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自民党、新たな「憲法改正案」を策定、国会提出へ
自民党は1月22日に定期大会を開催し、2012年度の運動方針を決めました。その運動方針では、「新しい憲法改正案を提案し、その実現を目指します」としています。自民党のホームページに掲載された運動方針には、「憲法改正は、わが党の立党の精神である。本年4月28日は、わが国が主権を回復したサンフランシスコ講和条約発効から60年にあたる。それまでにわが党は、立党50年にあたる平成17年に発表した『新憲法草案』を踏まえ、新たな憲法改正案を策定し、国会への提出を目指す。憲法改正の国民投票法を実施するために残された課題である『18歳選挙権実現等のための法整備』等については政府を督励するなど、その実現を図る。衆・参両院の憲法審査会が4年の空白を経て昨年やっと開催されたが、わが党は、この憲法審査会において現下の日本にふさわしい真の自主憲法が実現するよう努力する」としています。
保利耕輔・憲法改正推進本部長は党大会で中間報告を行い、「平成17年に新憲法草案が党大会で発表されました。これは憲法9条を改正して自衛軍を創設するなど、画期的なものでした。その後、国民投票法が施行され、国会に改正案を提出することが可能となりました。もろもろの条項については、憲法改正起草委員会をつくり、新憲法草案を基礎に、真の独立国家にふさわしい憲法改正案を作成すべく鋭意検討を続けています」と述べています。
05年の自民党「新憲法草案」は、前文を全面改変し、第2章を「戦争の放棄」から「安全保障」に変えて、第9条第2項で「自衛軍」を創設するとしています。さらに、12条、13条、29条では「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に言い換え、国民の権利を制限し、また、改憲発議要件を国会議員の3分の2から過半数の賛成に変えるなどとしています。保利氏が言うように「新憲法草案を基礎に、憲法改正案を作成する」とは、日本を「戦争ができる国」にした上で、さらに自分たちの都合のいいように改憲したいということではないでしょうか。
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「非常事態」を口実に改憲を主張・・・参院憲法審で中山氏ら
2月15日、読売新聞は「参院憲法審査会は15日、前自民党衆院議員の中山太郎、船田元両氏から意見を聴取した。両氏は大震災など非常事態での政府対応を憲法で定めるよう訴えた。中山氏は『東日本大震災で国家の中枢はどうだったか。反省すべき課題だ』と指摘。船田氏は『(憲法に)非常事態規定があれば、(政府は)別の対応ができた』と語った」と報じました。
中山氏は昨年8月、「緊急事態に関する憲法改正試案」を発表し、「地震、津波等による大規模な自然災害、テロリズムによる社会秩序の混乱その他の緊急事態」で「緊急事態の宣言」を行い、「内閣総理大臣への権限の集中」や、財産権、居住・移転の自由など国民の人権に対する新たな制限を可能とする改憲を提言しています。
国家緊急権とは、「戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限」と言われています。
国家緊急事態が宣言されると、民主主義や人権尊重を基本原理とする憲法の効力の一部または全部が停止し、政府は独裁的な機関になり、国民の望まない方向に暴走することもありえます。日本国憲法はこのような危険な国家緊急権を認めていません。
東日本大震災の復興が遅れ、原発事故への対応がうまくいっていないのは、政府の対応の遅さ、拙さであって、憲法の不備などではありません。現行の災害対策基本法などの枠組みで充分対応できるはずです。参院憲法審査会の動きは、東日本大震災を口実とした「惨事便乗改憲論」と言えるのではないでしょうか。
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言葉 「緊急事態権限」
東日本大震災のような非常事態で、国政選挙が実施できない場合の想定が現憲法にはないので対応が必要だ(自民・近藤三津枝衆院議員)というのが、緊急事態権限導入論のひとつです。しかし、非常事態が発生して総選挙が実施できず、衆院議員が欠けた状態が長引いても、憲法54条2項で、内閣は閉会中の参議院の緊急集会を求めることができます。参院議員は任期が6年で、3年毎に半数を改選することになっています。もし、参議院の通常選挙が日程通り実施できなくなっても、まだ、非改選の議員が残っていることになります。緊急時の対応を国会に諮らず、内閣だけで対処するという事態は最悪でも3年間は現出しません。
いかなる努力をしても防ぎきれない非常事態には、危機にさらされている国民の生命財産などを守るために、内閣総理大臣に権限を集中して人権を平時より制約することが必要となる(民主・山尾志桜里衆院議員)という議論もあります。しかし、内閣総理大臣に権限を集中させても、東日本大震災のような大津波は防ぎ切れるものではありません。また、福島原発事故は人災であり、「いかなる努力をしても防ぎきれない」事態とする訳にはいきません。
「3・11」は内閣総理大臣が超法規的な非常権限を発動しなければならない事態ではありません。今般の初期対応の拙さは「緊急事態権限」の欠如ではなく、現行の法や制度が事前の配慮や準備の不足によって適切に働かなかったり、「権限」が有効・適切に行使されなかったことによるものです。(小沢隆一氏の「始動した憲法審査会より明らかになったこと」から要約)
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【九条噺】
家人は今日も、うたごえの女性合唱の練習に余念がない。それを聞きながら、ふと10数年前に初めて参加したうたごえ祭典や、和歌山のミール合唱団の仲間たちの顔を思い出す。また、筆者にもかつては仲間らと歌を楽しむ機会も多く、いうなれば日々の暮らしの中にうたごえ≠ェあったようにも思う▼ところで、うたごえ運動の中で生まれた名曲のひとつに「地底の歌」(荒木栄作詞作曲)がある。この組曲は、50年代末から60年代初頭の三池炭鉱労働者のたたかいを通して、その勇気と確信を謳い上げたもので、筆者も随分長い間親しんできた。しかし、そのわりに三池炭鉱そのものについては余り詳しく知らなかった▼三池炭鉱はもともと官営で、鉱夫は主に囚人だった。炭鉱で働かせる囚人確保のために「三池集合監」まで設置された。1889年に三井財閥に売却後もそのままだったが、坑内での事件頻発による生産効率の低下、囚人使用に対する世論の批判などもあり、1930年に囚人使用を全廃、代りに極貧の農民家族を大量に雇い入れ、後には強制連行した朝鮮人(約2300人)・中国人(約2500人)らも働かせた。坑内労働は男女とも殆ど全裸に近く、さながら「奴隷労働」そのもので、当然犠牲者もあとを絶たなかった▼戦後はもちろん様相も一変したが、利益のために手段を選ばぬ資本の体質に、かつての残忍で冷酷な血はいささかも引き継がれていないと、果たして言い切れるのだろうか。(佐)
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大阪維新の会、衆院選向け公約集に改憲掲げる
2月13日の朝日新聞は、「大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)は、衆院選向けの公約集『船中八策』の骨格をまとめた。橋下氏が主張する『決定できる民主主義』の考えに沿って、大都市制度改革のほか、首相公選制の導入や参院改革を含む改憲、年金などの社会保障制度改革など8つの柱で方針を掲げている。維新の地方議員や3月に設立する維新政治塾での議論も踏まえ、最終決定する」と報じています。
国民が直接首相を選ぶ公選制導入や、参議院の廃止とそれに代わる首長兼務の国会議員による「国と地方の協議の場」の設置を掲げ、改憲に必要な衆参両院の同意を3分の2から過半数へ引き下げるなどの改憲案が盛り込まれています。外交・防衛関係では、日米豪の3カ国同盟が提案され、在日米軍基地は、「沖縄の負担軽減を日本全体で考える」との方針です。これでは、在日米軍基地をなくすのではなく、日本中にばら撒くことになるのではないでしょうか。
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大阪市は 憲法が通用しない 無法地帯?
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