる。日米安保は日本領土の範囲だったが、96年にアジア・太平洋に拡大、97年に新ガイドラインで、港湾・空港を米軍に解放して日本総基地化が進み、05年に「日米同盟・未来のための変革と再編」で日米安保を地球規模にし、米軍と自衛隊の一体化をした。これが日米同盟の深化だ。辺野古に基地を造らせないことはまさにこれらに対する歯止めだ。
NHK特集によれば、日米安保の現状は負担過重だと国民に思われ、そして一番の問題は日本が独自の外交ができていないことだと思われている。今後の安全保障は、「日米同盟を基軸に」は19%で、「アジアの国々と国際的な安保体制を築く」は55%だ。多くの国民は今のままではアメリカに引っ張られる日米一体化に懸念を持っているが、国会の場では発言がない。そういう意味で非常に危機的な状況だと思っている。今の大政翼賛会的な日米安保に対する自公・民主の政治の流れは大きく日本の国益を損なう方向に動いていくのではないかと思う。今の外交は隣の国と仲良くするのではなく、敵対する方向で関係を作り出している感じがする。これも日米安保があるからだ。普天間が95年に合意されながらいまだに解決しないのは、この辺りにつながり、政治の世界が国民の意識と乖離した現実があるのではないかと思う。
日米安保は本当に日本の安全を守るものなのか、日本が米国に奉仕する仕組みなのか、訳の分らないものだということが分る。実際には敵はいないのに、敵を仕立てて、アメリカにすがらなければ日本はやっていけないかのような構造を作りあげていく。実際この国はどこを向いているのだろうかと思う。こういうことが私たちの知らないところで合意されて、ひとり歩きしている。国民の大多数は中国とも、近隣諸国とも仲良くする日本を求めている。でも、今、日米同盟の深化という名の下に相手を敵と見るという、敵を作る外交、敵を作る日本政府がそこにあるということを是非知っていただきたいと思う。沖縄の状況は決して沖縄だけの問題ではなく、日本全体の問題だということを訴えたい。(おわり)
-------------------------------------------------
大震災に乗じ改憲への足掛り作り
参院、憲法審査会規程を制定
時事通信は5月18日、「参院は18日の本会議で、憲法審査会の運営手続きを定めた規程を、民主、自民、公明各党などの賛成多数で可決、制定した。共産、社民両党は反対した。衆院は09年6月に規程を整備しており、07年5月の国民投票法の成立から4年を経て、憲法改正原案の審議から国民投票の実施までに必要な制度が全て整った。改憲原案や憲法関連の法案の審議などを行う憲法審査会は、国民投票法の成立に伴って07年8月に衆参両院に設置された。参院憲法審の規程によると、委員は45人。表決は出席委員の過半数によって行われ、改憲原案に関する公聴会開催を義務化した」と伝えています。
これは民主党が、ねじれ国会≠フもとで審査会始動を自民党に働きかけ、国会運営で自民党の協力を取り付けたいという思惑によるものです。
4月28日の新憲法制定議員同盟の大会では、鳩山前首相が顧問に復帰し、「国難のときに、国家の緊急事態を総理が宣言することができる憲法に」「憲法改正の大きなきっかけの年とする」と挨拶したといいます。「政権交代」前後に崩れた自民・民主の改憲協力体制を復活させるもので、「二大政党」による改憲推進に警戒が必要です。
-------------------------------------------------
過半数賛成で改憲発議、要件緩和の議連発足へ
5月3日付産経新聞は「民主、自民両党の国会議員有志が、改憲案の発議要件を現行の衆参両院の各3分の2以上の賛成から、両院の過半数の賛成に緩和することを目指す超党派の議員連盟を今月中に発足させることが2日、分かった。改憲案は衆参両院で可決後、国会が発議し国民投票で賛否を問うが、同議連は発議要件を規定した96条の改正のみに焦点を絞ったのが特徴。改憲案を早期に国会に提出し、改憲論議を活発化させたい考えだ」と報じました。自民は100人以上、民主も約50人が参加する見通しとのこと。
「過半数賛成で改憲発議」は、取り敢えず96条を改正して改憲をしやすくした上で、その後は「憲法9条などを自分たちに都合のいいように変えよう」とするものです。
-------------------------------------------------
【九条噺】
それがどうしたと言われれば、それまでのことだが、ただその時は少し嬉しいような気持ちになったのである。朝日新聞(夕刊)が「ジャーナリズム列伝」という連載をはじめてかなり経つ。ジャーナリストの生き様などを紹介する内容で、ひと月ほど前からは報道写真家の石川文洋氏。主な経歴を記したあと、ベトナム戦争の最前線をはじめ、様々な現場で報道カメラマンとして活躍する様子を詳しく紹介し、連載もすでに22回を数えたがまだ終わらない。しかし、今までの紹介だけでも、石川氏が誠実で信頼できるほんまもん≠フジャーナリストだということがよく判る▼で、冒頭のはなし。その22回目の記事に、「1972年5月15日午前0時、当時35歳の石川文洋は、那覇・国際通りの三越前にある歩道橋上で、沖縄の本土復帰を迎えた」とあった。まさにその時間、筆者(当時29歳)も沖縄の友に連れられてその国際通りを歩いていたのだ。だから記事がとても懐かしく、何かしら嬉しい気分になったのだ▼石川氏はその後、北ベトナム取材の許可を得てハノイに行き、米軍の大規模な爆撃がもたらす惨状を取材した。筆者がはじめて間近に見た巨大なB52爆撃機が連日轟音をたて、嘉手納からベトナムに向っていたのである▼そして40年、侵略の血で汚れた殺人機を数多擁する基地群は、県民に嫌がられても、政府には「抑止力」などとあがめられ、今も立ち去る気配はない。(佐)
-------------------------------------------------
9条を守るために出来ることをするのは当り前のこと
WBS和歌山放送・特別番組「憲法を考える」A
5月3日憲法記念日の15時からWBS和歌山放送が「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の提供で特別番組「憲法を考える」を放送しました。その要旨を2回に分けてご紹介します。今回は2(最終)回目。
長岡健太郎弁護士が出演
|